23 / 167
魔剣士誕生編
ep23 変化
しおりを挟む
【登場人物】
クロー・ラキアード・・・主人公の青年。カワイイ系の金髪イケメン男子だが転生前は中年のおっさん。
パトリス・・・ラキアード家の執事。
ロバータ・・・ラキアード家のメイドの中年女性。
ミック・・・エールハウスで知り合った遊び仲間のチャラ男。
ナオミ・・・エールハウスで出会いその日中に一晩も過ごした美女。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*
夜中、パトリスと一緒に帰宅した日以降、俺は少し変わったらしい。
あれからも数回、家でパーティーを開いた。
俺はほとんど酒も飲まず、あくまでも主催者としての責任で参加しているような感じだった。
だから、いつものアソビ仲間とは距離を置き、女の子たちともあまり話さなかった。
そんな俺を見てミックとナオミが奇妙に思い、
「どうしたクロー?」
「げんき、ないの?」
声をかけてきたが、
「なんでもないよ。眠いだけだよ」
俺はテキトーにやり過ごした。
そのようなやりとりを何度か繰り返すうちに、アイツらはもう何も言って来なくなった。
アイツらには良くも悪くもこだわりがない。
「一緒にアソんでいた人間が一緒にアソばなくなった」
それだけのことなんだと思う。
俺の中で、それを寂しく思う気持ちがないわけでもなかったが、それを行動に移すだけの意志も感情もそこにはなかった。
パーティーが終わると、俺は率先して片付けをやった。
「クローさま。わたしがやりますから」
メイドのロバータが言ってきても、
「俺もやる」
関係なく俺は手を動かした。
その時、ロバータとパトリスが意味ありげに微笑み合ったので、俺はなんとなく恥ずかしくなってふたりに視線をぶつけた。
「な、なんだよ?」
「いえ、べつに」
「なんでもありません」
ふたりはなんだか嬉しそうだった。
俺は片付けをしながら、
「考えてみれば、自分で片付けるのってはじめてだな。ずっと、いつも、やってもらってたんだよな......」
彼らに対して感謝と申し訳なさが込み上げた。
本当は......。
もうパーティー自体、取りやめようとも考えていた。
しかし、それを口にすると、
「ぼっちゃま。やむを得ない理由もなく手前勝手に中止にするのはよろしくありませんよ。人に迷惑をかけ、自らの信用を失うだけです」
パトリスに釘を刺されてしまった。
本音ではパトリスも、もうあんなパーティーを家で開くのは嫌だったろう。
俺にあんなパーティーに参加してほしくもなかっただろう。
だが、こういうことは気持ちの問題ではない。
こんなことでも、主催者として最低限の責任は果たさなければならないということ。
なので、
『すでに決まっていたパーティーだけは責任を持って開催した』
というわけだ。
正直、
「メンドクサイなぁ」
と思った。
だけど、俺を想ってそう言ってくれたパトリスの気持ちが、俺は素直に嬉しかった。
*
すべてのパーティーが終わり......。
俺はひとり、二階の自室でボ~ッとしている。
窓際のイスに座り、ガラス越しに曇り空を見上げて。
「生きるって、なんだろう......」
結局は、それだった。
途方もないけど、根本的なこと。
「俺は、ただ......」
残りわずかな人生。
意味が欲しかった。
元の世界にいた頃から振り返れば、後悔なんて腐るほどある。
生ゴミのように腐って腐って積み重なった後悔からは、鼻をつんざくような自己嫌悪の異臭が漂っている。
「せめて、納得して、死にたい......」
でも、そのやり方が、わからない。
そもそも、ひたすら中途半端に生きてきた俺みたいなクロヤローが、今さらそんなことを求めるなんておこがましいだろう。
わかっている。
けど、それでも、なにか、できないのだろうか。
クロー・ラキアード・・・主人公の青年。カワイイ系の金髪イケメン男子だが転生前は中年のおっさん。
パトリス・・・ラキアード家の執事。
ロバータ・・・ラキアード家のメイドの中年女性。
ミック・・・エールハウスで知り合った遊び仲間のチャラ男。
ナオミ・・・エールハウスで出会いその日中に一晩も過ごした美女。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*
夜中、パトリスと一緒に帰宅した日以降、俺は少し変わったらしい。
あれからも数回、家でパーティーを開いた。
俺はほとんど酒も飲まず、あくまでも主催者としての責任で参加しているような感じだった。
だから、いつものアソビ仲間とは距離を置き、女の子たちともあまり話さなかった。
そんな俺を見てミックとナオミが奇妙に思い、
「どうしたクロー?」
「げんき、ないの?」
声をかけてきたが、
「なんでもないよ。眠いだけだよ」
俺はテキトーにやり過ごした。
そのようなやりとりを何度か繰り返すうちに、アイツらはもう何も言って来なくなった。
アイツらには良くも悪くもこだわりがない。
「一緒にアソんでいた人間が一緒にアソばなくなった」
それだけのことなんだと思う。
俺の中で、それを寂しく思う気持ちがないわけでもなかったが、それを行動に移すだけの意志も感情もそこにはなかった。
パーティーが終わると、俺は率先して片付けをやった。
「クローさま。わたしがやりますから」
メイドのロバータが言ってきても、
「俺もやる」
関係なく俺は手を動かした。
その時、ロバータとパトリスが意味ありげに微笑み合ったので、俺はなんとなく恥ずかしくなってふたりに視線をぶつけた。
「な、なんだよ?」
「いえ、べつに」
「なんでもありません」
ふたりはなんだか嬉しそうだった。
俺は片付けをしながら、
「考えてみれば、自分で片付けるのってはじめてだな。ずっと、いつも、やってもらってたんだよな......」
彼らに対して感謝と申し訳なさが込み上げた。
本当は......。
もうパーティー自体、取りやめようとも考えていた。
しかし、それを口にすると、
「ぼっちゃま。やむを得ない理由もなく手前勝手に中止にするのはよろしくありませんよ。人に迷惑をかけ、自らの信用を失うだけです」
パトリスに釘を刺されてしまった。
本音ではパトリスも、もうあんなパーティーを家で開くのは嫌だったろう。
俺にあんなパーティーに参加してほしくもなかっただろう。
だが、こういうことは気持ちの問題ではない。
こんなことでも、主催者として最低限の責任は果たさなければならないということ。
なので、
『すでに決まっていたパーティーだけは責任を持って開催した』
というわけだ。
正直、
「メンドクサイなぁ」
と思った。
だけど、俺を想ってそう言ってくれたパトリスの気持ちが、俺は素直に嬉しかった。
*
すべてのパーティーが終わり......。
俺はひとり、二階の自室でボ~ッとしている。
窓際のイスに座り、ガラス越しに曇り空を見上げて。
「生きるって、なんだろう......」
結局は、それだった。
途方もないけど、根本的なこと。
「俺は、ただ......」
残りわずかな人生。
意味が欲しかった。
元の世界にいた頃から振り返れば、後悔なんて腐るほどある。
生ゴミのように腐って腐って積み重なった後悔からは、鼻をつんざくような自己嫌悪の異臭が漂っている。
「せめて、納得して、死にたい......」
でも、そのやり方が、わからない。
そもそも、ひたすら中途半端に生きてきた俺みたいなクロヤローが、今さらそんなことを求めるなんておこがましいだろう。
わかっている。
けど、それでも、なにか、できないのだろうか。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる