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魔剣使いの闘い~サンダース編
ep83 怪しき者
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夕方になる......。
街は相変わらず祭りで賑わっている。
俺は賑わいからどんどんと遠ざかるように街を進んだ。
やがて空が濃紺色になり、夜の帳が下りる頃。
俺は富裕層地域のとある公園内にある木立の中へ進んだ。
そこは夜になると侵入禁止となっていた。
『いくらなんでもあからさま過ぎでは?と思いましたが、どうやらクロー様の思惑どおりのようで』
『ああ』
後方の木の枝がカサッと揺れる。
風は吹いていない。
動物?昆虫?違う。
「おい」
誰かを呼びかける声がした。
ここには俺しかいない。
俺はクルッと振り向く。
「誰だ?」
十メートルほど先、黒いローブに頭から身を包んだ何者かが立っていた。
顔も身体的特徴もローブでよくわからない。
わかるのは、背丈が低いということぐらい。
といってもシヒロよりはやや高いぐらいだろうか。
「オマエは魔剣使いだな」
ローブの者が言った。
その声は、女の声...。
「先に何者か聞いたのはこっちなんだが」
「わたしが何者かなんてどうでもいい。オマエが魔剣使いなのはわかっている」
「こっちとしてはどうでもよくないんだが」
「単刀直入に言う。魔剣使い。オマエは〔フリーダム〕に入れ」
「また勧誘か。だが俺は先日、その〔フリーダム〕の幹部を倒したばかりなんだが?」
「シヴィスだろ?確かに幹部を倒したのは問題だが、今ならまだ間に合う。わたしならシヴィスと懇意だった幹部に口がきく。なんとかできる」
「お前は〔フリーダム〕なのか?」
「違う」
「まったく話が見えないな」
「魔剣使い。オマエには仲間もいるだろ?オマエが〔フリーダム〕に入れば、そいつらの安全も保障する」
「遠回しに恫喝されているようにも聞こえるが」
「早くしろ。時間がない。今オマエが〔フリーダム〕に入れば避けられるかもしれないんだ」
「なんの話だ?」
「それは......うぅっ」
ローブの女は急に胸のあたりを押さえて言葉につまった。
「お前は......俺の敵なのか?」
俺は少々質問の仕方を変えてみた。
「敵......となるかどうかはオマエ次第......」
「お前は今、俺を殺そうとも捕らえようともしていない。違うか?」
実際、この怪しき者からこれといった害意は感じられなかった。
「わたしは......今わたしができる範囲内の行動をしている」
「ただ交渉しにきたのか?」
その時。
『クロー様。スピリトゥスの動きを感知しました』
謎の声が割って入ってきた。
と同時に怪しきローブの女はハッとして、
「時間切れだ......」
言い残し、その場からスーッと物怪が闇へ霧消するように去っていった。
「要領を得ないまま終わってしまったな...」
俺は誰もいなくなった闇を見つめながら首を傾げた。
『クロー様』
『おっと悪い。すぐに戻る』
『いえ、その必要はないでしょう』
『どういう意味だ?』
『今のは小娘ではありません』
『ということはフリーダムか!?』
『かもしれませんが、今は一度小娘達の所へ戻るのが良いでしょう』
『ヤツらが今、暴れているわけではない、そういうことだな?』
『はい。ワタクシが感知したのはスピリトゥスの動きであって乱れではありません』
『わかった。ならすぐ戻る』
『はい』
街は相変わらず祭りで賑わっている。
俺は賑わいからどんどんと遠ざかるように街を進んだ。
やがて空が濃紺色になり、夜の帳が下りる頃。
俺は富裕層地域のとある公園内にある木立の中へ進んだ。
そこは夜になると侵入禁止となっていた。
『いくらなんでもあからさま過ぎでは?と思いましたが、どうやらクロー様の思惑どおりのようで』
『ああ』
後方の木の枝がカサッと揺れる。
風は吹いていない。
動物?昆虫?違う。
「おい」
誰かを呼びかける声がした。
ここには俺しかいない。
俺はクルッと振り向く。
「誰だ?」
十メートルほど先、黒いローブに頭から身を包んだ何者かが立っていた。
顔も身体的特徴もローブでよくわからない。
わかるのは、背丈が低いということぐらい。
といってもシヒロよりはやや高いぐらいだろうか。
「オマエは魔剣使いだな」
ローブの者が言った。
その声は、女の声...。
「先に何者か聞いたのはこっちなんだが」
「わたしが何者かなんてどうでもいい。オマエが魔剣使いなのはわかっている」
「こっちとしてはどうでもよくないんだが」
「単刀直入に言う。魔剣使い。オマエは〔フリーダム〕に入れ」
「また勧誘か。だが俺は先日、その〔フリーダム〕の幹部を倒したばかりなんだが?」
「シヴィスだろ?確かに幹部を倒したのは問題だが、今ならまだ間に合う。わたしならシヴィスと懇意だった幹部に口がきく。なんとかできる」
「お前は〔フリーダム〕なのか?」
「違う」
「まったく話が見えないな」
「魔剣使い。オマエには仲間もいるだろ?オマエが〔フリーダム〕に入れば、そいつらの安全も保障する」
「遠回しに恫喝されているようにも聞こえるが」
「早くしろ。時間がない。今オマエが〔フリーダム〕に入れば避けられるかもしれないんだ」
「なんの話だ?」
「それは......うぅっ」
ローブの女は急に胸のあたりを押さえて言葉につまった。
「お前は......俺の敵なのか?」
俺は少々質問の仕方を変えてみた。
「敵......となるかどうかはオマエ次第......」
「お前は今、俺を殺そうとも捕らえようともしていない。違うか?」
実際、この怪しき者からこれといった害意は感じられなかった。
「わたしは......今わたしができる範囲内の行動をしている」
「ただ交渉しにきたのか?」
その時。
『クロー様。スピリトゥスの動きを感知しました』
謎の声が割って入ってきた。
と同時に怪しきローブの女はハッとして、
「時間切れだ......」
言い残し、その場からスーッと物怪が闇へ霧消するように去っていった。
「要領を得ないまま終わってしまったな...」
俺は誰もいなくなった闇を見つめながら首を傾げた。
『クロー様』
『おっと悪い。すぐに戻る』
『いえ、その必要はないでしょう』
『どういう意味だ?』
『今のは小娘ではありません』
『ということはフリーダムか!?』
『かもしれませんが、今は一度小娘達の所へ戻るのが良いでしょう』
『ヤツらが今、暴れているわけではない、そういうことだな?』
『はい。ワタクシが感知したのはスピリトゥスの動きであって乱れではありません』
『わかった。ならすぐ戻る』
『はい』
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