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魔剣士誕生編

ep36 エールハウス④

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「く、クロー!」

 血塗られてたたずむ俺に向かい、ナオミが目に涙を浮かべて駆け寄ってきた。

「こ、こわかったよぉぉ......うぅ」
「ご、ゴメン......(そうだよな。俺のこと、怖いよな)」

「え?なんでクローがあやまるの?」
「だって、目の前でこんな怖いことが行われれば......」

「それは、クローが戦ってくれたからでしょ?」
「そうだけど......俺のこと、怖いと思わないか?」

「なんで?あたしを助けてくれたんでしょ?他の女の子たちもみんな助けてくれたじゃない?あたしたちを守りながら戦ってくれてたこと、ちゃんとわかってるよ?」

 ナオミの言葉に便乗するように、他の女の子たちも揃って声を上げはじめる。

「た、助かったのね!私たち!」
「クローさん?だっけ?あ、ありがとうございます!」
「ありがとう!クロー!」
「ありがとう!クロー!」

 助けた女の子たちは皆、目を潤ませながら感謝の意を示してくれた。
 さらにそこへ......

「く、クロー......おまえ、剣士だったのか......?」
「ミック?」

 倒れていたはずのミックが、グググッとなんとか上体を起こして、俺に顔を向けた。

「すげえな......たったひとりでこんな......」
「ミック!大丈夫か!?」
「ミック!」

 俺とナオミはミックに駆け寄る。

「とにかく......クローのおかげでおれたち助かったんだな、ナオミ」
「うん。クローが全員やっつけてくれたよ」

 俺はなんとか、ナオミとミックを助けることができた。
 また、店内にいた他の女達のみならず、倒れている街の男達の多くも、負傷はしているが意識を取り戻しはじめていた。
 手当てをすればなんとかなりそうだ。

「良かった......」

 俺が仮面のヤツらを倒したことで、どうやらみんなを救えたようだ。

「なんだろう......この感じ」
 
 俺の中でなにか、魂を突き動かす熱いものが、心身に注ぎ込まれるような......。

『まだです』

 深思する俺へ水をさすように謎の声が言った。

『なんだ?どうした?』
『まだです。まだ終わっていません』
『終わってないって?』

 その時。

 ドガァァァン!と外から轟音が鳴りひびく。
 店内がギシギシと揺れる。

「きゃあっ!」
「な、なに?」
「なんなんだ?」

 俺はすぐさまピンと来る。

『仮面のヤツらか!』
『はい。外です』

 間を置かず、バッと俺は動き出す。

「クロー?」
「どうしたんだ?」

 俺はナオミとミックの声を背中に聞きながら、
「ふたりは避難していてくれ!」
 言い残して店内を抜けて表へ飛び出した。

『二時の方向に感じます』
『あっちか!』

 道を突っ走っていき、交差点に出ると俺は立ち止まった。

『クロー様、上です』
『えっ?あれは......』

 見上げると、交差点沿いにある三階建ての建物の屋根の上に、複数の仮面のヤツらを確認する。
 俺は仰天した。

「あいつは......なんで生きているんだ!?」

 なぜなら...複数の仮面のヤツらの真ん中に、ドレッド頭の仮面のヤツがいたからだ。
 
「また別のヤツなのか?」

 いや違う。
 あいつは確かに......俺が屋敷で首を斬り落としたヤツだ!
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