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旅の少女編
ep41 旅の少女
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◇ ◇ ◇
ぼくが旅に出てから、早一カ月が経ちます。
本来であれば、もう家に帰るころだと思います。
ぼく自身、そうするつもりでした。
だけど、ぼくはまだ旅を続けることにしました。
理由は、目が離せない人と出会ってしまったからです。
その人は......なんだろう。
ぼくの書く物語の中で、英雄として登場する人になるかもしれません。
なにを言っているのかよくわからないよね。
本当にいつも心配かけてばかりでごめんなさい。
そして十代の一人娘のワガママをいつも聞いてくれてありがとうございます。
近いうちに、また手紙書きます。
またね、お母さん。
シヒロ
◇ ◇ ◇
「この街を取材したら、帰還の途につこうかな」
ぼくがそう思ったのは、お母さんや村のみんなの顔を思い出して、家が恋しくなったからじゃありません。
いや、それもあるけど、それだけじゃないんです。
それ以上に、近辺に何やら危険が迫っているという話をそこかしこで耳にしたからです。
「この間、また東の方の街がやられたんだって?」
「らしいな。一か月前、クオリーメンが派手にやられて以来、国際平和維持軍も動きだしているとは聞くが、それでもな」
旅の冒険者風の恰好に身を包んだぼくは、街の酒場で食事をしながら、街の人や冒険者や他の旅人達の会話に耳を傾けていました。
そこは、この街でもっとも多くの人々が集まる酒場で、ぼくはこっそり取材活動を行っていたのです。
「まったく一年前にやっと戦争が終わったってのに、また物騒な連中が現れやがって」
「でもよ。その〔フリーダム〕てのは、いったいなんなんだろうな」
「さあな。一応、連中は〔自由〕を叫んでいるらしいが、戦争が終わって行き場のなくなった戦士や戦場でメシ食ってたゴロツキどもが集まってるって話も聞く。なんでも魔術師もいるんだとか。本当かどーかは知らねーけどな」
「ただのチンピラ連中ってわけでもないのか?ますますヤベえじゃねえか」
「多くはチンピラなんだろうが......とにかくなんだか不気味な連中だよ」
「勇者様になんとかしてもらえないのかねぇ」
「あの御方は色々と忙しいんだろ。まあおれたち一般庶民にゃあ計り知れねえことだがね」
ぼくはパンを片手に、ノートにメモを取っていました。
ノートは二冊あって、こっちはぼくの取材ノート。
もう一冊は、創作ノート。
「やっぱり、村を出ると、色んな人がいて、色んな情報や話を聞ける。外を歩けば色んな風景も見られる。これでまたイメージが広げられるぞ」
ぼくの夢は、作家になること。
そのために、ぼくは旅をしているんです。
本当は世界中を旅してまわりたいけど、今のぼくにはまだそこまでのことはできません。
だから、とりあえず一か月間ってことで、一生懸命お金も貯めて、お母さんにも納得してもらって、旅に出たんです。
「だけど、今日一泊したら、明日からは村に引き返そう」
さすがに事件や紛争に巻き込まれるわけにはいかない。
〔フリーダム〕とかいう連中が何者なのか、気にはなるけど、危険すぎるよね。
せっかく戦争が終わって安心して旅ができると思っていたのに残念です。
「でも、この一ヶ月間でかなりイメージも膨らんだし、実際に執筆も進んだんだよね」
ぼくは創作ノートを開き、書きかけの小説を見返し始めました。
「まだまだヘタだよなぁ。でもすっごく楽しい。書けば書くほど、新しい世界がどんどん広がっていく感じ」
自分で自分の書いた小説をニヤけながら見ているぼくは、はたから見ればちょっとアヤしいかも?
「いつか、世界中のたくさんの人たちに読んでもらえるような本にしたいなぁ」
ぼくが旅に出てから、早一カ月が経ちます。
本来であれば、もう家に帰るころだと思います。
ぼく自身、そうするつもりでした。
だけど、ぼくはまだ旅を続けることにしました。
理由は、目が離せない人と出会ってしまったからです。
その人は......なんだろう。
ぼくの書く物語の中で、英雄として登場する人になるかもしれません。
なにを言っているのかよくわからないよね。
本当にいつも心配かけてばかりでごめんなさい。
そして十代の一人娘のワガママをいつも聞いてくれてありがとうございます。
近いうちに、また手紙書きます。
またね、お母さん。
シヒロ
◇ ◇ ◇
「この街を取材したら、帰還の途につこうかな」
ぼくがそう思ったのは、お母さんや村のみんなの顔を思い出して、家が恋しくなったからじゃありません。
いや、それもあるけど、それだけじゃないんです。
それ以上に、近辺に何やら危険が迫っているという話をそこかしこで耳にしたからです。
「この間、また東の方の街がやられたんだって?」
「らしいな。一か月前、クオリーメンが派手にやられて以来、国際平和維持軍も動きだしているとは聞くが、それでもな」
旅の冒険者風の恰好に身を包んだぼくは、街の酒場で食事をしながら、街の人や冒険者や他の旅人達の会話に耳を傾けていました。
そこは、この街でもっとも多くの人々が集まる酒場で、ぼくはこっそり取材活動を行っていたのです。
「まったく一年前にやっと戦争が終わったってのに、また物騒な連中が現れやがって」
「でもよ。その〔フリーダム〕てのは、いったいなんなんだろうな」
「さあな。一応、連中は〔自由〕を叫んでいるらしいが、戦争が終わって行き場のなくなった戦士や戦場でメシ食ってたゴロツキどもが集まってるって話も聞く。なんでも魔術師もいるんだとか。本当かどーかは知らねーけどな」
「ただのチンピラ連中ってわけでもないのか?ますますヤベえじゃねえか」
「多くはチンピラなんだろうが......とにかくなんだか不気味な連中だよ」
「勇者様になんとかしてもらえないのかねぇ」
「あの御方は色々と忙しいんだろ。まあおれたち一般庶民にゃあ計り知れねえことだがね」
ぼくはパンを片手に、ノートにメモを取っていました。
ノートは二冊あって、こっちはぼくの取材ノート。
もう一冊は、創作ノート。
「やっぱり、村を出ると、色んな人がいて、色んな情報や話を聞ける。外を歩けば色んな風景も見られる。これでまたイメージが広げられるぞ」
ぼくの夢は、作家になること。
そのために、ぼくは旅をしているんです。
本当は世界中を旅してまわりたいけど、今のぼくにはまだそこまでのことはできません。
だから、とりあえず一か月間ってことで、一生懸命お金も貯めて、お母さんにも納得してもらって、旅に出たんです。
「だけど、今日一泊したら、明日からは村に引き返そう」
さすがに事件や紛争に巻き込まれるわけにはいかない。
〔フリーダム〕とかいう連中が何者なのか、気にはなるけど、危険すぎるよね。
せっかく戦争が終わって安心して旅ができると思っていたのに残念です。
「でも、この一ヶ月間でかなりイメージも膨らんだし、実際に執筆も進んだんだよね」
ぼくは創作ノートを開き、書きかけの小説を見返し始めました。
「まだまだヘタだよなぁ。でもすっごく楽しい。書けば書くほど、新しい世界がどんどん広がっていく感じ」
自分で自分の書いた小説をニヤけながら見ているぼくは、はたから見ればちょっとアヤしいかも?
「いつか、世界中のたくさんの人たちに読んでもらえるような本にしたいなぁ」
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