無能の瞳 その者は世界の共犯者〜魔力なしで無能と蔑まれ、他力本願の力に依存する。【憑依召喚】で体を乗っ取られて、もうすぐ俺が最強だ〜

一章

第1話：選ばれざる者の瞬間（1/4）

　炎天下の昼下がり、大学一年生の桧蓮司は息を切らせながら大学の古びた講堂へ急いでいた。彼が必死に取りに戻っていたのは、ただの忘れ物ではなく、亡き祖母が遺した謎に満ちた古文書だった。その文書には、失われた古代魔法の秘密が記されており、その解読が彼の夢であった。額に滲む汗を拭いながら、彼の端正な顔立ちが一瞬で周囲を明るく照らした。

　しかし、講堂の扉を開けた瞬間、現実が歪むかのような異常な光に彼の世界が包まれた。彼が驚愕の声を上げる間もなく、運命は大きく動き出していた。

「うわっ！」

　その瞬間、未知の力に包まれた蓮司の前に黄金色の人影が現れた。その人影は神秘的な美しさを湛え、運命を告げる者として威厳を持って立っていた。

「魔法世界ダングレイブへようこそ。君は選ばれたのだが、残念ながら君には魔力が感じられない。すなわち『選ばれざる者』……無能だ」

　蓮司の心はこの冷たい宣告によって揺さぶられ、異世界への恐怖と驚愕が新たに湧き上がった。自分がなぜここにいるのか、そしてなぜ魔力を持たないのか、心は混乱と疑問に包まれた。

「待ってくれ！ いったい何が……」

　しかし、その声も虚空に消え、「世界の力で、これから転移する世界の言葉だけはわかるようにした。後は好きに生きるといい」と告げると、黄金色の人影は何の説明もなく消え去った。蓮司は自分が新たな現実、異世界の荘厳な風景へと足を踏み入れていることを認識した。広大な青空と遠くの地平線、そして古代の神々が遺したかのような壮大な遺跡が目の前に広がっていた。

「これは一体……？」

　新しい世界の美しさに圧倒されつつも、蓮司は自らの未来に対する不安と疑問を抱え、立ち尽くした。この異世界での生活が始まるのだが、彼は「何だこれは？」とつぶやきながら、自らの置かれた状況を理解しようと奮闘した。その声は新たな現実の空気に溶け込んでいった。

　周囲を見渡すと、目に飛び込んでくるのは古代の神秘に包まれた遺跡の光景だった。その美しさと壮大さに心が奪われたが、それと同時に、蓮司の心は不安と興奮の混ざった感情で揺れ動いていた。手のひらは汗ばみ、心臓は激しく鼓動していた。
　空に浮かぶ島々の壮観さは彼がこれまでに経験したことのない神秘的な輝きを放つ超自然的な現象だった。島々は静かに空を漂い、雲と一体となって動いているように見えた。

　異世界の地に足を踏み入れた蓮司は、自らがどうしてここにいるのか、その理由を探し求める。声の主が彼をこの場所へと導いたことは明白だが、なぜ自分なのか、その答えは得られない。