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シオンの誕生日。ありさの葛藤

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シオンの熱が下がって数日。
シオンはこの前の埋め合わせでこうきと遊びに出かけていた。

ゲーセンで一通り遊んだ後、お腹が減った2人はファミレスに向かって歩いていた。
「お前のねえちゃん、めっちゃ優しそうで美人で可愛いよな」
ファミレスまでの道のりでこうきはシオンに笑顔でありさのことを話はじめた。
シオンはため息を付いてこうきを見ながら
「優しそうじゃなくて優しいの。お前には釣り合わないからやめとけ。」
シオンはこうきにそう言った後、さっさと先へ歩いていった。
こうきはシオンの発言に首をかしげながら、後を追ったのでした。


その頃ありさはというと・・・。

「ねえ、お母さん!これこの後どうすればいいの?」
「ん?この後は焼くだけよ」
「じゃあ、オーブンに入れちゃうね」
ありさは母親と何かを作っている様子。
「完成が楽しみだなあ」
ありさはつぶやきながら、せっせとある準備をしていた。

そう。今日はシオンの誕生日。
シオンが出かけると知って、母親と計画を立ててシオンが帰ってきたときにびっくりさせようと、準備をしているのだ。
「あとはリビングの飾付けをして・・・ごちそうも準備しなきゃ」
ありさは独り言を言いながら慌ただしく準備するのでした。


ファミレスにて・・・。
シオンとこうきはお互いに食べたいものを注文してドリンクバーで飲み物を取りに向かった。
こうきはオレンジジュース、シオンはメロンソーダをコップに注いで席に戻ると、こうきが話はじめた。
「シオンよ、俺思ったんだけどぶっちゃけていいか?」
こうきは真剣な顔でまっすぐシオンを見ている。
シオンは、「おう・・・なんだよ」と言いながら、心のなかで「俺がありさのこと好きなのバレたか?いやでも、バレる要素無かったよな?なんだ???」と少し焦りながらこうきからの言葉を待っていた。
「シオンよ、お前・・・今日誕生日じゃないか?」
こうきからの言葉を聞いてシオンはポカーンと口を開けて固まっている。
そんなシオンの姿を見たこうきは、呆れた顔をしながら
「まさか・・・自分の誕生日忘れてた?」
と聞いてみた。
シオンは我に返って「忘れてたわ・・・」とつぶやいた。
そしてこうきはひらめいたように
「よし!ここのお代は俺が払う!とりあえずお祝いさせてくれ。」
シオンは慌てて断ったがこうきが諦めずにおごるの一点張り。
最終的にはシオンが折れて、こうきに払ってもらうことにした。

そして注文した料理が届いてこうきはチキン南蛮、シオンはオムライスを食べながら他愛のない会話をしてファミレスを後にした。


ありさは危機的状況になっていた。
「お母さんどうしよう。もうすぐシオンが帰ってくるのに料理が間に合わないよ~」
ありさは泣きそうになりながら母親に助けを求めていた。
「あと何品作るの?」
母親はありさに質問すると、ありさはオロオロしながら
「あと3品なんだけど、頭と体がついて行かないよ~」
と、嘆いていた。
果たしてありさはシオンが帰ってくるまでに料理を完成させることができるのでしょうか?


シオンはファミレスから出た後、こうきの提案でボウリングを楽しんで解散することになった。
「じゃあ、またな~。またお前の姉ちゃんに会わせてくれよな」
こうきは笑顔でシオンに言うとシオンは笑顔で
「お前何するかわからんから絶対に会わせない」
と言って「またな~」といえに向かって歩き出したのでした。

シオンが家に着いて「ただいま~」と玄関にはいると、とても静かだった。
みんな出かけてるのかな?とリビングを開けるとクラッカーの音と共に
「お誕生日おめでと~!」
とありさと両親の声が聞こえた。
シオンはびっくりして目を大きく開けて驚いているとありさが
「シオン、今日はシオンの誕生日でしょ?お母さんたちと張り切っちゃった!」
と笑顔でシオンに向かって話しかけた。
シオンは我にかえって、「今日は驚かされることが多いな」なんて思いながらありさと両親に向かって
「ありがとう。こんなサプライズが待ってるなんて思わなかったからびっくりしたよ。」
と照れたようにお礼を言った。
そんなシオンの姿を見てありさは
「やった!サプライズ大成功!頑張ったかいがあったよ!」
と笑顔で喜んで、シオンに「ご飯食べよ!」とテーブルに並んだ手作り料理を見ながら話しかけて椅子に座った。

そしてみんなで料理を食べながら楽しくシオンの誕生日をお祝いしたのでした。
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