33 / 87
ep33 005
しおりを挟む
*
午後。
家に帰ってきた俺は勉強していた。
「......」
勉強しているのだが、普段とまったく異なることが二つある。
一つは、勉強机ではなく床に座ってテーブルで勉強していること。
そしてもう一つは......
「井藤くん。これなんだけど......」
学級委員長さんと向かい合って勉強していること!
あれから一時間ぐらいグラウンドで運動した後、学級委員長さんは自分の家に帰っていった。
ところが、ネーコが何やら画策していたらしく、学級委員長さんは私服に着替えて今度は俺ん家にやって来たのだ。
「えっ!?井藤くんって......すっごく頭良い!?」
学級委員長さんは、苦戦していた数学の問題をあっさり解いた俺に驚いた。
「そ、そうかな」
俺はテレながら頭をポリポリ掻いた。
といっても、照れているのはなにも褒められたからだけではなかった。
自分の部屋でクラスメイトの女子と二人っきりで向かい合っているこの状況に俺はテレている!
不登校児にこの状況は難易度が高すぎる。
「学校来ないのにそれってなんか反則だよぉ~」
学級委員長さんは悔しそうに言った。
「ま、まあ、勉強はしてるからね。一応」
「独学ってことだもんね?すごいなぁ」
「いや、全然そんなことは」
「ちょっと悔しいかも」
学級委員長さんはムムム~と唸って唇を噛んだ。
俺は困りながらアハハハと苦笑いを浮かべた。
「わたしも、クラスでは成績一番なんだよ?学年順位も一桁だし。たぶん井藤くん、学校来たら学年一位になれると思うよ?」
「あ、ええっと、どうかな......」
「もったいないと思う」
「いや、そんな」
「そーだよ!もったいない!」
「ああ......う、うん......」
俺はあからさまに彼女から視線をサッと外してむっつりと口を閉じる。
「......」
自分でもわかっている。
こんな態度を表に出しても、真面目で優しい彼女に気遣わせてしまうだけだって。
「......あっ!あの!そういうつもりじゃないの!ちがうの!も、もちろん、井藤くんが来てくれたらいいな~って思うけど、無理はしてほしくないし!そもそも井藤くんが決めることだし!ご、ごめんなさい!」
途端にあたふたとする学級委員長さん。
案の定、真面目で優しい彼女に余計な気を遣わせてしまった。
いっそ彼女が無神経なほうが楽だったかもしれない。
彼女が本当に真面目で優しい分、俺はこんな自分自身がますます嫌になる。
そうなっている自分がまたさらに情けなく思えて、自己嫌悪が胸をじんわりと陰鬱に熱くする。
「いや、いいよ......」
俺の声はボソボソとして、なんだか喉が詰まっている気がする。
(こういう時はもっとハッキリ言葉に出して相手を安心させるべきだろ?何やってんだよ俺...)
そんな時。
コンコンというノック音と共に、
「フミヒロ様!伊野上さん!入りますよ?」
バーン!とドアが開いて美少女アンドロイドが入ってきた。
「ね、ネーコ?」
「おやつをお持ちしました!」
ネーコの手にはおぼんがあり、その上にお菓子と飲み物が置かれている。
が......
「ん?その箱はなんだ?それもお菓子?」
俺はおぼんの一箇所に不自然に置かれた小さい箱を見出した。
「コレですか?避妊具です」
ネーコはあっさりと答えた。
「オイッ!!」
すぐさまツッコむ俺。
「持久力が無さそうと思われるフミヒロ様には厚めの005ミリをご用意いたしました」
「余計な気づかい!!」
「そうですか?」
「そうもなにもそんなことしないから!!」
「クラスメイトを部屋に連れ込んですっかりヤル気かと」
「言いかた!!」
「フミヒロ様」
「な、なんだよ?」
「ミッションコンプリ~ト!」
「もういいわ!!」
一方、さすがの学級委員長さんでもそれが何かはわかったらしく、顔をゆでだこのように真っ赤にして黙ったままうつむいていた。
午後。
家に帰ってきた俺は勉強していた。
「......」
勉強しているのだが、普段とまったく異なることが二つある。
一つは、勉強机ではなく床に座ってテーブルで勉強していること。
そしてもう一つは......
「井藤くん。これなんだけど......」
学級委員長さんと向かい合って勉強していること!
あれから一時間ぐらいグラウンドで運動した後、学級委員長さんは自分の家に帰っていった。
ところが、ネーコが何やら画策していたらしく、学級委員長さんは私服に着替えて今度は俺ん家にやって来たのだ。
「えっ!?井藤くんって......すっごく頭良い!?」
学級委員長さんは、苦戦していた数学の問題をあっさり解いた俺に驚いた。
「そ、そうかな」
俺はテレながら頭をポリポリ掻いた。
といっても、照れているのはなにも褒められたからだけではなかった。
自分の部屋でクラスメイトの女子と二人っきりで向かい合っているこの状況に俺はテレている!
不登校児にこの状況は難易度が高すぎる。
「学校来ないのにそれってなんか反則だよぉ~」
学級委員長さんは悔しそうに言った。
「ま、まあ、勉強はしてるからね。一応」
「独学ってことだもんね?すごいなぁ」
「いや、全然そんなことは」
「ちょっと悔しいかも」
学級委員長さんはムムム~と唸って唇を噛んだ。
俺は困りながらアハハハと苦笑いを浮かべた。
「わたしも、クラスでは成績一番なんだよ?学年順位も一桁だし。たぶん井藤くん、学校来たら学年一位になれると思うよ?」
「あ、ええっと、どうかな......」
「もったいないと思う」
「いや、そんな」
「そーだよ!もったいない!」
「ああ......う、うん......」
俺はあからさまに彼女から視線をサッと外してむっつりと口を閉じる。
「......」
自分でもわかっている。
こんな態度を表に出しても、真面目で優しい彼女に気遣わせてしまうだけだって。
「......あっ!あの!そういうつもりじゃないの!ちがうの!も、もちろん、井藤くんが来てくれたらいいな~って思うけど、無理はしてほしくないし!そもそも井藤くんが決めることだし!ご、ごめんなさい!」
途端にあたふたとする学級委員長さん。
案の定、真面目で優しい彼女に余計な気を遣わせてしまった。
いっそ彼女が無神経なほうが楽だったかもしれない。
彼女が本当に真面目で優しい分、俺はこんな自分自身がますます嫌になる。
そうなっている自分がまたさらに情けなく思えて、自己嫌悪が胸をじんわりと陰鬱に熱くする。
「いや、いいよ......」
俺の声はボソボソとして、なんだか喉が詰まっている気がする。
(こういう時はもっとハッキリ言葉に出して相手を安心させるべきだろ?何やってんだよ俺...)
そんな時。
コンコンというノック音と共に、
「フミヒロ様!伊野上さん!入りますよ?」
バーン!とドアが開いて美少女アンドロイドが入ってきた。
「ね、ネーコ?」
「おやつをお持ちしました!」
ネーコの手にはおぼんがあり、その上にお菓子と飲み物が置かれている。
が......
「ん?その箱はなんだ?それもお菓子?」
俺はおぼんの一箇所に不自然に置かれた小さい箱を見出した。
「コレですか?避妊具です」
ネーコはあっさりと答えた。
「オイッ!!」
すぐさまツッコむ俺。
「持久力が無さそうと思われるフミヒロ様には厚めの005ミリをご用意いたしました」
「余計な気づかい!!」
「そうですか?」
「そうもなにもそんなことしないから!!」
「クラスメイトを部屋に連れ込んですっかりヤル気かと」
「言いかた!!」
「フミヒロ様」
「な、なんだよ?」
「ミッションコンプリ~ト!」
「もういいわ!!」
一方、さすがの学級委員長さんでもそれが何かはわかったらしく、顔をゆでだこのように真っ赤にして黙ったままうつむいていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話
フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談!
隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。
30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。
そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。
刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!?
子供ならば許してくれるとでも思ったのか。
「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」
大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。
余りに情けない親子の末路を描く実話。
※一部、演出を含んでいます。
新訳 軽装歩兵アランR(Re:boot)
たくp
キャラ文芸
1918年、第一次世界大戦終戦前のフランス・ソンム地方の駐屯地で最新兵器『機械人形(マシンドール)』がUE(アンノウンエネミー)によって強奪されてしまう。
それから1年後の1919年、第一次大戦終結後のヴェルサイユ条約締結とは程遠い荒野を、軽装歩兵アラン・バイエルは駆け抜ける。
アラン・バイエル
元ジャン・クロード軽装歩兵小隊の一等兵、右肩の軽傷により戦後に除隊、表向きはマモー商会の商人を務めつつ、裏では軽装歩兵としてUEを追う。
武装は対戦車ライフル、手りゅう弾、ガトリングガン『ジョワユーズ』
デスカ
貴族院出身の情報将校で大佐、アランを雇い、対UE同盟を締結する。
貴族にしては軽いノリの人物で、誰にでも分け隔てなく接する珍しい人物。
エンフィールドリボルバーを携帯している。
ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~
415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」
普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。
何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。
死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる