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一章

第8話:階位の始まりと力との対話(8/10)

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 思いこせばレンが気づいた瞬間、彼と目が合っているかのようだった。しかし、それはレンに意図して見せたのではなく、むしろレンに偶然見つかったと今思えば感じられた。
 彼の目、紅い輝きに隠された謎はまだ多く、その力がどう他と異なるのか、レン自身も掴みかねている。

 そんな時、レンは肩をすくめながらルナに向き直り、手を広げてため息を交えて言った。「正直、これに関しては俺にも答えがないな」

 ルナはいつも通り、知識への渇望を隠さず、興味深くレンに迫った。「ねえ、どんな話だったの?」

 悪魔に対する嫌悪感など微塵も見せず、まるで有名人との会話を楽しむかのように聞き入るルナ。彼女は常に新しい知識に飢えており、レンの話に真剣に耳を傾けていた。

 妖精のルナと悪魔のザバキエル、互いに異なる存在であるが、共に害を与えずに済むならば、それは良好な関係と言えるだろう。ルナが悪魔と何度も遭遇してきた経験は、彼女が作成する憑依召喚の魔導書にも反映されている。

 このような異種族との出会いは、ルナにとって知的好奇心を刺激するものだった。彼女との会話は、レンにとっていつも心地よく、ルナは明るく前向きな態度で、レンの心を癒し、励ましてくれる。

 ルナは短い間にもかかわらず、レンが直面した多くの挑戦を支えてきた。彼女はレンにとって、精神的な支柱となり、彼の不安を和らげ、肯定的な視点をもたらしてくれる。

 そしてレンは、悪魔から得た教訓を、自分の体験と絡めてルナに伝えた。「悪魔は俺が悪のエリートだって言っていたよ」

 レンの想定外の回答に「え、何でそう言ったの?」とルナは好奇心旺盛に尋ねる。

 レンは過去を振り返りながら答えた。「たぶん、以前困っている友人を見捨てたことや、無意識に人を傷つけたことが影響しているんだと思う」

 ルナは現実主義者であり、人々が自身の生活に追われ、他者の問題に目を向ける余裕がないことを理解している。「そんなことで気に病む必要はないよ。無意識に傷つけたって、言われなければ気がつかないものだし」

 レンはルナの言葉に安堵し、「ああ、そうだな。ありがとう」と応える。

 ルナの質問は、レンに自身の行動を省みる機会を提供し、さらには彼が自己認識を深めるきっかけともなった。「他者を無視することができる、それが悪魔の言うところの『悪のエリート』だってさ」

 レンはこれまでの自分を振り返りつつ、そのような自分も受け入れていくことで、自己の成長につながる何かを見出そうとしていた。この過程で、ルナとの会話が彼にとって大きな助けとなる。

「でも、それって本当に悪いことだろうか? 自己保身のために、時には厳しい選択をしなければならないこともある」レンはそう自問自答し、ルナの前で自身の考えを素直に話す。
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