上 下
25 / 134
入学編

ep24 理由

しおりを挟む
 *

 授業でやらかしたことにより、俺はクラスで悪目立ちしてしまった。
 おかげでフェエルと仲良くなれたのは良かったけど、今後はできるだけ大人しくしようと思っていたんだ。
 思っていたんだけど......。

「ねえヤソみん。すっごい注目されているね」

「そ、そうだな」

「ジェットレディは今をときめくスター魔術師だからね」

 フェエルの言うとおり「学校を歩くスター魔術師」という非日常的な光景に生徒たちは騒然としていた。
 
「えっ?あれホンモノ?」
「なんでうちの学校にいるの?」
「そういえば今日、ジェットレディの肝入りの特待生が入学したらしいじゃん」
「じゃあ後ろの二人のどっちかがその特待生?」
「小さいほうの奴は前からいたと思うぞ」
「ということは黒髪のほうのアイツか」

 まるで何かのパレードのように人だかりの花道ができている。
 ヤバい。
 完全に悪目立ちだぞコレ!

「ちょっとリボルバーさん!」

 何人かの先生が慌てて俺たちの前に躍り出てきた。

「困りますよ!学校が混乱してしまいます!」

「ええ?なんでだよ?アタシはOGだぞ?」

「それはそうですが、今や貴女は有名人なんですから!」

「カワイイ後輩くんのために来たんだ。別にいーだろ?」

 ジェットレディは肩越しに俺たちへ向かってウインクした。
 もう諦めるしかないねという具合にフェエルが俺を見て微笑する。

「イメージどおりの人だね。ジェットレディは」

「せめてクラスの奴には見られていなければいいけど......」


 *


「寮に着いたぞ!ここも懐かしいな~!」

 ジェットレディに引率されて、俺たちはリュケイオン魔法学園の広大な敷地内にある寮の前に着いた。
 歴史感たっぷりの横長に大きい屋敷のような宿舎は、四階建ての立派な建物。
 所々にハチミツ色の「ハニーストーン」がほどこされた外観は上質なおもむきを演出している。

「どうだ?なかなかステキだろ?」

 ジェットレディがニカッと笑った。

「まっ、アタシがいたのはあっちの女子寮だけどな」

「素敵な寮ですね」

「だろだろ~?」

「あ、あの!」

 突然、フェエルが焦ったように口を挟んできた。
 その声には必死感がある。
 
「ジェットレディ...ジェットさんにおきしたいことがあるんですけど......あ、ぼくはフェエル・ポランと申します...」

「んん?なんだいなんだいフェエルくん?」

 ジェットレディとともに俺もフェエルをじっと見た。
 フェエルがジェットレディに訊きたいことってなんだ?
 妙に必死な感じもなんだろう?

「あの、その、ど、どうしても訊きたくて!」

 フェエルはまごつきながらも覚悟を決めたように切り出した。

「ヤソガミくんのことです!」

「ほう??」

「ジェットさんは、なぜヤソガミくんをリュケイオン魔法学園の特異クラスに斡旋あっせんしたんですか?それとも特異クラスに編入したのは学校の判断ですか?」

 その質問にハッとした。
 フェエルは、トッパーが俺に対して言ったことを気にしていたんだ。
 
"コイツは放ったかしといたら社会的にマズイからとりあえずリュケイオンの特異クラスに引き取った、てのがジェットレディと学園の本音じゃねえの?それがオマエだよ"

 たしかにあの言葉は気になっていた。
 でも、こんな快活お姉さんのジェットレディに限ってそんなことをするだろうか?
 
「ヤソガミくんを斡旋した理由ねぇ」

 うーんとジェットレディは考えこむ素振りを見せるが、すぐに何かを言いたげにニヤリとする。

「誰かになんか言われたのかな?」
 
「あっ、その、ええと...」

 図星を突かれたフェエルは、しどろもどろになりながらも負けずに言った。

「り、理由を教えてください!」

「わかったわかった。まずヤソガミくんを特異クラスに斡旋したのはアタシだ。それに理事長が同意したってわけだ。理由っていってもなぁ。将来のためになるってことじゃダメなのか?」

「そ、それはヤソガミくんの将来のためという意味ですか?」

「もちろんそうだ。でもそれだけじゃないぞ?リュケイオン魔法学園の将来のためでもあるし魔術師界の未来のためでもあるし、ひいては我が国オリエンスのためでもある」

 それはいくらなんでも大仰おおぎょうすぎる理由だった。
 しかしジェットレディに嘘や冗談を言っている様子は微塵みじんもない。
 たぶんこの人は、自らの判断と行動に絶対の自信を持っている。
 ということは......。

「納得はしてくれたかな?フェエルくん」

 フェエルが俺にチラッと視線を投げてきた。
 俺はこくんとうなずいて返しながら、そっと胸を撫で下ろした。
 すると、途端にフェエルはペこぺことジェットレディに恐縮して、
「あ、ありがとうございました。では、ぼくはこれで」
 遠慮するようにそそくさと本来の帰路へ去っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~

まいめろ
ファンタジー
孤児だったエステルは、本来の聖女の代わりとして守護方陣を張り、王国の守りを担っていた。 本来の聖女である公爵令嬢メシアは、17歳の誕生日を迎えても能力が開花しなかった為、急遽、聖女の能力を行使できるエステルが呼ばれたのだ。 それから2年……王政を維持する為に表向きはメシアが守護方陣を展開していると発表され続け、エステルは誰にも知られない影の聖女として労働させられていた。 「メシアが能力開花をした。影でしかないお前はもう、用済みだ」 突然の解雇通知……エステルは反論を許されず、ろくな報酬を与えられず、宮殿から追い出されてしまった。 そんな時、知り合いになっていた隣国の王子が現れ、魔導国家へと招待することになる。エステルの能力は、魔法が盛んな隣国に於いても並ぶ者が居らず、彼女は英雄的な待遇を受けるのであった。

ソロキャンパー俺、今日もS級ダンジョンでのんびり配信。〜地上がパニックになってることを、俺だけが知らない〜

相上和音
ファンタジー
ダンジョン。 そこは常に死と隣り合わせの過酷な世界。 強力な魔物が跋扈し、地形、植物、環境、その全てが侵入者を排除しようと襲いかかってくる。 ひとたび足を踏み入れたなら、命の保証はどこにもない。 肉体より先に精神が壊れ、仮に命が無事でも五体満足でいられる者は、ほんのごく少数だ。 ーーそのはずなのだが。 「今日も一日、元気にソロキャンプしていきたいと思いま〜す」 前人未到のS級ダンジョン深部で、のんびりソロキャンプ配信をする男がいる。 男の名はジロー。 「え、待って。S級ダンジョンで四十階層突破したの、世界初じゃない?」 「学会発表クラスの情報がサラッと出てきやがった。これだからこの人の配信はやめられない」 「なんでこの人、いつも一方的に配信するだけでコメント見ないの!?」 「え? 三ツ首を狩ったってこと? ソロで? A級パーティでも、出くわしたら即撤退のバケモンなのに……」 「なんなんこの人」 ジローが配信をするたびに、世界中が大慌て。 なのになぜか本人にはその自覚がないようで……。 彼は一体何者なのか? 世界中の有力ギルドが、彼を仲間に引き入れようと躍起になっているが、その争奪戦の行方は……。

転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです

れもんぴーる
ファンタジー
実母に殺されそうになったのがきっかけで前世の記憶がよみがえった赤ん坊カティ。冷徹で優秀な若き宰相エドヴァルドに引き取られ、カティの秘密はすぐにばれる。エドヴァルドは鬼畜ぶりを発揮し赤ん坊のカティを特訓し、諜報員に仕立て上げた(つもり)!少しお利口ではないカティの言動は周囲を巻き込み、無表情のエドヴァルドの表情筋が息を吹き返す。誘拐や暗殺などに巻き込まれながらも鬼畜な義父に溺愛されていく魔法のある世界のお話です。 シリアスもありますが、コメディよりです(*´▽`*)。 *作者の勝手なルール、世界観のお話です。突っ込みどころ満載でしょうが、笑ってお流しください(´▽`) *話の中で急な暴力表現など出てくる場合があります。襲撃や尋問っぽい話の時にはご注意ください! 《2023.10月末にレジーナブックス様から書籍を出していただけることになりました(*´▽`*)  規定により非公開になるお話もあります。気になる方はお早めにお読みください! これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!》

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

舌先三寸に覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ
ファンタジー
ヌルッと転移〜〜魔法でパッと簡単に料理や菓子ができるほどヌルくない!  実家の工場の一角をリフォームして、一人でフランス菓子店を営むコニーこと、小西 紫《こにし むらさき》28歳女子。  ある日ナゾの生物によって次元の異なる世界へ引っ張り込まれる。  地球人は「おヌル様」と呼ばれ、コニーは11人目。おヌル様にとって自由を尊重され、やりたい事を応援してもらえる平和でSDGsな世界だった。  エネルギー源の主力は「魔素」。 魔素を含んだ生物・物質は煌めいて、魔素体質の人間も然り。  コニーが異界に降り立った時、キラキラした髪や瞳の2人の男前たちが助けに現れ……  10人の各国出身の地球人によって文化も食事も充実しているので、ゼロからの知識無双はあらず。  ただ過去のおヌル様たちにプロの料理人はおらず、料理・菓子職人としてコニーの培ってき能力で味の追求をしていく。  頑張り過ぎないように頑張って、「動物占いはペガサス」自由を愛するコニーらしく、美味しいものに恋に旅に、新天地を謳歌するお話。  序盤は「はかり」を持っていない為、本格的お菓子始動ならず。お料理からスタートです。  パッと魔法で食べ物はできません。ガチで時間をかけて手作業で作ります。 ときおり本文とリンクさせた、食べ物の写真やイラストを載せています。 表紙イラスト「✿由紀✿」様より 作品内に隠れんぼ とても有名な映画や小説に因んだ、セリフ、題名、文章、モチーフ、人物名なんかが隠されています。見つけられるかな? 気が向いた方は作者までぜひご報告を! カクヨムにも投稿しています。 (アルファポリス先行投稿、ただ誤字脱字等多し。カクヨムには推敲したものをのんびり投稿)      

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...