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魔剣使いの闘い~サンダース編

ep102 もうひとりの者

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「魔法剣士カレン。提案がある」

「なんだと?」

「簡潔に言う。敵の敵は味方だろ?」

「〔フリーダム〕は共通の敵と言いたいのか?」

「俺が〔フリーダム〕に与することはありえないし、あんたたちもそれはありえない。ならやることはひとつだ。共闘してヤツを倒す」

「......」

「それが街や市民への被害を最小限に抑えることにもつながる。違うか?」

「それはそうだが......わかった。いいだろう」

「よし。じゃあ今のうちにひとつ情報を共有しておく。キラースと魔物以外にも一人、強力な敵がいる。おそらくそろそろここへ来るだろう」

「他にも強力な敵?」

 ちょうどその時だ。 

「!!」

 俺とカレンは同時にピクッとして上空を見上げる。

「あれは!」

 カレンが声を上げた時、それは俺たちに向かって一斉にバババババッ!と降り注いできた。
 闇の魔力を纏いし黒き矢の暴雨が!

特殊技能スペシャリティ〔ニュンパグレイズ〕」

 俺は少しも慌てない。
 もはやこの攻撃は完全に見切っている。
 さも当たり前のように、あたかもそれが事前にわかっていたかのように、俺は技を発動した。

「シィィィィィッ!!」

 斬閃の弾幕が黒矢の雨あられをひとつ残らず斬り消した。
 が、まだ敵の攻撃の手は緩まない。

「!」

 今度は背後から俺たちへ迫り来る脅威を察知する。
 即座にバッと振り返った俺は再び技の体制に入ろうとするが、すでにカレンが一歩踏み出して動作に入っていた。

「......給へ。
〔アルカーナ・フランマ〕
 固有技能アビリティ〔魔動炎閃〕」

 炎剣がうなる。
 それは炎のうちに俺たち二人を狙った黒き矢をゴァァァッ!と薙ぎ払った。

「はやい!」

 スピードにはとりわけ自信があった俺も素直に認めざるをえないはやさ。
 くわえてさらに彼女は放つ。

固有技能アビリティ〔魔炎発閃〕」

 それは炎の魔力を帯びた見事な〔発閃〕。
 炎光ほとばしる衝撃波が敵に向かいゴォォォォッ!と風を切って疾る。
 
「!」

 敵をとらえたかに見えた。
 しかし、炎の〔発閃〕は一瞬の流れ星のように彼方へと消えていってしまう。
 すなわち、躱されたということ。

「......なかなか危なかった。はやいな」

 視線の先、数十メートル隔てた建物の屋根上に、闇をまとった女がゆらりと現れた。

「今さっきお前が言った強力な敵とやらはあれか?」

 カレンが尋ねてきた。

「ああ。あのダークエルフだ」

 俺はここからの展開を考えつつ答えた。

「魔剣使い。オマエ、いったいどうやったんだ?」

 今度はダークエルフか俺に訊いてきた。

「〔空間転移〕のことを言っているのか?まっ、それ以上のことは企業秘密だが」

「......闇の結界内に閉じ込めたはずなのに、それをあたかも布を切く裂くかのように剣で斬り開いて...そのうえ空間転移......オマエは本当に何者なんだ?」

「俺からすればお前のほうがよくわからないが」

「は?」

「お前は〔フリーダム〕とどういう関係なんだ?」

 俺が逆にダークエルフへ質問を投げかけた時。

「オイ!エレサ!オメーはなにチンタラお喋りしてんだぁ!?」

 上空からキラースの怒鳴り声が降ってきた。

「き、キラース。す、すまない。仕留めることも、足止めすることもできなかった」

 ダークエルフは途端にびくんとしておずおずと彼を見上げて返事した。

「それでもダークエルフなのかぁ?オメーはよ。役立たずの出来損ないエルフが」

「す、すまない」

「いいか?もう一度だけチャンスをやる。今ここで魔剣使いを殺せ。それと魔法剣士のほうは半殺しでいい」

「わ、わかった」

「オメーにゃ荷が重いか?なんなら市民の虐殺で許してやってもいいぜ?」

「いや!魔剣使いと魔法剣士を倒す!必ず!」

「ならさっさとやれ、クソエルフ」

 二人のやり取りを見るに......やはりダークエルフはキラースの部下のようだ。
 だが、ダークエルフは〔フリーダム〕ではないと言っていた。
 それは、ちょうどシヴィスとトレブルたちの関係と同様のものだろうか。
 いや、どうもそれとも違う、もっと悪質な何かを感じるが......。
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