銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

177 突然の求愛

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 さすが、魔法使い。前フリもなにもなく、いきなりケーキ入刀で、本当に人前でキスさせられた。鬼畜だ。でもさ、オレはまだ、マシだったんだよな。ユエなんて確実に舌を突っ込まれてた。副会長が背中でユエを隠してたけど、オレとルイは隣に居たんだよ。もう、バッチリ視界に収めちゃったしさ。ルイも公衆の面前ではさすがにしないと苦笑いを浮かべてた。まあ、そのあとのユエがかなり不機嫌だったけど。
 
 ひな壇に座らされてさ。目立つことは目立つんだけど、在校生や卒業生はそれどころじゃねぇみてぇ。眺めてるこっちは、ある意味楽しいんだけどさ。
 
「食べながら、特A生徒に突進してる普通クラスのやつらって凄いのな」
 
 オレはポツリと呟く。ルイが言っていたように、恥ずかしかったのは最初だけで、そのあとは放置だ。楽でいいけどさ。まあ、最初はかなり恥ずかしかったし、注目されるしで、テンパってたけど。
 
「まあ、魔力を考えると、釣り合うのはAクラスの生徒くらいだよ」
「でもさ、あれ、Bクラスのやつらだろ?」
「Bクラスの場合、循環相手ってより、卒業後のつながり重視だよね」
「は?」
「特Aの生徒は家柄も良いんだよ。そうなると、家業を持っていたり、魔法使いの中でも重要な役職についていたり。顔見知りになって、繋がりを得られると、後々、有利になるんだよ」
 
 なるほどな。だから、必死なのか。通常は近付くのが御法度なわけだし、ここぞとばかりにアピールしてるのか。
 
「綺麗に飾り立てられたな」
 
 オレ達の目の前に来たのは委員長。ユエの幼馴染みだ。久しぶりっていうか、二年振りだよな。
 
「セイト(聖都)はあっちでお近付きにならないのか?」
 
 ユエが驚いたように問い掛けてる。そうだよな。こっち側ってあんまり利益ねぇだろう?
 
「ひな壇に近付けるのは特定の生徒だけだろう? 一応、クリアしてるしさ」
「そうだけどさ。チャンスだろう?」
「身の程をわきまえてるからさ。それに、ここにこれるってだけで優越感が味わえるだろう?」
 
 特定の生徒って?
 
「なあ、ここって、他の生徒が近付けないのか?」
「当たり前でしょう。一応、どっちも特Aで循環相手で、夫婦なんだから」
「そう言う理由かよ?」
「そうだよ。彼はユエの……」
「幼馴染みです」
 
 委員長は背筋を伸ばして、はっきりと答えた。
 
「親しい友人はクラスに関係なく近付けるんだよ」
 
 いろいろ、制約があるんだな。
 
「セイトは本来なら特Aでも問題ないだろう?」
「確かに、どっちが良いか訊かれてクラスを決めたけど」
 
 はあ?!
 
「そんなのありなのかよ?!」
「微妙なラインなんだ。だから、委員長をやらされてただろう」
「そう言えばさ。親はなにも言わなかったの?」
「言わなかったな。まあ、循環相手を見付けてこいは言われたかな」
 
 ユエの表情が固まった。それを覗き込む副会長。
 
「ユエ?」
「あのさ。見付けなくて正解だよ……。もう、大変だしさ」
「どういう意味で?」
 
 委員長、もとい! セイトがユエの言葉に首を捻る。
 
「いろんな意味でだ。最大がこのイベントだろう?!」
 
 ダン! と、ユエは机に手を叩きつけた。相当、御立腹。
 
「俺達はタダで良いもの食べれて、面白いものが見れて、満足だけど」
「それは我が身になってないから言えるんだよ!」
「前はなかった、巨大ケーキとキスは本当に見応えありだった」
 
 両手を叩いて思い出しながら言ったセイト。項垂れるユエ。これ、完全に遊ばれてるだろう?
 
「やっと、脱け出れた!」
 
 そう言いながら避難してきたのは風紀委員長。若干、ヨレてるな。揉みくちゃだったからな。先客がいることに気が付いた風紀委員長がセイトを見て首を傾げ、軽く目を見開いた。なんだ?
 
「求愛させてもらう」
 
 ガシッとセイトの両肩を掴み、なんの予告もなく言い放った。待て、ここ、目立つ場所なんだけど……。セイトの体と表情が固まった。
 
 
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