上 下
37 / 120

第37話 怪物急襲

しおりを挟む
「だ、大丈夫!? 今助けてあげるから!」

そう言って女子の肩を持って出雲の場所まで連れて行く。出雲は周囲の無事だった受験者達と協力をして怪我の手当てを続けていた。回復魔法を扱える人も他に数名いたので、出雲が中心となって指示を出して治療をしていた。

「そっちにいる重症の人は任せた! 俺は回復魔法それ程使えないから軽症の人を回してくれ!」

出雲が重症者と軽症者を分けて回復魔法扱いなれている人と、出雲みたいなそれほど扱えないが扱った経験がある人とで治療する人を分けることで、治療の速度を上げていた。

「こっちは俺がする! そっちの重症者はあっちに連れていって!」

出雲が指示を続けていると、椿が女子を連れて出雲のところに辿り着いた。

「ねぇ! この女の子助けてあげて! お腹に刺さってる!」

椿が治療をしている途中に声をかけて助けてと言うと、出雲は待っててと椿に言う。

「いつまで待つの! 死んじゃうよ!」

椿が出雲の両肩を掴んで揺らすと、分かったと言って治療を変わってと背後で治療を終えたばかりの女子に治療を変わってと言って変わってもらう。

「俺はまだ回復魔法全然だけど、必ず救うから!」

そう言って出雲は女子の腹部に刺さったのを勢いよく引き抜いた。すると、出雲の顔にその女子の血が勢いよくかかった。

「くそ! 血が出過ぎてる!」

出雲は椿に女子の身体を抑えててと言って、腹部に手を当てて回復魔法を始めた。一刻も早く治療をしないと死ぬ危険があったので、出雲は痛みが出るが魔力を強く籠めて一気に治療を進めた。

「がぁ!? 痛い痛い!」

痛みに暴れる女子だが、椿が抑えていたので動きは最小限であった。

「我慢してくれ! 俺だって勢いよくはしたくないんだ!」

出雲は魔力を込め続けると女子は助けてとだけ言うと意識を失った。出雲は椿に頭に気を付けてと言うと、一気に魔力を込めて気絶している今のうちだと思い、傷口を一気に塞ぐことが出来た。

「で、できた……疲れた……」

出雲がそう呟いて地面に座り込むと、周囲の治療に当たっていた人も終わったようで怪我人はいなくなった。

「他の人も治療が終わったみたいだね! 出雲大活躍!」

椿が右手でサムズアップを出雲にすると、ありがとうと出雲は返答した。周囲にいる人達も出雲にありがとうと言ったり、治療をしてくれた人達に感謝の言葉を述べていた。

「あのワニはもういないか。 何だったんだ……」

出雲が湖を見ると、先ほどのワニはもうどこにも姿が見えなかった。一体何だったんだと出雲は頭を抱えていると、逃げていた男子の一人が湖に石を投げ入れていた。

「このくそが! 急に出てきやがって! ワニのくせに調子に乗るな!」

そう何度も言いながら石を湖に投げ入れ続けていた。その男子を何人かの仲間と思われる男子達が止めると、湖から雄叫びが聞こえてきた。

「こ、この雄叫びは! 皆逃げるんだ! あのワニが来るぞ!」

出雲がそう叫ぶも、腰を抜かす人やその場で蹲って怖いよと言い続けている人ばかりであった。

「くそ! 俺が相手をするから椿は皆の誘導をして!」

出雲にそう言われた椿は、死なないでよと出雲に言うと死なないよと出雲は返事をした。

「こっちだワニ! 俺が相手だ!」

出雲は光弾を三発ワニの頭部に命中をさせて自身を標的にさせた。出雲の光弾ではそれほどダメージを与えられていないが、周囲にいる受験者達も魔法を放ってワニを倒そうとしている。

「ワニの攻撃に気を付けてくれ!」

出雲が周囲の攻撃に参加してくれている受験者達に言うと、分かってると返答が来た。火や風、土に水と様々な属性の魔法を放ちながらワニを倒すために受験者達が協力をする。

「お前の相手はこっちだろ! こっちを向け!」

出雲は魔力量に気を付けて光弾を放つと、一発の光弾がワニの左眼に命中した。ワニは雄叫びをあげながらのた打ち回ると、出雲に標的を絞って攻撃をしていく。

ワニは両腕での引っ掻きや殴り、そして尻尾の叩きつけなどをするも、出雲は新たに覚えていたライトシールドの光属性の下位の防御魔法で危なかったが防ぐことが出来た。

「危ない! そんな攻撃が効くものか!」

出雲は攻撃を防ぎながら誰もいない湖の場所に移動すると、そこでライトシールドと光弾を駆使してワニの攻撃を一身に受けていた。

「攻撃が重い! シールドがもう持たない!」

ライトシールドに魔力を追加で込めて亀裂を直すも、ワニの連続攻撃でライトシールドが壊れて後方に吹き飛んでしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

処理中です...