3 / 24
シノ1
シノ1-1
しおりを挟むどんなに格好良いオトコも、ともすればノンケさえも、オレが服をベッドから落とす頃には視線に熱がこもっている。
その瞬間が、好き。それって、もうオレの見た目にすっかり恋をしているってコトだから。
バーのママはオレのこういうトコをシュミが悪いって言うけどさあ、例えワンナイトでもちゃんと恋してもらったほうがいいに決まってるじゃん。オレだって、オレを好きなオトコに抱かれたい。まあ、しつこくされてもイヤだから、どんなに熱い夜を過ごしたってその晩限りなんだけど。
そんなオレにも、プライドも何もかも投げ捨てて、どうしても抱かれてみたい人がいた。
たまにバーにくる、神崎さん。誰だってひと目見れば、神崎さんがセンスの良いイケメンだって思うだろう。まあちょっと目つきは怖いかもしんないけどさ。噂で聞いたけど、女も男もイケるバリタチのバイセクシュアルで、めちゃくちゃセックスが上手いらしい。そんなの聞いたら誰だって興味を持つでしょ。初めは……このバーでもオレみたいに結構色んな人を引っ掛けて抱いてるっていうから、そうなると当然オレにも声がかかると思って、しばらく待ってみてたんだけど……
神崎さんがいつも頼むウイスキーも、吸っているタバコも、好んで身に着けているブランドも、見て取れる情報を全て覚えてしまう頃になっても、オレに声はかからなかった。だから、そこでプライドを捨てるコトにした。最近はすっかり自分から誘うコトをしてこなかったから、演技だけじゃない本気の照れもちょっとはあったけど……オレならそういうトコも可愛く見えるはず。
昔から可愛いね、と言われて育ってきた。マルデオンナノコミタイネ、と周りの大人は口を揃える。でもさ、その辺の女のコよりもオレのほうがずっと可愛いと思うんだよね。
今日もセンス抜群の服に身を包んだ神崎さんは、何故か隣にヘンな男を連れていた。こういう場所が初めてなのか……自信なさげにオドオドしている所為で、それなりに整った顔立ちと体格の良さが掻き消され、物凄くダサく見えてしまう。……いや待てよ、着てる服が普通にダサいな、コイツ。
って言うか神崎さんの隣りにいるくせに、グラスが空でも注いだりしないじゃん!
全然気もきかないらしい。なんなんだアイツ。
「なに他のお客さんジロジロ見てんのよ」
「ママ……神崎さんの隣にいるの、誰?」
さっきまで神崎さんの方にいたママがオレの前にやってきてたしなめてくる。ソレを無視しつつ、ギリギリ聞こえる程度の小さな声で尋ねた。釣られてママの返事も小声になる。ざわついている店内のカウンターの端と端だから、神崎さんには聞こえていないだろう。
「……エ? アンタ、千葉くん見るの初めてだっけ?」
「千葉ぁ……?」
「神ちゃんのお気に入りだから、ちょっかい出しちゃダメよ」
「はぁ!? ウソでしょ。あんなのが?」
思わず声のボリュームが上がってしまう。ママは露骨に顔を顰めて、オレに冷たい視線を寄越した。なんだよ。可愛いオレが常連なおかげで売り上げ伸びてんだから、丁重に扱ってよ!
「そういうコト、神ちゃんに聞かれたら……どうなっても知らないからね」
「えぇ~……マジなの? よりによって、なんでアレぇ……?」
どう考えてもオレの方が可愛いし、気もきくし、連れ歩いて画になるのに。意味分かんない。それに、アレたぶんノンケでしょ? 全く神崎さんも、あんなのの何処がいいんだか……
でもこれはチャンスだ。オレがココで神崎さんを誘えば、絶対オレに鞍替えするはず。あの千葉とかいう男と比べたら、誰だってそうなる。
「あの」
「……なに?」
「はじめまして……神崎さん、ですよね」
「そうだけど」
ちら、と上目遣いで見上げてみると、神崎さんの目が品定めするかのようにスッと細められた。うん、それでいい。存分に品定めしてほしい。
「わ、カワイ~……」
神崎さんの後ろから、間の抜けた声が聞こえてくる。チッ。ホントなんなんだコイツ。
「千葉、ちょっと黙ってろ」
「あ、ウッス……」
そうそう、お前は黙ってろ。神崎さんはカウンターに頬杖をついてオレに笑い掛けた。はぁ~……めちゃめちゃカッコいい。
「ごめんな。それで、俺に何か用?」
「良かったら今晩、そ、その……オレと、遊んでくれませんか」
こういうときはストレートに。で、不慣れを装って、ちょっと照れた様子で俯く。オレのこれで落ちない男はいないでしょ。例え神崎さんだって……その千葉とかいう男を捨てて、今夜はこのオレを選ぶ。
「遊ぶのは構わないんだけど……見学いてもいい?」
「え……け、見学?」
「百戦錬磨のシノちゃんなら、子犬一匹程度に見られても平気だろ?」
なんだ、オレのことバレてんのか。ちょっと待って、じゃあ店では今までわざとオレを無視してたの!?
悔し~……神崎さんじゃなかったら、許してない。
……でも、見学だかなんだか知らないけど、やる気はあるみたいで良かった。
「見学って、その人?」
「え…………えっ!? オレっすか!?」
「そう、このバカチワワ」
「…………」
ジーッと千葉を見つめてみると、しばらく視線が絡んで、それから恥ずかしそうにふいっと逸らされた。どこがチワワなのか。こんなの連れてっても、他人のセックスなんてまともに見学できないんじゃないの。
「……別にいいよ」
でもさっきも言ったように、これはチャンスなワケ。神崎さんと千葉がどういう関係なのかいよいよ分かんないトコだけど、ま、未だに首傾げてるようなワンちゃんには、オレと神崎さんのシてる場面を見られたって……確かにどうってコトはないかな。
「いいんだ。結構大人しいじゃん」
「一応言っとくけど、オレはその人とはシないからね」
「それは心配する必要ないな。コイツ、男は抱けないから」
じゃあますますなんで連れて行くの?
「あ、撮影とかもヤだよ」
「大丈夫、マジでコイツがシノに何かすることはないよ」
優しく微笑むその顔がカッコよくて、オレは黙ってコクリと頷いた。そこへ間の抜けた声が割り込んで、雰囲気を叩き壊す。
「ええっその子、お、男なんスか!?」
「ちーば。マジで静かにしてろ。殴るぞ」
「くぅん……」
何処がチワワなのって思ってたけど、なるほどね。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる