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魔剣士誕生編

ep28 制限、解除

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「うぅ......」

 あれ?なんで?
 俺、戦えないの?
 あの感覚は、なんだったの?
 謎の声は俺をハメやがったのか?
 いやいや待て待て。
 そもそもいきなり戦えるわけないじゃないか。
 こんな時になに妄想してんだよ、俺。
 なにやってんだよ、俺。
 バカかよ、俺。

 ああ、痛い......痛い......痛い痛い痛い痛い!
 頭が潰れそうだ!

「ぼっちゃま!」

 その時、眼もうつろで横たわる俺の視界に、血だらけのパトリスの立ち上がった姿が映った。
 パトリスはドレッド仮面に向かって勢いよく突進する。
 その姿は、執事がやみくもに突っ込んでいるものではなく、勇敢な戦士の特攻のように見えた。
 しかし、残酷な現実は、どこまでも残酷に現実を突きつける。

「まだ元気がいいねぇ」

 ドレッド仮面は、突進してきたパトリスの首をむんずと鷲掴むと、
「ぎゃぁぁぁ!」
 パトリスの全身が毒ガスのような紫炎に包まれる。
 紫炎がおさまると、パトリスは事切れたようにドタッと崩れ落ちた。

「パトリス......!」

 なんだよアレ!?
 まさか、今のが魔法!?
 魔法で、パトリスが、殺された......?

「あ、ああ、あぁぁぁ......!」

 なんで、なんで、こんなことにならなきゃいけないんだ?
 なんでパトリスが殺されなきゃならないんだ?
 俺たちが何をしたって言うんだ!
 あの仮面のヤツらはなんなんだ!
 なんの恨みがあってこんなことするんだ! 

「さて、次はキミの番かなぁ」

 ドレッド仮面が再び俺の方へ向いた。
 もはや俺は、戦うことも逃げることもできない。

「あぁぁぁ...うぅ......」

 ......このまま、理不尽に殺されるなんてイヤだ。
 絶対にイヤだ。
 フザケるな。
 フザケんじゃねえ! 

『ではどうしますか?』

『......!なんだよ。またおまえかよ』

『戦うか、殺されるか。どうしますか?』

『どうしますもなにも...見ればわかるだろ?戦えないんだよ。おまえにノせられた俺がバカだったよ。いい気味だろ?今さら怒る気にもならないよ』

『......では逃げますか?』

『それも無理だろ。もう詰んでんだよ』

『では、理不尽に殺されるか、殺してでも生き残るか、どうしますか?』

『......また、選択、なのか?』

『蹂躙されるのを黙って見ているのか、敵を殺してでも守り戦うのか、どうしますか?』

『そんなの......それだったら......殺したい......。あのドレッド仮面を、今すぐ殺してやりたい!』

『承知しました。今、貴方の意思により、ひとつめの制限が解除されました。思う存分、戦ってください。それではまた......』

 なんだ?
 なんか急に、力が漲ってきたような......気がするぞ?
 さっき受けた攻撃のダメージも、やわらいできたような......。

「!」

 そこから......。
 どう考えて、どう立ち上がり、どう動いたのかもわからない。
 気がついた時、俺は剣を振り抜いていた。

「あ......」

 血飛沫が迸った。
 ドレッド仮面の首が、床にゴロンと転がった。
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