31 / 37
一章
第13話『目覚め』(1/2)
しおりを挟む
夜は明けてくると、朝焼けが無人となった廃墟ビルの窓ガラスを通して、十字架に貼り付けされた者の体を照らす。
ビルの建物に囲まれた狭き一角には空き地があり、十字架へ磔にされた者の体表には、凝固した黒い血が生々しくこびりつき残る。
頭は項垂れて下がっていたのに、いつの間にか頭が起き上がると目は赤く光り、何かを叫んでいた。
空に向けて吠えている姿は圧巻で周辺の壁は唸りを上げて、窓ガラスは砕け散ってしまう。
ヒロは雄叫びを上げ続けた。
「グオォォォォォオオ!」
しばらくしてから何事かと、ヒロを刺殺した者たちが集まってきた。
突然の変わりように困ってしまう。
いくら恨みつらみがあったとしても、再び意識を取り戻した者をあえてもう一度殺めてやろうなどと思う者は、あまりいない。
ただ見守るしかなく、集まった一部の当事者の者たちは、呆然と眺めているしかなかった。
体全身が眩い光に包まれたかと思うと、巨大化していきその姿は『黄金の魔人』に変化をしていった。
身の丈どのぐらいにまで至ったのか、他の魔人たちより目線が高い位置にあるようにも思えた。
ヒロを拉致った残りの者たちもこぞって現れると、『黄金の魔人』になったヒロへ魔法をぶつけてくる。先に集まった者は抵抗感があるのか、後ろにひいいてしまう。
リーダー格の20代前半ぐらいで逆毛短髪の黒い髪の男は、周りに檄を飛ばす。
「お前ら! まずは手をだせ! 魔法を放て!」
それを受けた一人の同じく20代ぐらいの茶色の長髪女性は、狼狽えるようにいう。
「でも……。昨日死んだんでしょ? それをまたなんて……」
リーダー格の男は再びいう。
「目の前を見ろ! やらなければやられるのは俺たちだぞ!」
すると女性は、両手の拳を握りしめ堰を切るように言い始めた。
「なら! 私は逃げるわ! あなたのやり方についていけないし。それに、教祖リナ様の方が断然いいと聞くわ。さよなら!」
彼女の言葉に、敏感に反応した複数名の男女がこの場を離れてしまう。
それでもいく人かは残り、攻撃を加えていた。
その中にいた者は、ヒロに対して怨嗟の視線を常に注ぎつけた者たちばかりが残る。
――数十分。
彼らの決死の攻撃は虚しく、何も変化を生み出しはしなかった。
その攻撃はそよ風程度にしかないのか、受け流す様子で魔人が動じることもないのは明らかだった。
眠らせていた子を起こす行動で、今更後悔しても遅い。
何をしくじったか、何を間違えたのか彼らが脳裏で考えていても事態は変わらないだろう。
より悪化していく一方なのは、火を見るより明らかだった。
そこでヒロは、再び大きく叫ぶ
「グオおおおおお!」
まるでそれに呼応するかのよに、ようやくラピスが久しぶりに反応した。
それはまるで、突然何も知らされていない観客が目撃したかのような態度でラピスは言った。
「ヒ……ロ?」
その声を聞き、ヒロは時間が止まったかのように突然動きを止めた。
雄叫びを上げるだけだった野獣のような状態のヒロを、いつものヒロに呼び覚ましたのは他でもないラピスだった。
どこか懐かしくとも、ようやく安心できる相手。
その存在の声が聞けたので、安堵する気持ちがヒロの中で広がる。
見た目は変わらずとも、内に向けた声へヒロは意識を移した。
「ラピス……。大丈夫、なのか?」
まるで反応がなかったので、ヒロの今は安堵の方が大きいだろう。
こうして存在を確認できたのは、ヒロにとってこの事実はとても大きなことだった。
そこでラピスはいう。意識が閉じ込められたようになって、ナノマシンの集合体である液体金属の不具合に、心血を注いでいたと。
ある意味緊急事態だったようだ。
なぜなら、ナノマシンの不具合イコール保持者の死に直結する出来事へつながるからだ。そうなると全てのリソースをさいて、対処対応に当たらないと手遅れになる。その危機感で今の今ままで対応していたという。
結果として、ギリギリ間に合い修復は完了。偶発的な不具合だったようだ。
もそもとして、ヒロがより力を発揮できるようにと改造したのが不味かったようで、それにより誤動作を起こしていたという。
ラピスはほっと一息ついたと言わんばかりのいつものペースでの発言だ。
「ほんと、チョーやばかった」
ところがヒロは現状、黄金の魔人の力が膨れ上がることでラピスの助言に耳を傾けるのは難しいところまで来ていた。
ヒロはラピスの声に対して反応をするのがやっとだった……。
「あ、ああ……」
ビルの建物に囲まれた狭き一角には空き地があり、十字架へ磔にされた者の体表には、凝固した黒い血が生々しくこびりつき残る。
頭は項垂れて下がっていたのに、いつの間にか頭が起き上がると目は赤く光り、何かを叫んでいた。
空に向けて吠えている姿は圧巻で周辺の壁は唸りを上げて、窓ガラスは砕け散ってしまう。
ヒロは雄叫びを上げ続けた。
「グオォォォォォオオ!」
しばらくしてから何事かと、ヒロを刺殺した者たちが集まってきた。
突然の変わりように困ってしまう。
いくら恨みつらみがあったとしても、再び意識を取り戻した者をあえてもう一度殺めてやろうなどと思う者は、あまりいない。
ただ見守るしかなく、集まった一部の当事者の者たちは、呆然と眺めているしかなかった。
体全身が眩い光に包まれたかと思うと、巨大化していきその姿は『黄金の魔人』に変化をしていった。
身の丈どのぐらいにまで至ったのか、他の魔人たちより目線が高い位置にあるようにも思えた。
ヒロを拉致った残りの者たちもこぞって現れると、『黄金の魔人』になったヒロへ魔法をぶつけてくる。先に集まった者は抵抗感があるのか、後ろにひいいてしまう。
リーダー格の20代前半ぐらいで逆毛短髪の黒い髪の男は、周りに檄を飛ばす。
「お前ら! まずは手をだせ! 魔法を放て!」
それを受けた一人の同じく20代ぐらいの茶色の長髪女性は、狼狽えるようにいう。
「でも……。昨日死んだんでしょ? それをまたなんて……」
リーダー格の男は再びいう。
「目の前を見ろ! やらなければやられるのは俺たちだぞ!」
すると女性は、両手の拳を握りしめ堰を切るように言い始めた。
「なら! 私は逃げるわ! あなたのやり方についていけないし。それに、教祖リナ様の方が断然いいと聞くわ。さよなら!」
彼女の言葉に、敏感に反応した複数名の男女がこの場を離れてしまう。
それでもいく人かは残り、攻撃を加えていた。
その中にいた者は、ヒロに対して怨嗟の視線を常に注ぎつけた者たちばかりが残る。
――数十分。
彼らの決死の攻撃は虚しく、何も変化を生み出しはしなかった。
その攻撃はそよ風程度にしかないのか、受け流す様子で魔人が動じることもないのは明らかだった。
眠らせていた子を起こす行動で、今更後悔しても遅い。
何をしくじったか、何を間違えたのか彼らが脳裏で考えていても事態は変わらないだろう。
より悪化していく一方なのは、火を見るより明らかだった。
そこでヒロは、再び大きく叫ぶ
「グオおおおおお!」
まるでそれに呼応するかのよに、ようやくラピスが久しぶりに反応した。
それはまるで、突然何も知らされていない観客が目撃したかのような態度でラピスは言った。
「ヒ……ロ?」
その声を聞き、ヒロは時間が止まったかのように突然動きを止めた。
雄叫びを上げるだけだった野獣のような状態のヒロを、いつものヒロに呼び覚ましたのは他でもないラピスだった。
どこか懐かしくとも、ようやく安心できる相手。
その存在の声が聞けたので、安堵する気持ちがヒロの中で広がる。
見た目は変わらずとも、内に向けた声へヒロは意識を移した。
「ラピス……。大丈夫、なのか?」
まるで反応がなかったので、ヒロの今は安堵の方が大きいだろう。
こうして存在を確認できたのは、ヒロにとってこの事実はとても大きなことだった。
そこでラピスはいう。意識が閉じ込められたようになって、ナノマシンの集合体である液体金属の不具合に、心血を注いでいたと。
ある意味緊急事態だったようだ。
なぜなら、ナノマシンの不具合イコール保持者の死に直結する出来事へつながるからだ。そうなると全てのリソースをさいて、対処対応に当たらないと手遅れになる。その危機感で今の今ままで対応していたという。
結果として、ギリギリ間に合い修復は完了。偶発的な不具合だったようだ。
もそもとして、ヒロがより力を発揮できるようにと改造したのが不味かったようで、それにより誤動作を起こしていたという。
ラピスはほっと一息ついたと言わんばかりのいつものペースでの発言だ。
「ほんと、チョーやばかった」
ところがヒロは現状、黄金の魔人の力が膨れ上がることでラピスの助言に耳を傾けるのは難しいところまで来ていた。
ヒロはラピスの声に対して反応をするのがやっとだった……。
「あ、ああ……」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
窓際の交錯
K.N.
恋愛
成瀬康汰(なるせ こうた)、27歳。
都内のIT企業で働く彼は、今年1月から虎ノ門の本社勤務となり、静かな日常を過ごしていた。
ビルの10階で働く康汰は、仕事以外に大きな刺激もなく、昼食を取ることも稀だった。ただ、時折1階のカフェに足を運び、窓際の席で小説を読みながらコーヒーを楽しむことが、珠の息抜きになっていた。
一方、同じビルの6階で働く23歳の小牧月香(こまき るか)。
彼女もまた、同じカフェで時折パニーニを頬張っていた。普段は週末に作り置きしたお弁当を持参する彼女だったが、うっかり忘れてしまった時には、カフェに足を運んでいた。
ある日、混雑するカフェの中、窓際の席に腰掛け小説を読んでいた康汰の前に一人の女性がふと現れた。
見覚えのある彼女に驚きながらも、康汰は気づかぬふりをしていたが、彼女は微笑みかけながら言った。
「こんにちは!」
それが、康汰と月香の初めての会話だった。日常の中で交差する二人の人生が、静かに動き始める。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる