59 / 134
入学編
ep58 愚か
しおりを挟む
ふたりの告白で、ふたりの関係性も含め、今回の事件の経緯がよくわかった。
だからといって、言うべき言葉は思いつかない。
同情はする。
だけど、俺からしたら今回の事件は一方的なもらい事故のようなもの。
トッパーたちと一緒にフェエルをからかっていたことも許せない。
「愚かじゃな」
重い空気の中、イナバが辛辣に切り出した。
「エマ女子も、ミア女子も」
「イナバ?」
おいおい。神使の白兎はいったい何を言い出す気だ?
「なにを...」
「小僧は黙っておれ。いいか?まずはエマとやら。お主はなぜ学校を辞めん?」
「は??」
「国家魔術師を目指すのを諦めたのなら、さっさと魔法学園など辞めて転校でもなんでもすればよかろう」
「そ、それは」
「本当はまだ諦めきれない。違うか?」
「!!」
「だからこそ、友であるはずのミア女子が気に食わず、ヤソガミ少年も貶めてやりたい。気持ちはわからんでもないが、本当の自分の気持ちと現実を受け入れられない者の甘えじゃな。違うか?」
「あ、あーしは...」
「それとも他にも何かお主を歪めた理由があるのか?」
「それは...!」
「お主はもうよい。次にミアとやら。お主はエマ女子と友達だったんじゃろ?」
「そ、そうだよ」
「ならばなぜエマ女子を、踏み外した道から引き戻してやろうとしない?」
「!!」
「お主の優しい性格もあるんじゃろうが、少なくともそれは優しさではない。お主もお主で自らの弱さに甘えとるんじゃ」
ここでイナバが俺の頭にぴょーんと飛び乗ってくる。
「ヤソガミ少年は、自分を貶めようとしたお主らを助けた。それだけではない」
今度はフェエルの肩にぴょーんと飛び移る。
「フェエル少年は、誰も味方がいない状況でもヤソガミ少年を信じて行動を起こした」
再びイナバは俺の頭にぴょーんと戻ってくる。
「あとは自らの頭と心で考えるがよい」
......イナバの言葉は俺にも響いた。
エマもミアも、イナバの言うとおり愚かだったんだろう。
だけど俺だって、一歩間違えばどうなっていたかはわからない。
また昔みたいな失敗を繰り返さないとは限らない。
今回だって、フェエルが俺を信じて来てくれたからなんとかなったんだ。
だからフェエルには本当に感謝したい。
「神使の白兎様はずいぶんと手厳しいね。幸いぼくたちはお褒めにあずかったけど」
フェエルが小声で囁いてきた。
「そうだな。ところでさ」
「ん?」
「ありがとな」
「え?なんのこと??」
「いや、なんでもない」
「ええ?教えてよ」
「だからなんでもないって」
「なんかズルいよそれ!」
そんなやり取りをする俺たちへ向けられたエマとミアの眼差しは、どこかとても寂しそうだった。
だからといって、言うべき言葉は思いつかない。
同情はする。
だけど、俺からしたら今回の事件は一方的なもらい事故のようなもの。
トッパーたちと一緒にフェエルをからかっていたことも許せない。
「愚かじゃな」
重い空気の中、イナバが辛辣に切り出した。
「エマ女子も、ミア女子も」
「イナバ?」
おいおい。神使の白兎はいったい何を言い出す気だ?
「なにを...」
「小僧は黙っておれ。いいか?まずはエマとやら。お主はなぜ学校を辞めん?」
「は??」
「国家魔術師を目指すのを諦めたのなら、さっさと魔法学園など辞めて転校でもなんでもすればよかろう」
「そ、それは」
「本当はまだ諦めきれない。違うか?」
「!!」
「だからこそ、友であるはずのミア女子が気に食わず、ヤソガミ少年も貶めてやりたい。気持ちはわからんでもないが、本当の自分の気持ちと現実を受け入れられない者の甘えじゃな。違うか?」
「あ、あーしは...」
「それとも他にも何かお主を歪めた理由があるのか?」
「それは...!」
「お主はもうよい。次にミアとやら。お主はエマ女子と友達だったんじゃろ?」
「そ、そうだよ」
「ならばなぜエマ女子を、踏み外した道から引き戻してやろうとしない?」
「!!」
「お主の優しい性格もあるんじゃろうが、少なくともそれは優しさではない。お主もお主で自らの弱さに甘えとるんじゃ」
ここでイナバが俺の頭にぴょーんと飛び乗ってくる。
「ヤソガミ少年は、自分を貶めようとしたお主らを助けた。それだけではない」
今度はフェエルの肩にぴょーんと飛び移る。
「フェエル少年は、誰も味方がいない状況でもヤソガミ少年を信じて行動を起こした」
再びイナバは俺の頭にぴょーんと戻ってくる。
「あとは自らの頭と心で考えるがよい」
......イナバの言葉は俺にも響いた。
エマもミアも、イナバの言うとおり愚かだったんだろう。
だけど俺だって、一歩間違えばどうなっていたかはわからない。
また昔みたいな失敗を繰り返さないとは限らない。
今回だって、フェエルが俺を信じて来てくれたからなんとかなったんだ。
だからフェエルには本当に感謝したい。
「神使の白兎様はずいぶんと手厳しいね。幸いぼくたちはお褒めにあずかったけど」
フェエルが小声で囁いてきた。
「そうだな。ところでさ」
「ん?」
「ありがとな」
「え?なんのこと??」
「いや、なんでもない」
「ええ?教えてよ」
「だからなんでもないって」
「なんかズルいよそれ!」
そんなやり取りをする俺たちへ向けられたエマとミアの眼差しは、どこかとても寂しそうだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──
ノリオ
ファンタジー
かつて、刀技だけで世界を破滅寸前まで追い込んだ、史上最悪にして最強の殺人鬼がいた。
魔法も特異体質も数多く存在したその世界で、彼は刀1つで数多の強敵たちと渡り合い、何百何千…………何万何十万と屍の山を築いてきた。
その凶悪で残虐な所業は、正に『鬼』。
その超絶で無双の強さは、正に『神』。
だからこそ、後に人々は彼を『鬼神』と呼び、恐怖に支配されながら生きてきた。
しかし、
そんな彼でも、当時の英雄と呼ばれる人間たちに殺され、この世を去ることになる。
………………コレは、そんな男が、前世の記憶を持ったまま、異世界へと転生した物語。
当初は『無能者』として不遇な毎日を送るも、死に間際に前世の記憶を思い出した男が、神と世界に向けて、革命と戦乱を巻き起こす復讐譚────。
いずれ男が『魔王』として魔物たちの王に君臨する────『人類殲滅記』である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニートの幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る……
佐々木直也
ファンタジー
交通事故で死んだオレが授かった特殊能力は──『怠け者でもラクして最強になれる、わずか3つの裏ワザ』だった。
まるで、くっそ怪しい情報商材か何かの煽り文句のようだったが、これがまったくもって本当だった。
特に、自分を無制限に複製できる【残機無限】によって、転生後、オレはとてつもない成長を遂げる。
だがそれを間近で見ていた幼馴染みは、才能の違いを感じてヤル気をなくしたらしく、怠け者で引きこもりで、学校卒業後は間違いなくニートになるであろう性格になってしまった……美少女だというのに。
しかも、将来有望なオレに「わたしを養って?」とその身を差し出してくる有様……!
ということでオレは、そんなニート幼馴染みに頭を悩ませながらも、最強の冒険者として、ダンジョン攻略もしなくちゃならなくて……まるで戦闘しながら子育てをしているような気分になり、なかなかに困った生活を送っています。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる