無能の瞳 その者は世界の共犯者〜魔力なしで無能と蔑まれ、他力本願の力に依存する。【憑依召喚】で体を乗っ取られて、もうすぐ俺が最強だ〜

一章

第15話：闇への道標: 未知なる明日への誓い（2/4）

　『白』は、円卓の取りまとめ役らしく、静かに反応する。

「『土』よ、その話は別として、今重要なのは彼が本当に『保持者』かどうかだ。所持しているか否かで、我々の対応は大きく変わる」

　『青』は、皮肉げに返答した。

「保持者だとして、どう対処するつもり？　私たちの行動に変化はあるの？」

　この六人の間に流れる会話は続く。

　卓上に輝く水晶から映し出されるレンの三次元映像は、部屋の暗がりに神秘的な光を放っていた。水晶球は彼らにレンの全身を細部まで見せ、これまでの行動を総括する特別な魔法アイテムである。

『白』は、水晶の映像に目をやりながら、思慮深げに語り始めた。

「確かに、我らの最初の関心事は彼の目的じゃ。保持者としての長い時を経て彼が我々への関心を失うのは自然なこと。しかし、保持者としての新米である今、その力の扱い方によっては様々な可能性が考えられる。だからこそ、慎重な観察が必要だということに他ならない」

『赤』は、戦いへの期待を隠せない様子で同意した。

「その通りだ。人間であっても、この力を使って挑むのは興味深い。守護者『八啓』の後ろ盾としてな」

『青』は、彼らのやり取りを楽しんでいるかのように、妖艶な笑い声を漏らす。

「ふふ、いつもの『赤』ね。でもまずは観察、その上で人間であれば……彼を手に入れるのも悪くないわ」

『風』は冷静に状況を分析し、次なるステップを提案する。

「もしも彼が人間と誤認され、保持者として攻撃を受けた場合の策も考えるべきだ。教団との関係も含め、彼の今後の行動が我々の判断に大きく影響する」

『白』は、全員の意見に耳を傾けながら、慎重な姿勢を強調した。

「まだ彼について知らぬことは多くある。『八啓』に及ぶかどうかは現時点で不明じゃが、先走ることなかれ。我々の行動は彼の目的にかかっている」

『風』と『土』は、レンが未知の脅威となり得る可能性に備え、様々な対策を準備することに合意し『土』は述べた。

「事前に準備を整えることに異論はない。しかし、最終的には彼と直接対話し、誤解を解くことも重要だろう。それでも問題が解決しない場合は、『四騎士』を呼び起こすことも考慮に入れるべきだ」

『白』は重みのある声で始めた。「上位の者たちは、独自の考えでしか動かぬ……。せめてもの救いは、八啓と十一人の本物の勇者、それに四騎士までじゃ。『風』や『土』ならば、彼らは邪険にはせん。協力してくれる可能性もある。だが、『赤』、『青』の方は、どうじゃろう？」

『青』は、思案げに口を開いた。「私の管轄は少し難しいわね……。でも勇者たちは別。彼らの力は、確かに格別だから」

『赤』は、力強く答えた。「俺の管理下では、強者がいれば挑む価値はあるな」

　静寂の中で、彼らは『事情を説明する』という結論に至り、今得られた情報を基に次の一手を考えることにした。

『白』は深くうなずきながら言った。「それでは、一旦十一人の勇者と四騎士に事情を説明し、彼らの反応を見守ることにしよう。それでは警戒段階を『滅・天・空・地・害・下』で下から二番目相当の『害』に設定する。皆の意見はどうじゃ？」

　一同が順番に同意の意を示した。

『白』が最後に無言の『無』に目を向けた。「『無』、お主はこの議論に何か付け加えることはないのか？」
　
　背中までかかる長い黒髪の無口な少女の姿である『無』は、ほんのわずかだが首を横に振った。

『白』は、優しく言った。「わかった。何かあれば後ほど言うがよい」

『青』が立ち上がり、宣言した。「それでは決めることは決まったわ。今日はここまで。観察以外の行動は慎んでね。さよなら」

　そして彼女は空間を歪ませ、忽然と姿を消した。