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1章

第28話 殲滅 勇者の軍勢(3/3)

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 二体目の指揮官ゴーレムに強襲をかけた。

「ダークボルト!」

 地面を穿、両足を打ち砕く。勢い余ってうつ伏せに倒れ始めた。
痛みも無いことから、即時復帰して両腕を使い俺に向けて迫る。

 変わらず、出鱈目な性能に思わず歯噛みする。
一度でも敵と認定すると、自らが存在しなくなるまで戦い続ける。
敵になると厄介な相手だ。

 俺はすかさず、ダークボルトを放つ。
胸部に現れた大きな亀裂目掛けてだ。瞬間的に反応して回避行動にでた。
かなり機敏な反応に驚く。今までにない行動パターンだ。

 ほんのわずかながら、胸部は避けられても右半身はほとんど吹き飛んでしまう。
俺は瞬時に間合いを詰めるべく、地面をける。
視界が一気に後ろに押し流されると、目の前には半身だけのゴーレムがいた。

 剥き出しになる魔石をつかみ、直接ひっぺがす。
途端に、行動が停止して動き出すことはなかった。

 指揮官クラスは、ようやく終わった。

 エルとリリーたちも残すところわずかの様子だ。
物の五分もしないうちに討伐が終わり、俺たちは合流する。

「レン、何か変な感じがあの門から感じるわ」

「エルもなのか? 俺も……この感じは何か妙だな」

「私も感じたぞ! 何かまとわりつく嫌な感じだな!」

 俺たちは、門から目が離せないでいた。
連戦の疲労が癒えないうちに、妙な気配を放ち何かを予感させる。

 突然現れたのは、人族だった。

 騎士風から魔導士風など入り混じった混成チームのようだ。
数にしてすでに数百はいる。沸き続けているので最終的には何人か不明だ。

 黒目・黒髪の姿は、どうみても日本人に見えた。

 彼らはこちらを認識したのかざわつき始める。
ところが、何をいっているのか言語がわからない。
こんなことが起きたのは初だ。

 しかも日本語ではない異なる言語体系にも聞こえる。

 見た目は日本人で、しゃべる言葉はまるで違う。
しかもこのような場所での出会いとなると残りは悲劇しかない。

――そう、殺し合いだ。

 エルもリリーも相手の様子がおかしいことに気が付き
いつでも放つ準備は、すでに完了していた。後は一斉に放つだけである。

 俺は試しに、一度だけ声をかけてみた。

「お前ら、日本人か?」

 すると幾人か反応を示す。やはり、何を言っているのかわからない。
その問いの答えは、奴らが一斉にスキルを駆使し始めたことで開幕した。

 顎骨指輪の言っていた勇者が、コイツらだとするならば、使えるはずだ。

「ヴォルテックス!」

 瞬時に悪魔化した俺は、ダークボルトを向かいの勇者風情の者たちに叩きつけた。
泣き叫ぶ絶叫とともに互いに、魔法の乱れ打ちが始まる。

 騎士風の姿格好をしている者たちでさえ、何かの魔法を放ってきた。
まずは、様子見だろう。

 この時ばかり俺は、無慈悲に遠慮なく力の限り打ち始めた。

 動きがどこか手慣れていない感じも、まさしく勇者の特徴だろう。
何らかしらのスキルの恩恵と、装備の恩恵のみで、ここまできたことがうかがえる。

 さらに、自らが導いた結果得た力だと、慢心していたことも想像に難しくない。
そうでなけらば、ここまで酷い殲滅戦にはなっていないだろう。
とはいえ、どの一撃も大きく力強い。さすが勇者と言われるだけはある様子だ。

 魔法の撃ち合いが一段落したのか、それとも次の準備に入るためか騎士風の勇者が迫る。

 剣から繰り出される攻撃と魔法は舌を巻くほどであっても、肝心の技術が追いついていない。
拙い剣捌きで、振り回されている印象すら抱かせる。

 単に技や魔法や装備たちにとって、勇者は自らを使い動かすための道具でしかないとも見られる。
いわゆる肉でできた蓄電池のような物に、成り下がっている。

 こことは異なる平行世界かもしくは、まったく別の何か何だろう。
最初の意気揚々とした表情は陰り、悲壮感と絶望感だけが肉体を支配しているように見えた。

 そこまでする使命感はあるのだろうか? 恐らくは無い。

 虚栄心で突き動かされた挙句、現実を知りどうにもならなく、命を散らしている。
もしかすると、勇者の手から離れることが目的だったのだろうか。
技や魔法や装備たちの視点からみると、この地にきて自由になることが狙いにも思えてしまう。
 
 胸の内まで察することはできない。彼らはすでに刃を向けてしまったからだ。

 今残された道は、ヤルかヤられるかの二択しか残されていない。
命乞いや捕虜などの選択肢を考慮できるのは、勝者だけで敗者の選択肢はない。

 ようやく湧き出る速度が止まり、もうは出てこないことが確認できた。

「エル、リリー全力放出だ!」

「わかった任せて!」

「私も行くぞ!」

 エルとリリーから無慈悲で凶暴な魔力が勇者に殺到する。
この魔法の前には、何者も断じて命が残ることは許されない。

 そんな意思表示を二人から感じとった。

 俺もみているだけでなく、迫る勇者を迎えうつ。
上段から振りかぶる魔剣の類は、俺の体に傷一つつけられない。
エルの物に遠く及ばずというところだ。

 俺はそのまま肩で受け、驚きで一瞬硬直するこの勇者の胸を手刀で串刺しにする。
掴んだ心臓はそのまま握りつぶして、次の勇者の顔に投げつける。

 慌て同様をした勇者は、何かのスキルを使用したのか武器に振り回された状態で接近する。
短剣二刀流と円熟した剣技を見せる物の、体が追いついていない。
 
 俺は瞬時に間合いを詰めて、掌底でダークボルトを撃ち放つ。
勇者の背後にいたものは、爆裂した背中から臓物で目眩しを受けた。

 すかさず、連続してダークボルトを放ち、目を開けた時はすでに胴体が上下に別れた時だ。

 俺の周囲でも泣き叫び、ヤケになり突撃してくる者など地獄絵図の様子だ。
まだ五分の一程度しか殲滅しておらず、さらに攻撃を加速させた。
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