天羽桜は世界を救う

第34話 追い詰められる桜

「このぐらいで！ 負けるもんか！」

攻撃を防ぐ中で怪人の左手首を切ろうとするも、その攻撃は見切られて剣の柄で顔を殴られてしまう。

「ぐぅ！ そんな攻撃ぐらいで！」

唇が切れて血を流すも、それぐらいでは戦意を喪失せずに攻め続けていた。 桜のその様子は絶えず放送されており、ＣＭすら挟まずにいた。

桜の殴られている様子や、腹部を蹴られている様子をテレビで見ていた楓は、その場で気絶してしまい、正人がソファーに座らせた。 また、奏は家族や日本のために怪人と戦う桜の姿を見て、涙を流していた。

「お姉ちゃん！ 頑張って！」

奏は聞こえていないと分かっていても、大声で応援をしていた。 既に時刻は六時を回り、太陽が現れて電車で通勤をし始める人がいるのだが、日本全国の鉄道会社は終日運休を決めており、国から本日は全国で企業は休日とするようにと連絡をしていた。

桜の知らない様々なところで動きがあるようで、リーベも桜と御堂以外の職員が関係各所に連絡を取っていた。 

桜と怪人の攻防は終わる気配がなく、桜が押され始めていた。 怪人は左手を上にあげると、その掌に収まるほどの赤黒い炎を出現させた。

般若の仮面が桜には少し笑っているように感じ、その掌の赤黒い炎が危険なことが察することが出来た時には、怪人は赤黒い炎を桜めがけて飛ばそうとしていた。

「避けれない！」

突然の攻撃に、桜は避けれずに受け止めることにした。 桜花で赤黒い炎を受け止めると、炎は消えることなく桜花を押しのけようとぶつかり続ける。

「桜花で受け止めたら消えると思ったのに！ 何で消えないの！」

歯を食いしばって炎と相対していると、桜は桜花を傾けて地面に炎をぶつけた。 すると、地面にぶつかった赤黒い炎はぶつかった瞬間に大爆発を起こした。

桜は予想外の大爆発に巻き込まれてしまい、そのまま駅の方に吹き飛んでしまう。 大爆発があった地面は酷く抉れており、その爆発は隣の駅からでも見えるほどに大きかった。

桜は吹き飛ばされた場所で倒れたまま起き上がれなかった。 桜の右足からは血が流れており、爆発の時の地面の欠片で怪我をしたようである。

痛みに耐えて尚も立ち上がろうとしている桜を、駅の改札内や駅ビルの中に避難をしている人達が頑張れと応援していた。 

「足から血が出てるくらいで……私はまだ戦える！」

桜花を地面に刺して立ち上がると、桜花を構え直す。 それを見た怪人は一直線に桜に向かって走り出し、切り殺そうと先ほどと同じ赤黒い炎を出して迫ってくる。

「そのぐらいで！ 私は勝つんだ！」

桜花を構えて怪人の攻撃を防いで鍔ぜり合うと、怪人が桜花を上に弾いてそのまま桜の身体を切りつけるが、危険を感じて一歩後ろに桜は下がったために身体を左斜めに浅く切られた程度で済んだ。

「危なかった……もう少しで死んでたかもしれない……」

桜は切られたところを軽く触れて、そこから少し流れ出ている血を見ると、死が隣に迫っている事実に冷や汗が流れ出ていた。

「怖い……私一人じゃ倒せないかもしれない……だけど、私の後ろには守るべき人達がいるんだ！ 逃げるわけにはいかない！」

恐怖を押しのけて怪人に突撃をする桜。 その様子を見ていた駅内にいた人達は、大声を出して桜を応援し始めた。

「負けるな！ そのまま攻め続けろ！」

「負けないで！ 無理しないで頑張って！」

様々な声援が桜の耳に届いていた。 まさか自身が応援されるなんて思わなかったので、少し嬉しかった。