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従姉妹のせいで身代わりを頼まれたのですが、修道女になる為にその依頼お引き受けします!
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リリアは一つの鞄を両手で抱え、薄暗い中屋敷の窓を見上げていた。屋敷の窓に灯る灯りに笑みを浮かべ、一つ小さく頭を下げた。彼女がこの屋敷に来たのは、屋敷の所有者であるベルハト侯爵家の令息である、ブライアンの婚約者が駆け落ちをしてしまい対外的に面子が保たれないからだった。リリアはブライアンの婚約者であるジュリアとよく似ていたからだ。それもその筈、リリアとジュリアは母が双子の姉妹。誕生日もそれほど離れていない。違いがあるとするなら、ジュリアは伯爵家。リリアは子爵家。家格がジュリアの方が上であったのだ。リリアに求められたのはジュリアの影武者だった。幸い、リリアの方がジュリアより頭は良かった。ジュリアの癖もよく分かっていた。逆にジュリアはリリアの事など歯牙にもかけていなかった。ブライアンは婚約破棄をするにしても、駆け落ちされたと言う醜聞を避けたかったのだろう。ベルハト侯爵家に来て数ヶ月。ジュリアが駆け落ち相手に飽きて戻ってきたのだ。ジュリアにはリリアが身代わりとなっている事実は知らされないだろう。リリアは一つ息を吐き出すと、静かにその場を立ち去った。まさか、屋敷の中で修羅場が繰り広げられているなど全く知らなかったのである。
「どの面を下げてここに来たんだ?」
ブライアンの冷たい一言にジュリアは不満を顔に刻んだ。ジュリアは整った見た目と華やかな雰囲気で人気がある令嬢で、何よりとてつもなく我が儘だった。
「彼があんなに甲斐性無しだとは思わなかったのよ。爵位を失っても苦労はさせないと言ったのに、見てちょうだい! 私の美しい髪が肌が荒れてしまったのよ!」
「貴族でなくなったなら、そうなって当たり前だろう。メイド達に容姿を整えられていた者が一人で何が出来る?」
「だから戻ってきたのよ! 婚約もそのままだったし、私を待っていてくれたのでしょう?」
ジュリアはブライアンが待ってくれていたと疑っていなかった。ブライアンにしてみればそれは間違った認識だ。婚約をそのままにしていたのは、ジュリアの性格を熟知していたからだ。絶対に耐えられずに戻ってくる。その時に引導を渡すつもりであった。その為、互いの両親には納得してもらっていた。ジュリアの両親は渋っていたが、娘がしでかした事だ。否とは言えなかった。
「そんな訳があるか。君は堪え性がない。我が儘で何でも我を通そうとする。分かっていたからな。直接言い渡すためにそのままにしていただけだ」
「どう言う事?」
「君のようなふしだらな令嬢とは婚姻するつもりはない。侯爵家としても、君を受け入れる事は出来ないと判断している」
ジュリアは目を見開いた。言葉を理解出来なかったのだ。
「君の不貞の数々は把握している。駆け落ちした男以外にもかなりの男達と遊んでいたようだな。貴族令嬢は婚姻前の純潔は必須だ。理由は血筋が挙げられる。君のような女性では我が侯爵家とは違う者を身籠る事も考えられる」
「……っ」
「何代か前に他人の子を侯爵家の子だと偽った女性がいた。幸いその子は全く侯爵家の特徴を受け継いでいなかったので大事にはならなかったが」
ベルハト侯爵家はそれを教訓に、複数の男性と付き合う女性とは婚約していても解消ないし白紙、破棄してきた。ジュリアは完全にベルハト侯爵家を敵に回したのだ。彼女の父親はすぐに気が付いた。ここで逆らえば、社交の場でどんな目に合うか分かったものではない。娘は可愛いが、奔放に育ててしまった自覚はあった。何より、兄妹を犠牲には出来なかった。ジュリアの両親はその為、娘を放逐する事に決めたのだ。婚約はそのままであるとは言っているが、ジュリアが市井に降った事で婚約は無効となっている。
「君は今や伯爵令嬢ではない。君の父君は駆け落ちしたすぐ後に、君を貴族籍から外している」
「え?!」
「君は市井の者だ。本来ならこの場にいる事は許されない。誰か!」
ブライアンの叫びに数人の騎士が現れた。ベルハト侯爵家が抱える騎士団の騎士達である。
「お帰りいただけ。必要な事は言った。もう貴族ではない。もしまた来るようなら、警邏隊に引き渡して構わない」
ブライアンの冷たい物言いに、ジュリアは慌てた。何より、告げられた事実を理解出来なかった。ベルハト侯爵家に来る前に実家に寄って来ている。婚約がまだ有効かどうかそれを確認する為に。その時、対応に出てきたのは初老の執事だった。淡々と告げられた言葉に、何も理解していなかった。何故、両親が出てこなかったのか。気が急いていて、そこまで考え及ばなかった。
「待って! 私は綺麗でしょう?! 磨けばまだまだいけるわ!」
ブライアンは冷めた視線をジュリアに向ける。
「汚れた身で貴族と婚約婚姻が出来ると思っているのか? 我が家だけではない。誰も君を受け入れる者はいないだろう。何人の男達とそのような行為に及んだ? 全て調べはついているんだ」
ジュリアは血の気が引いた。うまく隠しているつもりであったのだ。屋敷を追い出されて、ジュリアは考えに考えた。そして、すぐによからぬ事を思い付く。
「リリアと入れ替わればいいんだわ! 爵位は下がるけど、市井にあるより断然マシよ! それにあの子より、私の方が貴族令嬢として魅力的だもの!」
だが、そんなに上手くはいかない。何故なら、ジュリアを知る全ての者が彼女を理解していた。ジュリアの行動は監視されていたのだ。その結果、ジュリアは呆気なく捕まってしまうのである。何も悪い事はしていないと思っているようだが、それは違う。複数の令息を拐かし多くの婚約破棄をさせていた。そのせいで伯爵家が大変な目にあっている事を理解していなかった。しかも、自分はベルハト侯爵令息と婚約している事実を伏せ弄んでいた。駆け落ちにしても、ほとぼりが冷めれば何食わぬ顔で戻るつもりだったのだ。つまり、ジュリアは知らぬうちに指名手配されていた。王都を素顔のまま歩くのは自殺行為なのだ。では、リリアも間違われて捕まるのでは、と思われるがそうはならない。リリアはジュリアと顔の造作は瓜二つであったが、その雰囲気が全く違う。その為、似ていると認識されにくい。今回、ベルハト侯爵家からの要請でリリアはジュリアに成り切っていたが、そうでもしなければ全く別人なのだ。
ジュリアが捕まり、裁判に掛けられたと知ったのは、刑が執行されてからだった。当然、リリアは驚きに息を呑んだ。リリアは知らなかったのだ。ジュリアが何をしていたのか。どうして、駆け落ちで即、貴族籍から抜かれたのか。まさか、貴族令嬢でありながら、複数の異性とそのような行為に及び、多くの不幸を呼び寄せていたのだ。
「勝手にいなくなってこちらは心配したのだが?」
「申し訳ありません。ジュリアの姿を見たので、鉢合わせは不味いと思いまして」
次の日、リリアはブライアンに呼び出された。とは言っても、今ではリリアの棲家と言っても過言ではない図書室である。そして、ブライアンがリリアと顔を合わせた一言目の言葉にそう言い訳をした。ブライアンは小さく息を吐き出すと、その後の顛末の説明を受けることとなったのだ。
「知りませんでした」
ブライアンから受けた説明にリリアは呆然となった。リリアは基本的に噂に耳を傾けない。貴族としてはどうかと思うが、リリアは人の噂で判断したくなかったのだ。
「婚約当初から、かなり素行が悪かった。伯爵家を援助する代償だったようだが、そのせいでこちらまであらぬ噂を立てられては堪らない」
ブライアンは不機嫌も顕に吐き捨てる。
「では、何故、私を身代わりとなさったのですか? それならば援助を打ち切り、婚約を破棄されれば問題がなかったと思うのですが?」
ブライアンは黒縁の伊達メガネを掛けているリリアを見据える。
「そう簡単にはいかない。伯爵領は侯爵領の隣。領地をうまく回さなければ皺寄せをこちらが被る可能性があった」
「それならば、他の娘を婚約者にしたら良かったと思うのですが」
「本気で言っているのか? あそこの娘は後一人、それもまだ五歳だ!」
リリアもあっ、となった。確かにジュリアの下の妹はまだ五歳だ。確かに無理な話である。しかも、ブライアンは一人息子だ。
「伯父様も領地経営がお上手という訳ではありませんから」
リリアは小さく溜め息を吐く。幸いなのが、伯爵の長男は大変賢かった。誰に似たのかは分からないが、学園を好成績で卒業している。
「そこでだ。伯爵には責任を取ってもらい、爵位を長男に継承させることで同意させた。あそこの息子なら何とかしてくれるだろう。援助は継続させてもらうが、期限は切らせてもらった。勿論、婚姻で援助金をチャラには出来ないからな。きっちり、貸した分は返してもらうことで話はついてる」
「ジュリアも何が不満だったのかしら。確かに先の災害で裕福ではなくなってしまったけど、食べるのも住む場所にも困る生活ではなかったのに」
リリアの言葉にブライアンは目を見開く。普通の令嬢なら、災害で領地が被害に遭っても、全く生活を変えようとしない者が多い。しかし、リリアの言い方は、災害があったのなら、それなりの生活をすべきだと言っているのだ。
「驚いた。君はそう考えるのか?」
ブライアンの物言いに、リリアは首を傾げる。
「当たり前のことではありませんか。私達貴族は領民達に生かされています。領民が苦しんでいるのに、その管理をしている貴族が豪遊するなど論外ではありませんか」
言っている事は正しいが、言うは容易い。それを実行出来るかは、その人物の為人に掛かっている。
「ここだけのお話ですが、本来、伯爵家に嫁ぐのは私の母であったようです。ですが、叔母様はそれを不服に思っていたようです」
「何故だ?」
「叔母様と母は双子の姉妹です。派手好きの叔母様と物静かな母。婚約は母が伯爵様と、叔母様が子爵、つまり、私の父としていたのです。それを、叔母様が言い方が悪いのですが、寝取ったらしく……」
爵位が姉より低い事が我慢出来なかったジュリアの母親は、淑女にあるまじき行動に出たのだ。当時、かなりの醜聞として、貴族社会に広まったと言われている。その為、今でもジュリアの母親は陰で悪く言われているらしい。リリアの母親は貴族の結婚は繋がりであり契約であると理解していた。その為、リリアの父親と話し合い、代わっても良いのなら子爵令息と婚姻します、そう言ったらしい。
「それはまた壮絶な」
「知りませんでしたか? 今回の騒動でかなり有名であると執事から聞きました。それまで私も詳しくは知らなかったのです」
リリアの母親は本物の淑女だった。その為、騒ぎ立てたりはせず、リリアの父親と領民と共に大きくはない領地を富ませる努力を怠らなかった。その為、前回の災害でそれ程の打撃は受けなかったのだ。何があるか分からない。蓄えや備えは必要であると常々言っている。
「今回の事で私も身の振り方を考えなくてはいけなくなりました。お仕事としてでも、同じ屋根の下で血族とは違う男性と生活を共にしたのです。両親にも伝えましたが、学園を卒業後、修道院に入るつもりです。ブライアン様とお話しできるのも、学園にいる間だけですわ」
ブライアンは目を見開く。そんな話は寝耳に水だ。
「待ってくれっ。そんな話は聞いていないぞっ」
「まあ、どうなさいましたの。勿論、話しておりませんでしたもの。いくら仕事です。契約で身代わりをしていました、そう言ったところで年頃の男女です。勘繰る方々はいらっしゃいます。ブライアン様の未来の奥方様が健やかに過ごされますよう、私は考えたのです。ジュリアの不始末とはいえ、事実は事実ですわ。それに、我が家は子沢山なのです。二人の兄に一人の弟。それに、妹が二人もおります。私が一人、修道院に入ったところで問題はありませんわ」
リリアは何でもないと言うように、微笑んでみせた。
「それに私、恋愛については本当に分からないのです。貴族ですから、義務としての婚姻なら理解出来ても、他の方々のように、異性に対してそのような感情が湧かないと申しますか。ほら、同じ人ではありませんか。私は人という括りで見てしまうのです」
リリアの告白にブライアンは呆然とした。稀にそのような人物がいるのは知っているが、まさか身近にいようとは。
「ですので、お気になさらず」
「いや、そういう訳には……」
「いえいえ、実は修道院にはずっと行くつもりだったのです。家族に反対されてまして、望みが叶いそうですわ。私では結婚相手に不快な思いをさせてしまいますわ。異性としての愛情を求められても、私には分からないからです。家族愛や友愛ならば分かるのですが」
学園に通う令息令嬢方は日々、そんな話に明け暮れている。リリアはそんな話を聞きたくないばかりに図書室にいるのだ。今では、修道院に入ってから必要と思われる知識を溜め込んでいる。今読んでいるのも農耕に関するものだ。
「リリア嬢」
ブライアンは改まったようにリリアの名前を呼んだ。リリアは首を傾げる。
「近々、両親と其方に伺います」
「え?」
「用事を思い出したのでこれで」
ブライアンはそう言い置くと、図書室を出て行った。ブライアンが不快に思うような会話をしただろうか、とリリアは思案する。確かに、一族のよくない部分を話はしたが、それは修道院に入る為に必要な話だったのだ。ブライアンには言わなかったが、ジュリアの母親は伯爵に離縁を言い渡された。ジュリアと色々やらかしていたらしい。幸い、他の兄妹は関わっておらず伯爵は胸を撫で下ろしたと聞いている。ジュリアは刑を執行され(絞首刑だったらしい)、母親は実家からも見捨てられた。確かにジュリアの母親は好き勝手していたのは有名である。本当の両親ですら庇う事は難しかったのだろう。そうなれば切り捨てるより他ないのだ。一人、市井で生きていくのはかなり厳しいだろうが身から出た錆である。リリアは静かに溜め息を吐いた。
それから一週間程経ったよく晴れた日だった。リリアの両親が驚き慌て、挙動不審で部屋に飛び込んで来た。流石のリリアも驚きである。
「リっ、リリアっ!!!」
「た、大変よ!!」
父親と母親の取り乱し方は異常である。何が大変なのか全く伝わらないのだ。
「落ち着いて下さい。何があったのです?」
「これが落ち着けるか!!!」
父親の絶叫は本当に稀である。リリアは何かよからぬ事でもしでかしたのかと、本気で考えた。
「ベルハト侯爵が我が家に来ると!!!」
「ああ、ブライアン様がそんな事を言ってました」
「どうして、早くに伝えないんだ!!」
「冗談であると思っていたので」
ベルハト侯爵家との繋がりは、ジュリアの不祥事の後始末だ。話を聞かされた時、本当に肝が冷えたのだ。ジュリアの破天荒ぶりは知っていたし、瓜二つの容姿をしていたリリアは少なからず被害を被っていた。その為、ベルハト侯爵家に同情したのだ。
「お前に婚約の申し込みが来たのだぞ!」
「どんな話をしたの?!」
両親にそう問われ、あの日の話をリリアはした。リリアとしては修道院に元々入りたかったので、感謝していますって意味だったのだ。しかし、ブライアンはそうは取らなかったようだ。それに、今回の身代わりの報酬は破格だった。前回の災害でそれ程の打撃は受けなかったが、それでも多少なり大変な事にはなったのだ。それを補填出来るだけの金額だったのである。
「普通の神経なら、婚約の打診をしてくると思わなかったのか」
父親の呆れた声にリリアは思わなかったとキッパリ言い切った。両親は脱力している。
「ブライアン様にはお話ししましたわ。恋愛感情が分からないので、私と婚姻される方は不幸であると」
確かに恋愛を重視する人物なら身を引くだろう。しかし、貴族らしい貴族ならリリアのような女性は好ましいのだ。
「私の娘らしいと言えばそうなのかしら」
リリアの母親は頭が痛いと顳顬に右手の人差し指を走らせた。リリアにしてみれば、どちらにも理があったのだ。どちらがより不幸になったと言うわけではない。
「私から説明します。あの話を受けたのだって、元々、修道院に入る前提だったのよ」
「そんな事を考えて受けていたのか」
リリアの父親も頭が痛いのか右手で頭を押さえている。リリアが修道院に行きたがっているのは知っていた。
ベルハト侯爵夫妻とブライアンにリリアはきちんと説明したのだが、現実はそうではなかった。ブライアンは王太子の側近として城に出仕する事が決まっている。領地経営は侯爵夫妻が担う予定だが、侯爵領は広大であり、花嫁には当然覚えてもらいたい。そんな話を永遠とされ、完全に丸め込まれていると、リリアの両親は遠い目になった。どう見ても逃す気はないと、ひしひしと感じるのだ。しかし、リリアは気が付いていない。周りから囲い込んでいる。もしここで断ろうものなら、王太子が出て来るのではないか。リリアの両親はそう危惧した。結局のところ、リリアはまんまと言いくるめられ婚約者となってしまった。しかも、学園卒業と同時に婚姻する事まで決められてしまった。
「どうしてこうなったの?」
リリアは首を傾げる。それを聞いているのはブライアンである。リリアに会いに行くと言い置いたあの日、ブライアンは両親に会いに行ったのだ。そして、リリアの素行調査をしたのである。当然、リリアからホコリ一つ出ては来なかった。それどころか学園の成績は五番以内に入る優秀さだ。難があるとするなら見目に対して頓着しない点だが、それは侯爵夫人が一から手解きする気である。ジュリアと瓜二つであったので、磨けば磨くだけ光ると侯爵夫人は嬉々としている。
「修道院に行くと聞いたら、諦める必要はないだろう?」
「へ?」
「ふふ……」
ブライアンの笑みにリリアは固まった。諦めるとは、とその意味をリリアは考える事を拒絶した。ジュリアの不始末で関わりを持っただけなのだ。いや、そう信じたかった。
リリアは学園でも目立たない令嬢だった。ブライアンと婚約する事で、その目立たなかったリリアが表舞台に引き摺り出されたのだ。当然、ジュリアとの婚約が無効になったブライアンは令嬢達の注目の的だった。つまり、優良な婚姻先としてである。それであるにも関わらず、今まで目立つこともなかったリリアが選ばれたのだ。有る事無い事難癖つけてくる令嬢は多くいた。しかし、そんな令嬢に対して良い感情をブライアンが持つ筈はない。秘密裏に対応され、そして、学園から去る令嬢が続出したのだ。それに呆れたのは王太子である。
「そこまでする程の令嬢なのかい?」
「殿下、言っておきますが、もしちょっかいを掛けるようなら考えがありますが?」
「いや、私は仮にも王太子で、君の主人だよ?」
「関係ありませんね」
そんな会話を生徒会室で日々繰り広げているのを、他の役員は遠い目をして聞いていた。
リリアはと言えば、いつもと変わらずマイペースで図書室に篭っていたりする。何せ外野が煩過ぎて好きな事もままならないのだ。そんな不満を抱きつつ卒業を迎えたリリアとブライアンだが、卒業式の次の日に婚姻式を行ったのである。これは完全にブライアンと言うよりも、侯爵家の陰謀であると言わざる得ない。優良な嫁を横から攫われないように囲い込み、捕獲したのだ。リリアの両親はただ、時の流れに身を任せるだけであった。結局のところ、リリアは幸せな人生を歩む事になったのだが、夫となったブライアンに振り回される事になるのはまた別の話である。
終わり。
「どの面を下げてここに来たんだ?」
ブライアンの冷たい一言にジュリアは不満を顔に刻んだ。ジュリアは整った見た目と華やかな雰囲気で人気がある令嬢で、何よりとてつもなく我が儘だった。
「彼があんなに甲斐性無しだとは思わなかったのよ。爵位を失っても苦労はさせないと言ったのに、見てちょうだい! 私の美しい髪が肌が荒れてしまったのよ!」
「貴族でなくなったなら、そうなって当たり前だろう。メイド達に容姿を整えられていた者が一人で何が出来る?」
「だから戻ってきたのよ! 婚約もそのままだったし、私を待っていてくれたのでしょう?」
ジュリアはブライアンが待ってくれていたと疑っていなかった。ブライアンにしてみればそれは間違った認識だ。婚約をそのままにしていたのは、ジュリアの性格を熟知していたからだ。絶対に耐えられずに戻ってくる。その時に引導を渡すつもりであった。その為、互いの両親には納得してもらっていた。ジュリアの両親は渋っていたが、娘がしでかした事だ。否とは言えなかった。
「そんな訳があるか。君は堪え性がない。我が儘で何でも我を通そうとする。分かっていたからな。直接言い渡すためにそのままにしていただけだ」
「どう言う事?」
「君のようなふしだらな令嬢とは婚姻するつもりはない。侯爵家としても、君を受け入れる事は出来ないと判断している」
ジュリアは目を見開いた。言葉を理解出来なかったのだ。
「君の不貞の数々は把握している。駆け落ちした男以外にもかなりの男達と遊んでいたようだな。貴族令嬢は婚姻前の純潔は必須だ。理由は血筋が挙げられる。君のような女性では我が侯爵家とは違う者を身籠る事も考えられる」
「……っ」
「何代か前に他人の子を侯爵家の子だと偽った女性がいた。幸いその子は全く侯爵家の特徴を受け継いでいなかったので大事にはならなかったが」
ベルハト侯爵家はそれを教訓に、複数の男性と付き合う女性とは婚約していても解消ないし白紙、破棄してきた。ジュリアは完全にベルハト侯爵家を敵に回したのだ。彼女の父親はすぐに気が付いた。ここで逆らえば、社交の場でどんな目に合うか分かったものではない。娘は可愛いが、奔放に育ててしまった自覚はあった。何より、兄妹を犠牲には出来なかった。ジュリアの両親はその為、娘を放逐する事に決めたのだ。婚約はそのままであるとは言っているが、ジュリアが市井に降った事で婚約は無効となっている。
「君は今や伯爵令嬢ではない。君の父君は駆け落ちしたすぐ後に、君を貴族籍から外している」
「え?!」
「君は市井の者だ。本来ならこの場にいる事は許されない。誰か!」
ブライアンの叫びに数人の騎士が現れた。ベルハト侯爵家が抱える騎士団の騎士達である。
「お帰りいただけ。必要な事は言った。もう貴族ではない。もしまた来るようなら、警邏隊に引き渡して構わない」
ブライアンの冷たい物言いに、ジュリアは慌てた。何より、告げられた事実を理解出来なかった。ベルハト侯爵家に来る前に実家に寄って来ている。婚約がまだ有効かどうかそれを確認する為に。その時、対応に出てきたのは初老の執事だった。淡々と告げられた言葉に、何も理解していなかった。何故、両親が出てこなかったのか。気が急いていて、そこまで考え及ばなかった。
「待って! 私は綺麗でしょう?! 磨けばまだまだいけるわ!」
ブライアンは冷めた視線をジュリアに向ける。
「汚れた身で貴族と婚約婚姻が出来ると思っているのか? 我が家だけではない。誰も君を受け入れる者はいないだろう。何人の男達とそのような行為に及んだ? 全て調べはついているんだ」
ジュリアは血の気が引いた。うまく隠しているつもりであったのだ。屋敷を追い出されて、ジュリアは考えに考えた。そして、すぐによからぬ事を思い付く。
「リリアと入れ替わればいいんだわ! 爵位は下がるけど、市井にあるより断然マシよ! それにあの子より、私の方が貴族令嬢として魅力的だもの!」
だが、そんなに上手くはいかない。何故なら、ジュリアを知る全ての者が彼女を理解していた。ジュリアの行動は監視されていたのだ。その結果、ジュリアは呆気なく捕まってしまうのである。何も悪い事はしていないと思っているようだが、それは違う。複数の令息を拐かし多くの婚約破棄をさせていた。そのせいで伯爵家が大変な目にあっている事を理解していなかった。しかも、自分はベルハト侯爵令息と婚約している事実を伏せ弄んでいた。駆け落ちにしても、ほとぼりが冷めれば何食わぬ顔で戻るつもりだったのだ。つまり、ジュリアは知らぬうちに指名手配されていた。王都を素顔のまま歩くのは自殺行為なのだ。では、リリアも間違われて捕まるのでは、と思われるがそうはならない。リリアはジュリアと顔の造作は瓜二つであったが、その雰囲気が全く違う。その為、似ていると認識されにくい。今回、ベルハト侯爵家からの要請でリリアはジュリアに成り切っていたが、そうでもしなければ全く別人なのだ。
ジュリアが捕まり、裁判に掛けられたと知ったのは、刑が執行されてからだった。当然、リリアは驚きに息を呑んだ。リリアは知らなかったのだ。ジュリアが何をしていたのか。どうして、駆け落ちで即、貴族籍から抜かれたのか。まさか、貴族令嬢でありながら、複数の異性とそのような行為に及び、多くの不幸を呼び寄せていたのだ。
「勝手にいなくなってこちらは心配したのだが?」
「申し訳ありません。ジュリアの姿を見たので、鉢合わせは不味いと思いまして」
次の日、リリアはブライアンに呼び出された。とは言っても、今ではリリアの棲家と言っても過言ではない図書室である。そして、ブライアンがリリアと顔を合わせた一言目の言葉にそう言い訳をした。ブライアンは小さく息を吐き出すと、その後の顛末の説明を受けることとなったのだ。
「知りませんでした」
ブライアンから受けた説明にリリアは呆然となった。リリアは基本的に噂に耳を傾けない。貴族としてはどうかと思うが、リリアは人の噂で判断したくなかったのだ。
「婚約当初から、かなり素行が悪かった。伯爵家を援助する代償だったようだが、そのせいでこちらまであらぬ噂を立てられては堪らない」
ブライアンは不機嫌も顕に吐き捨てる。
「では、何故、私を身代わりとなさったのですか? それならば援助を打ち切り、婚約を破棄されれば問題がなかったと思うのですが?」
ブライアンは黒縁の伊達メガネを掛けているリリアを見据える。
「そう簡単にはいかない。伯爵領は侯爵領の隣。領地をうまく回さなければ皺寄せをこちらが被る可能性があった」
「それならば、他の娘を婚約者にしたら良かったと思うのですが」
「本気で言っているのか? あそこの娘は後一人、それもまだ五歳だ!」
リリアもあっ、となった。確かにジュリアの下の妹はまだ五歳だ。確かに無理な話である。しかも、ブライアンは一人息子だ。
「伯父様も領地経営がお上手という訳ではありませんから」
リリアは小さく溜め息を吐く。幸いなのが、伯爵の長男は大変賢かった。誰に似たのかは分からないが、学園を好成績で卒業している。
「そこでだ。伯爵には責任を取ってもらい、爵位を長男に継承させることで同意させた。あそこの息子なら何とかしてくれるだろう。援助は継続させてもらうが、期限は切らせてもらった。勿論、婚姻で援助金をチャラには出来ないからな。きっちり、貸した分は返してもらうことで話はついてる」
「ジュリアも何が不満だったのかしら。確かに先の災害で裕福ではなくなってしまったけど、食べるのも住む場所にも困る生活ではなかったのに」
リリアの言葉にブライアンは目を見開く。普通の令嬢なら、災害で領地が被害に遭っても、全く生活を変えようとしない者が多い。しかし、リリアの言い方は、災害があったのなら、それなりの生活をすべきだと言っているのだ。
「驚いた。君はそう考えるのか?」
ブライアンの物言いに、リリアは首を傾げる。
「当たり前のことではありませんか。私達貴族は領民達に生かされています。領民が苦しんでいるのに、その管理をしている貴族が豪遊するなど論外ではありませんか」
言っている事は正しいが、言うは容易い。それを実行出来るかは、その人物の為人に掛かっている。
「ここだけのお話ですが、本来、伯爵家に嫁ぐのは私の母であったようです。ですが、叔母様はそれを不服に思っていたようです」
「何故だ?」
「叔母様と母は双子の姉妹です。派手好きの叔母様と物静かな母。婚約は母が伯爵様と、叔母様が子爵、つまり、私の父としていたのです。それを、叔母様が言い方が悪いのですが、寝取ったらしく……」
爵位が姉より低い事が我慢出来なかったジュリアの母親は、淑女にあるまじき行動に出たのだ。当時、かなりの醜聞として、貴族社会に広まったと言われている。その為、今でもジュリアの母親は陰で悪く言われているらしい。リリアの母親は貴族の結婚は繋がりであり契約であると理解していた。その為、リリアの父親と話し合い、代わっても良いのなら子爵令息と婚姻します、そう言ったらしい。
「それはまた壮絶な」
「知りませんでしたか? 今回の騒動でかなり有名であると執事から聞きました。それまで私も詳しくは知らなかったのです」
リリアの母親は本物の淑女だった。その為、騒ぎ立てたりはせず、リリアの父親と領民と共に大きくはない領地を富ませる努力を怠らなかった。その為、前回の災害でそれ程の打撃は受けなかったのだ。何があるか分からない。蓄えや備えは必要であると常々言っている。
「今回の事で私も身の振り方を考えなくてはいけなくなりました。お仕事としてでも、同じ屋根の下で血族とは違う男性と生活を共にしたのです。両親にも伝えましたが、学園を卒業後、修道院に入るつもりです。ブライアン様とお話しできるのも、学園にいる間だけですわ」
ブライアンは目を見開く。そんな話は寝耳に水だ。
「待ってくれっ。そんな話は聞いていないぞっ」
「まあ、どうなさいましたの。勿論、話しておりませんでしたもの。いくら仕事です。契約で身代わりをしていました、そう言ったところで年頃の男女です。勘繰る方々はいらっしゃいます。ブライアン様の未来の奥方様が健やかに過ごされますよう、私は考えたのです。ジュリアの不始末とはいえ、事実は事実ですわ。それに、我が家は子沢山なのです。二人の兄に一人の弟。それに、妹が二人もおります。私が一人、修道院に入ったところで問題はありませんわ」
リリアは何でもないと言うように、微笑んでみせた。
「それに私、恋愛については本当に分からないのです。貴族ですから、義務としての婚姻なら理解出来ても、他の方々のように、異性に対してそのような感情が湧かないと申しますか。ほら、同じ人ではありませんか。私は人という括りで見てしまうのです」
リリアの告白にブライアンは呆然とした。稀にそのような人物がいるのは知っているが、まさか身近にいようとは。
「ですので、お気になさらず」
「いや、そういう訳には……」
「いえいえ、実は修道院にはずっと行くつもりだったのです。家族に反対されてまして、望みが叶いそうですわ。私では結婚相手に不快な思いをさせてしまいますわ。異性としての愛情を求められても、私には分からないからです。家族愛や友愛ならば分かるのですが」
学園に通う令息令嬢方は日々、そんな話に明け暮れている。リリアはそんな話を聞きたくないばかりに図書室にいるのだ。今では、修道院に入ってから必要と思われる知識を溜め込んでいる。今読んでいるのも農耕に関するものだ。
「リリア嬢」
ブライアンは改まったようにリリアの名前を呼んだ。リリアは首を傾げる。
「近々、両親と其方に伺います」
「え?」
「用事を思い出したのでこれで」
ブライアンはそう言い置くと、図書室を出て行った。ブライアンが不快に思うような会話をしただろうか、とリリアは思案する。確かに、一族のよくない部分を話はしたが、それは修道院に入る為に必要な話だったのだ。ブライアンには言わなかったが、ジュリアの母親は伯爵に離縁を言い渡された。ジュリアと色々やらかしていたらしい。幸い、他の兄妹は関わっておらず伯爵は胸を撫で下ろしたと聞いている。ジュリアは刑を執行され(絞首刑だったらしい)、母親は実家からも見捨てられた。確かにジュリアの母親は好き勝手していたのは有名である。本当の両親ですら庇う事は難しかったのだろう。そうなれば切り捨てるより他ないのだ。一人、市井で生きていくのはかなり厳しいだろうが身から出た錆である。リリアは静かに溜め息を吐いた。
それから一週間程経ったよく晴れた日だった。リリアの両親が驚き慌て、挙動不審で部屋に飛び込んで来た。流石のリリアも驚きである。
「リっ、リリアっ!!!」
「た、大変よ!!」
父親と母親の取り乱し方は異常である。何が大変なのか全く伝わらないのだ。
「落ち着いて下さい。何があったのです?」
「これが落ち着けるか!!!」
父親の絶叫は本当に稀である。リリアは何かよからぬ事でもしでかしたのかと、本気で考えた。
「ベルハト侯爵が我が家に来ると!!!」
「ああ、ブライアン様がそんな事を言ってました」
「どうして、早くに伝えないんだ!!」
「冗談であると思っていたので」
ベルハト侯爵家との繋がりは、ジュリアの不祥事の後始末だ。話を聞かされた時、本当に肝が冷えたのだ。ジュリアの破天荒ぶりは知っていたし、瓜二つの容姿をしていたリリアは少なからず被害を被っていた。その為、ベルハト侯爵家に同情したのだ。
「お前に婚約の申し込みが来たのだぞ!」
「どんな話をしたの?!」
両親にそう問われ、あの日の話をリリアはした。リリアとしては修道院に元々入りたかったので、感謝していますって意味だったのだ。しかし、ブライアンはそうは取らなかったようだ。それに、今回の身代わりの報酬は破格だった。前回の災害でそれ程の打撃は受けなかったが、それでも多少なり大変な事にはなったのだ。それを補填出来るだけの金額だったのである。
「普通の神経なら、婚約の打診をしてくると思わなかったのか」
父親の呆れた声にリリアは思わなかったとキッパリ言い切った。両親は脱力している。
「ブライアン様にはお話ししましたわ。恋愛感情が分からないので、私と婚姻される方は不幸であると」
確かに恋愛を重視する人物なら身を引くだろう。しかし、貴族らしい貴族ならリリアのような女性は好ましいのだ。
「私の娘らしいと言えばそうなのかしら」
リリアの母親は頭が痛いと顳顬に右手の人差し指を走らせた。リリアにしてみれば、どちらにも理があったのだ。どちらがより不幸になったと言うわけではない。
「私から説明します。あの話を受けたのだって、元々、修道院に入る前提だったのよ」
「そんな事を考えて受けていたのか」
リリアの父親も頭が痛いのか右手で頭を押さえている。リリアが修道院に行きたがっているのは知っていた。
ベルハト侯爵夫妻とブライアンにリリアはきちんと説明したのだが、現実はそうではなかった。ブライアンは王太子の側近として城に出仕する事が決まっている。領地経営は侯爵夫妻が担う予定だが、侯爵領は広大であり、花嫁には当然覚えてもらいたい。そんな話を永遠とされ、完全に丸め込まれていると、リリアの両親は遠い目になった。どう見ても逃す気はないと、ひしひしと感じるのだ。しかし、リリアは気が付いていない。周りから囲い込んでいる。もしここで断ろうものなら、王太子が出て来るのではないか。リリアの両親はそう危惧した。結局のところ、リリアはまんまと言いくるめられ婚約者となってしまった。しかも、学園卒業と同時に婚姻する事まで決められてしまった。
「どうしてこうなったの?」
リリアは首を傾げる。それを聞いているのはブライアンである。リリアに会いに行くと言い置いたあの日、ブライアンは両親に会いに行ったのだ。そして、リリアの素行調査をしたのである。当然、リリアからホコリ一つ出ては来なかった。それどころか学園の成績は五番以内に入る優秀さだ。難があるとするなら見目に対して頓着しない点だが、それは侯爵夫人が一から手解きする気である。ジュリアと瓜二つであったので、磨けば磨くだけ光ると侯爵夫人は嬉々としている。
「修道院に行くと聞いたら、諦める必要はないだろう?」
「へ?」
「ふふ……」
ブライアンの笑みにリリアは固まった。諦めるとは、とその意味をリリアは考える事を拒絶した。ジュリアの不始末で関わりを持っただけなのだ。いや、そう信じたかった。
リリアは学園でも目立たない令嬢だった。ブライアンと婚約する事で、その目立たなかったリリアが表舞台に引き摺り出されたのだ。当然、ジュリアとの婚約が無効になったブライアンは令嬢達の注目の的だった。つまり、優良な婚姻先としてである。それであるにも関わらず、今まで目立つこともなかったリリアが選ばれたのだ。有る事無い事難癖つけてくる令嬢は多くいた。しかし、そんな令嬢に対して良い感情をブライアンが持つ筈はない。秘密裏に対応され、そして、学園から去る令嬢が続出したのだ。それに呆れたのは王太子である。
「そこまでする程の令嬢なのかい?」
「殿下、言っておきますが、もしちょっかいを掛けるようなら考えがありますが?」
「いや、私は仮にも王太子で、君の主人だよ?」
「関係ありませんね」
そんな会話を生徒会室で日々繰り広げているのを、他の役員は遠い目をして聞いていた。
リリアはと言えば、いつもと変わらずマイペースで図書室に篭っていたりする。何せ外野が煩過ぎて好きな事もままならないのだ。そんな不満を抱きつつ卒業を迎えたリリアとブライアンだが、卒業式の次の日に婚姻式を行ったのである。これは完全にブライアンと言うよりも、侯爵家の陰謀であると言わざる得ない。優良な嫁を横から攫われないように囲い込み、捕獲したのだ。リリアの両親はただ、時の流れに身を任せるだけであった。結局のところ、リリアは幸せな人生を歩む事になったのだが、夫となったブライアンに振り回される事になるのはまた別の話である。
終わり。
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