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1章
第14話 帝国へ
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俺たちはあの後、これ以上得る物がないため立ち去る。当然、お布施の金を根こそぎ頂いてからだ。やはり、何をするにも金がいる。魔法界もななかなか世知辛。リリーは、どこか慌てていたところを見ると、生来のマジメさが現れているんだろう。しきりに「私は、盗みを働いてしまった……」といい、少しオロオロする様子を見せていた。
それにしてもこの調査は、難航していた。多少新しい情報が得られたとはいえ、ますます疑問が深まる。その焼印師に対しては魔法界と比較すると、俺が悪魔だった頃に得た話しにかなりの差がある。魔法界には、目新し情報はほとんどないと言っても、いいぐらいだ。反対に悪魔たちには、知る意欲がないだけで、俺がいた元の世界だと比較的情報は多かった。ただ、少なくとも彼らが存在したのはこの魔法界なので、痕跡としては探しやすいと考えている。今はまだ情報が少なすぎて、見つからずではある……。
今帝国領に向かい、俺とエルとリリーの三人は、馬車に揺られている。ちょうど、あつらえ向きの荷車と馬が、セットで置いてあったので拝借した。エルだとなんらかしらの力により、馬を死ぬまで走らせてしまう。そのため、俺とリリーが、代わる代わる御者を勤める。こんな時、エルの力は万能であっても、力の強弱が難しい様子だ。
今回も道中は変わらず、襲撃者がいない。当然魔獣も含めてだ。ついさっき知った理由は、エルのもつ力で”天使結界”なる物があるらしい。それを発動していると忌避感が強くなり、近寄らなくなるとのことだ。半径一キロメートル以上に作用するため、かなりの安全対策だ。
知らず知らずの内に対応してくれているエルには、感謝しかない。
馬車に揺れている間は時間がありあまり、それぞれ思い思いに過ごしている。俺は今この時も、元の持ち主の記憶が揺れ動く。幻覚を見せられた時に、顕著に現れたのがきっかけになったのかもしれない。鳴りを潜めていた記憶が、転生直後の時より激しく現れる。
何度も浮上しては消えてを繰り返す記憶は、励まし合うべき同郷の奴らに、裏切られ殺される直前の記憶だ。とはいえ、俺が敵討ちをしているので、その直前にされたことなど、感情的にはスッキリしている。元の持ち主は知る由も無いことで、少し残念ではある。
「レン、方角はこっちでいいのか?」
「ああ。この一本道をひたすら進むだけだ」
今御者は、ちょうど交代したところでリリーがしている。俺は荷台に腰をおろすと、エルは麻袋の上に寝ている。天使も寝るのは何度も見ているけども、どこか微笑ましく思ってしまう。
俺は今、帝国に入った後のことを考えていた。それこそ今回の王都とは、比較にならないほど大きいと聞く。入る際の検問はあったとしても、王国の金で買収はできるだろう。それよりも入った後の方が、問題なことに気がついた。
それは魔力結界だ。かなり強力な魔力結果を用いているらしく、町中で攻撃魔法の威力が落ちるかまたは、使えないようになっていると聞く。さらに人外を対象としたベールが複数存在していて、通行させないようにしている場所も複数あるらしい。獣人などは通過できるそうで、それ以外の種だと通りたい場合は、一定の審問があるそうだ。
だからこそ、安全性を担保している様子だ。その分商売は繁盛していて、各国から移民が絶え間なくくるという。それなら皆同じように、平和な作りにすればいいと思っても、ことはそう、単純ではないみたいだ。
もう一つの発展した要因は、ダンジョンだ。
この帝国に隣接する形で、ダンジョンが存在している。その中で生息する魔獣の部位が高価に売買されるばかりでなく、どういう仕組みなのか古代の優秀な武具が宝箱から出土する。それを目当てに集まる人らが絶えないため、その人らを対象にした商売も盛んだ。これだけ聞くと、すべてがうまく経済として回っているようにも見える。
ところが食料に関しては、作物の収穫が厳しくて、他国の物を頼るしか無い現状がある。何もかもうまく行くとは限らない事例だ。その点俺たちは、人ではないから食料はほとんど必要がない。せいぜいたまに食べるか、魔力核をそのまま摂取するなどして維持しているのが現状だ。
「図書館にいけないとしたら……」
俺は思わず呟く。するとそれに反応したのか、エルが横になりながら応えた。
「大丈夫。人の結界は、天使の結界には遠く及ばないわ」
「もしや、阻害を排除するのか?」
「正解よ。人の形での結界なら相手の結界を壊すことなく、緩やかに回避できるわ」
「なるほどな。助かる」
「どういたしまして」
エルの予想外の天使結界作用で、なんとかなりそうだ。あとは、追手がきた場合の対処だな。連中らはどこだろうと、関係なしに襲撃してくる。威力が落ちるなら、それ以上に出せばいいという、脳筋な奴らが多いのも悪魔である特徴の内の一つだ。
帝国でも戦場となるとそろそろ俺もお尋ね者なりそうな予感がする。人数が多くて、全員を消すには骨が折れるし、現実的ではない。
こうして考察している時間は、久しぶりな感じがする。ぼんやりとそんなことを考えていた。
ようやく、帝国が見えてくる。それは、眼下に広がる広大な風景を、山岳からはっきりと区別ができるほどに、広がりを見せていた。
それにしてもこの調査は、難航していた。多少新しい情報が得られたとはいえ、ますます疑問が深まる。その焼印師に対しては魔法界と比較すると、俺が悪魔だった頃に得た話しにかなりの差がある。魔法界には、目新し情報はほとんどないと言っても、いいぐらいだ。反対に悪魔たちには、知る意欲がないだけで、俺がいた元の世界だと比較的情報は多かった。ただ、少なくとも彼らが存在したのはこの魔法界なので、痕跡としては探しやすいと考えている。今はまだ情報が少なすぎて、見つからずではある……。
今帝国領に向かい、俺とエルとリリーの三人は、馬車に揺られている。ちょうど、あつらえ向きの荷車と馬が、セットで置いてあったので拝借した。エルだとなんらかしらの力により、馬を死ぬまで走らせてしまう。そのため、俺とリリーが、代わる代わる御者を勤める。こんな時、エルの力は万能であっても、力の強弱が難しい様子だ。
今回も道中は変わらず、襲撃者がいない。当然魔獣も含めてだ。ついさっき知った理由は、エルのもつ力で”天使結界”なる物があるらしい。それを発動していると忌避感が強くなり、近寄らなくなるとのことだ。半径一キロメートル以上に作用するため、かなりの安全対策だ。
知らず知らずの内に対応してくれているエルには、感謝しかない。
馬車に揺れている間は時間がありあまり、それぞれ思い思いに過ごしている。俺は今この時も、元の持ち主の記憶が揺れ動く。幻覚を見せられた時に、顕著に現れたのがきっかけになったのかもしれない。鳴りを潜めていた記憶が、転生直後の時より激しく現れる。
何度も浮上しては消えてを繰り返す記憶は、励まし合うべき同郷の奴らに、裏切られ殺される直前の記憶だ。とはいえ、俺が敵討ちをしているので、その直前にされたことなど、感情的にはスッキリしている。元の持ち主は知る由も無いことで、少し残念ではある。
「レン、方角はこっちでいいのか?」
「ああ。この一本道をひたすら進むだけだ」
今御者は、ちょうど交代したところでリリーがしている。俺は荷台に腰をおろすと、エルは麻袋の上に寝ている。天使も寝るのは何度も見ているけども、どこか微笑ましく思ってしまう。
俺は今、帝国に入った後のことを考えていた。それこそ今回の王都とは、比較にならないほど大きいと聞く。入る際の検問はあったとしても、王国の金で買収はできるだろう。それよりも入った後の方が、問題なことに気がついた。
それは魔力結界だ。かなり強力な魔力結果を用いているらしく、町中で攻撃魔法の威力が落ちるかまたは、使えないようになっていると聞く。さらに人外を対象としたベールが複数存在していて、通行させないようにしている場所も複数あるらしい。獣人などは通過できるそうで、それ以外の種だと通りたい場合は、一定の審問があるそうだ。
だからこそ、安全性を担保している様子だ。その分商売は繁盛していて、各国から移民が絶え間なくくるという。それなら皆同じように、平和な作りにすればいいと思っても、ことはそう、単純ではないみたいだ。
もう一つの発展した要因は、ダンジョンだ。
この帝国に隣接する形で、ダンジョンが存在している。その中で生息する魔獣の部位が高価に売買されるばかりでなく、どういう仕組みなのか古代の優秀な武具が宝箱から出土する。それを目当てに集まる人らが絶えないため、その人らを対象にした商売も盛んだ。これだけ聞くと、すべてがうまく経済として回っているようにも見える。
ところが食料に関しては、作物の収穫が厳しくて、他国の物を頼るしか無い現状がある。何もかもうまく行くとは限らない事例だ。その点俺たちは、人ではないから食料はほとんど必要がない。せいぜいたまに食べるか、魔力核をそのまま摂取するなどして維持しているのが現状だ。
「図書館にいけないとしたら……」
俺は思わず呟く。するとそれに反応したのか、エルが横になりながら応えた。
「大丈夫。人の結界は、天使の結界には遠く及ばないわ」
「もしや、阻害を排除するのか?」
「正解よ。人の形での結界なら相手の結界を壊すことなく、緩やかに回避できるわ」
「なるほどな。助かる」
「どういたしまして」
エルの予想外の天使結界作用で、なんとかなりそうだ。あとは、追手がきた場合の対処だな。連中らはどこだろうと、関係なしに襲撃してくる。威力が落ちるなら、それ以上に出せばいいという、脳筋な奴らが多いのも悪魔である特徴の内の一つだ。
帝国でも戦場となるとそろそろ俺もお尋ね者なりそうな予感がする。人数が多くて、全員を消すには骨が折れるし、現実的ではない。
こうして考察している時間は、久しぶりな感じがする。ぼんやりとそんなことを考えていた。
ようやく、帝国が見えてくる。それは、眼下に広がる広大な風景を、山岳からはっきりと区別ができるほどに、広がりを見せていた。
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