上 下
10 / 120

第10話 恐怖の夕食

しおりを挟む
雫は美桜を守ると言った出雲が、本当に守るために訓練を始めたことに感謝して特別に料理を振舞おうとした。そして、出雲が訓練を始めてから食材を買い出しに行ったりしていた。

出雲が何が好きだか分からなかったので、とりあえず定番のカレーを作ることにした。雫は料理は得意な方ではないが、カレーなら厨房にいる使用人に聞いて作れるだろうと考えた。

「よし! 終わりました! では、サラダも盛り付けたので食べてください!」

雫は胸を張って自信満々な表情で出雲にサラダとカレーを渡した。そのサラダはポテトサラダであり、一から作ったのだそうである。カレーは中辛で出雲は大丈夫だろうと決めていた。

「美味しそう! いただきます!」

そう言うと出雲はスプーンでカレーを一口食べようとすると、そのルーの色を見た使用人の女性が、口を大きく開けて駄目ですと大声で叫んだ。

その声の方向を向いて出雲は出されたカレーを一口食べると、すぐに顔を真っ赤にして口から火を噴きそうな程に吠えた。

「辛い! 辛い! 辛い! 辛すぎる!」

出雲はそう言いながら後方に倒れこんでしまった。床に倒れた出雲は唇を真っ赤に腫らしてピクピクと小刻みに身体が動いていた。

「キャアアアアアアア! 出雲が倒れて痙攣してる! 何があったの!?」

美桜が出雲に駆け寄って出雲の身体を揺らす。 出雲は美桜の声に反応はせず、痙攣を続けていた。

「そう言えば何か言ってたね? 駄目だって。 あれはもしかして……」

美桜が叫んだ使用人の女性に話しかけると、使用人の女性があれは雫様の特性激辛カレーですと言った。雫はたまに天然な形でうっかりをしてしまうので、美桜はそこが可愛いと思いつつも被害を受けないようにしていた。今回は出雲がそのうっかり雫の被害を受けて倒れてしまったのだ。

こちらが本来の出雲様が食べられるはずだったカレーですとグリーンカレーをお皿に盛り付けて持ってきていた。一方で出雲の目の前に置かれていたカレーはとてつもなく真っ赤に染まっていた。

出雲はカレーというものをほぼ食べたことがなかったので、こういうものなのだろうと思い食べてしまった。出雲は一口で全身から汗が吹き出し、身体が震え、一気に天地がひっくり返ってしまった。

「うぅ……なんかいきなり世界がひっくり返ったような……」

出雲は美桜からもらった水をコップ一杯全部飲み干して起き上がった。

「大丈夫? いきなり倒れたから心配したよ!」

美桜が出雲に抱き着くと、雫がごめんなさいと頭を下げて謝った。出雲は何で謝ってるんだろうと思うと、使用人の女性が出雲様が食されたのは雫様の激辛カレーですと教えてくれた。

「そ、そうだったんですね……雫さんは激辛好きなんですね……」

出雲はそう言いながらまだ辛さが口の中と喉に残っているので、美桜から水を大量にもらって飲み始める。雫は尚も頭を下げて謝っていると、その綺麗な艶のある髪が出雲の顔に触れた。出雲は良い匂いがすると思い、その頬に触れた髪から優しい感じがした。

「そんなに謝らなくて大丈夫ですよ。 雫さんの意外な一面が見れてよかったです」

出雲のその言葉を聞いて、雫は頬を膨らませて元気になってよかったですと言って自分の席に座った。

「さて、晩御飯を再開しましょう。 使用人の人たちも一緒に食べましょう!」

美桜がそう言うと、皆晩御飯を持ってきて席に座った。出雲はちゃんと自分用に作ってくれたカレーを一口食べると、凄い美味しいと言った。それを聞いた雫は笑顔になってありがとうございますと言う。

「それに、こんなに大勢でご飯を食べるのって久しぶりでこんなに美味しいんだね」

出雲がそう言いながら食べ続けると、使用人を含めた全員が泣きそうな顔をし始めた。

「な、なんで泣きそうになってるんですか! 今は美桜と出会えてここにいさせてもらって幸せですよ!」

出雲がそう言うと、美桜と雫が幸せでよかったと泣いていた。出雲は泣かないでと言って机の上にあったティッシュボックスを二人に渡した。

「ありがとう出雲。 優しいね」

美桜がそう言い、雫もありがとうと言った。出雲は食べようと言って場を和ませる。そして、全員が談笑をしながら夕食を食べていると、出雲に美桜が質問をした。

「出雲は魔法を自在に扱えるようになったらどうしたい?」

突然の質問に出雲は戸惑うも、出雲は笑顔で口を開く。

「決まってるよ。 俺と同じ境遇の人を救ったり、困っている人を救う!」

その言葉を聞いて、美桜はほっとしたような顔をして優しいよやっぱりと言う。

「そして、美桜を守り続けるよ」

出雲のその言葉を聞いてありがとうと顔を伏せて言う。その美桜の頬は何やらほんのり紅く染まっているようだが、出雲からは見えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...