銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

066 嘘も方便

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 注文していたお菓子と、お祝いと言って渡されたお菓子をトランクに詰めた。そのとき、中を見たんだけどさ、見た目と中身の広さがあってねぇ。
 
 店の敷地から出る。シロガネさんとクチバさんに見送られて、ルイはオレの手を取ると当たり前のように指を鳴らして杖を出した。
 
「実家を思い浮かべてくれる?」
「そんなんで行けるのかよ?」
「もちろんだよ。なんのための循環の魔法なの。ある程度なら読み取ることも可能なんだよ」
 
 いまいち、ルイの言ってることが分かんねぇんだけど。
 
「また、近いうちに食事に来ます」
「ルイ君とサクヤ君ならいつでも歓迎するわ」
「気を付けてな」
 
 ルイは笑みを浮かべて小さく頷いた。オレはとりあえず、小さく頭を下げた。当然、ベニはキュウ! と鳴き、クレナイも鳴いて挨拶をする。火の鳥って、ある意味、その辺の人間より頭がいいんじゃねぇの?
 
 ルイが何事かを呟き、杖を振った。毎度のことながら、何言ってんのか分かんねぇんだけど?! 体が無重力の中に放り投げられたような感覚。これ、何度味わっても慣れねぇって。そして、思いっきり目を瞑っていたオレは、感覚が元に戻ったことを感じて、恐る恐る目を開けた。見慣れた家が目の前にあって、正直に驚く。
 
「ここで間違いない?」
 
 ルイの問い掛けに、頷くことしかできねぇよ。
 
「じゃあ、ご挨拶しないと」
 
 ルイは嬉々としてそう言うと、玄関の扉をノックする。待て、オレは心の準備をしてねぇよ。だってさ、両親と別れてから三ヶ月くらいしか経ってねぇんだよ!
 
 軽い足音が耳に届いて、かちゃりと鍵が開く音がした。自分の家なのに、変に緊張する。それに、ルイが手を離してくれねぇんだよ!
 
「ルイ! 手!」
「どうして? このままの方が理解は早いでしょう?」
 
 ショック療法かよ。オレの母親は微力の魔力がある程度の、普通の一般人だぞ。たとえ、先祖に魔法使いがいたとしてもな。
 
「どちら様……」
 
 聞きなれた声が耳に届いて、開かれた扉から顔を出したのは母さん。でも、思いっきり目を見開いてる。
 
「サクヤ?! サクヤなの?!」
「……た、ただいま」
「お帰りなさいって、どうやって来たの?!」
「魔法でちょいちょいと」
 
 オレじゃなく、答えたのはルイ。母さんはそこで初めて、ルイの存在に気が付いたみてぇだ。これだけ見目麗しいのに、オレに反応してくれたのは素直に嬉しい。でもさ、ルイの説明が大変なんだって。
 
「……ルイさん?」
「そうです。お初にお目にかかります」
 
 母さんが目を白黒させてる。その気持ち、手に取るように分かる。あまりに見目が麗しすぎて、どう反応していいか分かんねぇんだろう?
 
「立ち話もなんだから、入ってね」
 
 母さんが慌ててオレとルイを家に招き入れた。そして、扉を閉ざすとすぐに鍵を掛ける。
 
 居間に通されて、長椅子に腰掛ける。母さんの趣味で、部屋にはハーブやらドライフラワーが沢山だ。カントリー調で統一された室内。長椅子には見慣れたパッチワークで作られたカバーが掛かってる。
 
「魔法でちょいちょいって、どういう意味かしら?」
 
 ハーブティーをルイとオレに出ししてくれて、母さんが訊いた一言。まあ、先祖に魔法使いがいるだけで、母さんや父さんが魔法について知ってるのかって言われたら、全く分かんねぇんだ。
 
「呪文を唱えて杖を振ったら家の前です」
 
 ルイの説明があまりにも適当。まあ、詳しく言ったところで、分かりゃあしねぇんだけどさ。
 
「それと、サクヤの頭の上の鳥はなんなのかしら? そんなに離れていなかったのに、あまりにも唐突すぎて」
 
 戸惑うのは分かる。でもさ、ルイから何かしらの連絡があったんだよな? 学校で使う物とか、ルイ側で用意するって話。まさか! ルイに視線を向けると、悪戯を成功させた子供の顔で俺を見てた! もう、グッタリだ。
 
 
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