上 下
59 / 167
ロットン編

ep59 屋敷

しおりを挟む
 繁華街から離れていくようにしばらく進んでいくと......。
 まもなく、俺たちは煙を上げている屋敷の門前に到着する。

「違うな......」

 二メートル以上ある格子状の門越しから見える二階建ての屋敷は所々損壊している。
 明らかにヤツらが暴れた形跡だ。
 ここまでは今までと変わらない。
 俺が感じた違和感、それは......周囲の被害はなくこの屋敷だけピンポイントで襲撃されているということ。

「いつもと暴れ方が違う」
「はい?」
「......」
「こ、ここからどうするんですか?」

 シヒロが緊張の面持ちで言った時。

『クロー様。今、屋敷の中からスピリトゥスの動きを感じました』
 謎の声が割り込んできた。

『魔法か?』

『である可能性が高いかと』

『なにか音も聞こえる......水の音?』

 門前から屋敷を見渡した。
 そのタイミングで煙がおさまる。

「今のも魔法......」
「シヒロもそう思うか」
「はい」
「よし、行くぞ」

 俺は普通に門を押し開ける。

「しょ、正面から行くんですか?」
 うろたえるシヒロ。

「俺から離れるなよ」
「は、はい!」
 
 門から建物までを歩きながら庭を観察する。
 何の変哲もない庭だが、あまり生活感が感じられない。

「あ、あの、クローさん」
 玄関口までたどり着いた時、シヒロが不安そうに口をひらいた。

「どうした?」
「やっぱり、ぼくは行かない方がいいんじゃ...」

「ここまで来て怖気づいたのか?」
「いえ、あの、少しだけですけど、はい......」
「ならさっさと行くか」
「えっ?」」

 俺は無遠慮にドガン!とドアを蹴り破った。
 無惨にバタンと崩れ倒れるドア。

「ちょっ!クローさん!乱暴ですよ!もし〔フリーダム〕じゃなかったらどうするんですか!」

「そん時はそん時だ」

 俺たちは悠々と建物へ入っていく。
 
「誰の姿も見えないな」
「そ、そうですね」

 パッと見たところ一階に人の姿は確認できない。
 庭同様、何の変哲もない屋敷。
 ただ、やはり生活感はあまり感じられない。

「上にあがるか」
「もう少し一階を確認しないんですか?」
「いや、上にいく」

 二階に上がると、誘うように一室のドアがうっすら半開きになっているのが目に入る。
 そこへ自ら招かれるようにして俺は廊下を進む。

「く、クローさん......」

 シヒロは俺の背中にぴったりくっついている。
 ドアの手前まで来ると、俺は考える間もなくドアを蹴り開けた。

「ちょっ!またそんないきなり!」

 シヒロが苦情を口にした時にはもう俺は部屋の中へ一歩足を踏み入れていた。

「おっ、マジで来やがったか。テメーの言ったとおりだぜ」
 開口一番、部屋の奥の椅子にあぐらをかいた男が言った。

「フリーダムじゃない?」

 俺の目に真っ先に飛び込んできたその男は、緑色の髪の毛を派手におっ立てて目にはサングラスをかけていた。
 例の仮面はつけていない。
 荒くれた盗賊のような服装も、〔フリーダム〕のそれとは違う。

「シヴィスさん!コイツです!コイツが魔剣使いです!間違いないです!」

 緑髪のグラサン野郎の隣で、頭からローブを羽織った顔色の悪い中年男が俺を指さした。

「く、クローさん!床に人が!」
 後ろからシヒロが悲鳴のような声を上げた。

「ああ。これはおそらく、昨日のヤツらだな」

 緑髪のグラサン野郎たちと俺たちの間の床に、泥炭のように黒焦げになった三人の男が無惨に転がっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

理系少年の異世界考察

ヴォルフガング・ニポー
ファンタジー
はっと気づくと、高校生の宇田川卓人は異世界の戦場に転移していた。 大けがを負った卓人は幼い時期から育ったという人里離れた孤児院へ連れて行かれる。そこでは妹というエミリやその他多くの子供たちに温かく迎えてもらえた。どうやら名前も同じ、顔かたちもそっくりな別人と入れ替わってしまったようだ。とにもかくにも何も知らない世界での生活を手に入れることができた。 この世界では多くの人が魔法が使えたが、卓人にはできなかった。それでも興味を失わなず、科学的な知識をもって分析してみたところそれなりの成果を上げることに成功する。 元々のこの世界の卓人は兵学校に通う軍人予科生だった。けがが治ればまた戦場に戻らなければならない。戦争なんてテレビの向こうのこととしてしか知らない卓人にとっては絶対に嫌なことだった。しかも戦闘に必要な魔法も使えない。だけど、妹のエミリは心から兄を慕っている。偽りの自分がいつまでもこんな所にいてはいけない。本物の兄を探すために兵学校へ、戦場へ戻ることを決意する。 何ももたない少年が要領を得ない世界で苦悩し知恵を絞りながら成長していく、王道のストーリーです。

無能と言われた怪異使いの僕は最強へと成り上がる

水戸なっとぅー
ファンタジー
代々死霊術師を生業にしているユーレイ伯爵家の長男のぼくは闇属性に高い適性を有していて、家族からも期待されていた。でも、神託の日、ぼくが授かった職業は«怪異使い»。激怒した父上はぼくを追放した。でも、実は«怪異使い»は死霊術師をも上回る最強の職業だった。  追放された少年が、仲間にした怪異とともに成り上がる!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。 公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。 そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。 ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。 そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。 自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。 そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー? 口は悪いが、見た目は母親似の美少女!? ハイスペックな少年が世界を変えていく! 異世界改革ファンタジー! 息抜きに始めた作品です。 みなさんも息抜きにどうぞ◎ 肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

物理重視の魔法使い

東赤月
ファンタジー
 かつて『最強の魔法使い』に助けられたユートは、自分もそうなりたいと憧れを覚えた。  しかし彼の魔力放出量は少なく、魔法の規模に直結する魔術式の大きさは小さいままだった。  そんなユートと、師である『じいさん』の元に、国内最高峰の魔法学院からシルファと名乗る使者が訪れる。  シルファからの手紙を読んだ『じいさん』は、ユートに魔法学院に行くことを提案し……?  魔力が存在する世界で織り成す、弱くはない魔法使いの冒険譚、はじまりはじまり。 ※小説家になろう様の方にも掲載しております

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six
ファンタジー
大学生の浅野壮太は神さまに転生してもらったが、手違いで、何も能力を与えられなかった。 転生されるまでの限られた時間の中で神さまが唯一してくれたこと、それは【ステータスの上限を無くす】というもの。 さらに、いざ転生したら、神さまもついてきてしまい神さまと一緒に魔王を倒すことに。 神さまからもらった能力と、愉快な仲間が織りなすハチャメチャバトル小説!

処理中です...