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一章

第15話『審判の時』(2/4)

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 そこでゴダードはヒロとリナの両者を見ながらいう。
「そこはわしも期待している。わしは得た魔法と技術と組織力で方法を模索している。リナは?」
 
 リナは腕を胸の前でくみ、人差し指を立てて頷きながらいう。
「私も同じよ? ただ私の場合は魔力特化だけどね」
 
 するとゴダードは幾分眉間に皺を寄せたのち、真剣な眼差しでリナへいう。
「質を高めるか……。食肉候補は免れないぞ?」
 
 リナはすでに腹を括っているのか、教団組織を作ろうと考えた時から決めたいたかの様子でいう。
「覚悟の上よ?」
 
 それを見たヒロは、早くも覚悟を決めていたリナに尊敬の念を抱く。
「リナさん強いな……」
 
 ところが、ヒロが勘違いをしているとリナは思い改めて言う。
「ヒロくん何言ってるの? あなたも十分候補よ?」
 
 ヒロは魔人である以上、食肉候補としては除外されていると内心思っていた。
「え? 俺が?」
 
 リナは改めて、ヒロとゴダードを見て言う。
「ええ。ここの三人は異常に質が良いから、間違いないわ」
 
 ゴダードはそれに頷き、先を急ごうと皆に言う。
「いずれにしても、もうさいは振られた。我らができることで最大限の策を練ろう」
 
 話が少し落ち着いたところで、ヒロは気になっていたことを聞いた。
「教授はなぜ青ノ太陽を?」
 
 ゴダードはいつものように顎髭を触りながら、ヒロに問う。
「感染者が少なければたしかに良いかもしれない。そう思っているだろう? ヒロ」
 
 そこは疑問の余地が無いため、素直にヒロは返事をした。
「はい」
 
 ゴダードは眉をハの字にして下げると、残念そうに言う。
「ところが、そうなるとセトラーがきた時には手遅れなんだ」
 
 ヒロ自身はラピスから話をきていたので、ゴダードが別のことを知っているのか答え合わせをしてみたくヒロは聞いた。
「というのは……なんですか?」
 
 ゴダードは勇者ウイルスが相当な力になると聞いているのか、その存在の重要さを簡潔に言った。
「ああ。勇者ウイルスに感染した者がゼロでは時間稼ぎすらできず、蹂躙されて終わる」
 
 ラピスから聞いているとはいえ、そこまでの存在だったのかと改めて思いヒロは聞く。
「勇者ウイルスの発症が数ないイコール、ただの魔法では抵抗できないからですか?」
 
 そこまでの力を持つ勇者ウイルスが果たして素直に言うことを聞いてくれるのか、そっちの方をヒロは心配していた。
 急な大きな力を持てば気は大きくなるだろうし、傲慢になることも目にみえる予測だ。
 人が銃や日本刀を持った瞬間、どこか強くなったと錯覚するのと同じだ。
 
 ゴダードは勇者ウイルスとその発症者を信じ切っているのか続けていう。
「そうだ。程度の大小関わらず、勇者ウイルスの感染者さえいればチャンスはあるし、抵抗も一定数可能だ」
 
「もし、抵抗が弱ければどうなるんですか?」

「順次食糧だな。他の皆は美味しく食べられてしまうだろうな……」
 
 ヒロはセトラーの洗脳攻撃である『Sシャウト』をラピスより聞いていたのを思い出し言う。
「もしかして、彼らの『Sシャウト』で、強制的に食糧にされてしまうとかですか?」
 
 ゴダードも共通のことを知っていたのか、感心しながら言った。
「その通りだ。よくわかったな」
 
 ラピスから聞いたことだと、ありのままをヒロは伝えた。
「ラピスから、感染当初に計画を聞いていたので、想像に難しくなかったです」
 
 ゴダードはヒロも知るであろう情報を、再確認の意味でも伝えた。
「勇者ウイルスはその名の通り、勇者が悪と認識した相手に打ち勝つ力を持つ」
 
 そこであえてヒロは、知識の差を埋めるため質問をしてみた。
「それならば、余計セトラーにとって不利ではないですか?」
 
 ゴダードは顎髭に手をやり、何度か撫でると考えるような仕草をし言った。
「一見そう思うよな。自分たちが不利になるのを分かっていながら、感染者を増やすのはなぜなのかとな」

 そこはラピスから当初聞いていた答えがあったので、ヒロは言う。
「はい。ただ、魔力が肉体に馴染み美味しくなるには、時間がかかると聞いています」

 ゴダードは、正解と言わんばかりに頷きながら言った。
「その通りだ。ところがセトラーの次の計画では、勇者ウイルスを打倒する計画がある」

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