銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
上 下
59 / 272
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

059 魔力の光

しおりを挟む
 他の奴等が授業のために教室を後にして、残ったのはオレとルイ。なぜか教師。
 
「この火の鳥の雛は普通の火の鳥と違うんじゃないか?」
 
 教師が疑問を口にした。オレもそう思う。
 
「キュウキュウ!」
「普通だって言ってもよ。クレナイと確実に違うだろう。見た目が全く成長しねぇしさ」
 
 水晶を両手に乗せたまま、そんなことを言えば、ベニは面白くなかったのか、オレの指を嘴攻撃してきた。地味に痛い。
 
「まあ、そこのところはいいでしょう。とりあえず、この水晶に魔力を込めてみようか?」
 
 ルイってある意味、マイペースなんだよな。
 
「魔力を込めるって?」
「水晶に意識を向けて、自分の中の魔力を移す感じかな?」
「あのさ。魔力って体のどこにあるんだよ?」
 
 魔力がどこにあるのかが分かんねぇんだから、認識しようがねぇだろう。
 
「もしかして、根本的なの?」
 
 素直に頷いた。今までの生活で、魔力なんて必要なかったしさ。とりあえず、変な力があるって感覚だ。必要ないってことは、知る努力なんてしたことねぇし。
 
「体の中心。心臓なら分かるよね?」
「それくらいは」
「心臓は体を動かす動力源だよ。脳を使うにしても、心臓が酸素を送り出してくれないときちんと機能しない。体中に血液と共に酸素を供給し、魔力を持つ魔法使いは魔力も心臓の機能を利用してるんだよ。全身に魔力を送るのは心臓が担ってるんだ」
「じゃあさ。オレは魔力を常時放出してんだろう? どういうことだよ?」
 
 ルイは笑みを浮かべたけど、教師は呆れ顔だ。仕方ねぇだろう! 人体くらいなら、普通の学校でも教わる。でもさ、普通の学校では、魔力を持ってる奴なんてほぼいねぇんだ! 稀に、微弱な魔力を持ってるのはいるけど、あくまで、微弱だから、なんの害もねぇんだよ!
 
「人は息をする。普通なら、魔力を外に出すようなことはしないんだけど、サクヤの場合、呼吸という動作と、心臓が体中に血液を媒介に酸素を送り出す動きに、なぜか魔力が同調して、呼吸するたびに魔力が吐き出されてるんだよ」
 
 は?! そんなんありか?!
 
「暴走する最大の理由が、使おうとしている魔力と、自然と吐き出される魔力がぶつかるから。吐き出されるのは体の機能だからね。対策を考えたほうがいいかもしれないけど、意識して使う魔力は制御する必要があるから。まあ、吐き出した魔力はベニの餌って認識を持ったらいいんじゃない。気分的に楽になるでしょう」
 
 確かに楽にはなるけどさ。ベニ、オレの魔力で見た目変わんないって。目に見えた成長がないからさ。いまいち分かんねぇんだよ。
 
「とりあえず、自分の中心あたり、心臓の付近にある魔力の塊から、手のひらに乗せている水晶に魔力を移動させるイメージを作って」
 
 心臓の隣あたりにこの、暴走してる魔力の大元があるんだよな? 分かんねぇから、脈打ってる心臓に意識を向けて、血液じゃない別のものを思い浮かべて。そうしたら、スッと、なにかが入り込んできたような感覚があった。水晶に視線を向けたら、綺麗な光が水晶の中で燈る。淡い桜色の光だ。
 
「お? 初めて見る光の色だな」
 
 教師が目を見開いてっし。
 
「ベニ、食べてくれる」
「キュウ!」
 
 ベニが水晶を突くと、スッと光が消えた。ルイが水晶を持ち上げて、オレと同じように魔力を込める。淡くともる光はオレと同じ桜色。って、どういうことだよ?! 魔力は真逆だろう?!
 
「……同じか」
「そうですね。性質は真逆なんですけど」
「それに、こいつは魔力を制御することができなかったんじゃなくて、根本的なことを知らなかっただけなんだな」
「そうみたいですね」
 
 認識したら、なんか、スッと魔力が分かるようになった。基礎知識って大切なんだな。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...