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第1章
第5話 訓練
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「訓練をしてください! お願いします!」
「その言葉を待っていた。訓練をやるぞ」
腰に差していた木刀を引き抜いた源十郎はその場で構えた。その姿を見た出雲は異様な威圧感を感じて、鳥肌が立ってしまう。
「な、何だこの威圧感……今まで感じたことがない……」
体を振るわせて目の前にいる源十郎を見ていると、時宗が本気だぞと声を上げていた。
「気を付けろ! そこの爺さんは本気で斬りかかって来るぞ!」
「え!?」
驚いた声を上げた瞬間、目の前に源十郎の姿があった。
いつの間に移動をしたのか分からないが、瞬きの間の一瞬で移動をしたのだろうと推測ができる。
「一瞬で!? どうやって!?」
「その答えを導いてみろ!」
突きや振り下ろしなどの多彩な攻撃を辛うじて防いでいると、一瞬で源十郎の姿が目の前から消えた。
足音もなく風切り音もない。周囲を見渡すために視線を左右に向けると、背後から威圧感を感じることに気が付く。
「まさか後ろ!?」
振り向きながら言葉を発すると、左頬に掌底を受けてしまう。
声にならない声を発しながら床に倒れると、続けざまに木刀が顔面に振り下ろされるのが見えた。
「くそ!」
木刀で防ごうとした瞬間、身体強化をしていないことに気が付く。
意識をしていたのに情けないと思いつつ、身体強化をしないと殺されると直感で感じていた。
「これじゃダメだ! 身体強化をして防がないと!」
したつもりが出来ていなかった身体強化を腕にかけ、振り下ろされる源十郎の木刀を防ぐことができた。
その重い一撃を受け、身体強化をしていなければどうなっていたのか考えるだけでも恐ろしい。もしかしたら骨折をしたかもしれないし、入院をしたかもしれない。
「身体強化をしていないことに気が付いたか。遅いくらいだが、よしとしよう」
「すみません! だけど、腕にかけて防げました!」
「当然だ。だが、部分的な強化ではなく、全身にかけて戦わないとダメだ。試験までにそれぐらいは常時出来るようにならなければ落ちるぞ」
常時と聞いて発動し続けられるか不安である。
戦いながら意識をしているのは不可能であり、常に発動しているのが当たり前というくらいにならなければならない。それを自身で出来るのか、出来ないのか分からなかった。
「出来る出来ないではない。やるんだ! お前の魔法騎士団への想いはその程度なのか?」
「そんなことないです! 俺は必ず入って叶えることがあります! 常時の身体強化くらい習得してみせます!」
「その意気だ。お前がこれで良いと諦めた状態の上を目指せ! それが合格ラインだ!」
「分かりました!」
これでいいやと思ってしまうことを見抜かれていたようだ。
ある意味限界を超えて訓練をしろということだろう。出雲は源十郎に言われた通り、諦めを超えて上を目指そうと決めた。
「諦めたいけど、諦めない! 俺は強くなるんだ!」
木刀に炎を纏わせる。
時宗に教わったことを活かして目の前にいる源十郎に切っ先を向けると、生意気な真似をしおってと口角を上げて喜んでいるように見える。
「やっと本格的な訓練になりそうだ。いくぞ――」
言葉と共に源十郎の姿が消えた。
流石と言うべきか、身体強化の境地の一つだと思ってしまう。源十郎は魔法の属性を持たないが、魔力は操作ができると以前言っていた。その時は聞き流していたのだが、もっと深く聞いておけばよかったと今更後悔をしてしまう。
「でも! 今の俺ならば!」
全身を身体強化しているので、動体視力が飛躍的に向上をしている。
そのおかげで素早く移動をしている源十郎の姿がハッキリとではないが見ることができていた。
「これでもハッキリとは見えないけど、それでもまだ追える!」
自身の周囲を素早く動く源十郎に対して、動きに合わせて木刀を振るう。すると、立ち止まって突きをしてきたので後方に下がって攻撃を避ける。
「よく避けれたな。その感覚を忘れるな」
「はい!」
それで終わりではなく、訓練はさらに続く。
流れるような連続攻撃や突きを床を転がったりバク転をして避けていく。
「いつの間にそんな避け方ができるようになったんだ?」
「魔法騎士団の中にはこのように避ける人がいるって知りました。憧れだけではなく、自身の糧にするために練習をしていたんです」
「そうか。糧にできるものはキチンと糧にしているみたいだな。その調子だ」
「はい! ありがとうございます!」
源十郎との訓練は気が抜けない。
一挙手一投足をよく見られ、何をしても評価をされてしまう。だいたいは助言と共に直されるが、たまに辛辣な言葉を言われるのでそれが嫌な点でもある。
「避けられるのならいいが、無理をしてはするなよ。無理に体を捻ったりすると余計な怪我に繋がるからな」
早速助言をされた。
今回は辛辣ではないので、嬉しい。確かに源十郎の言う通りだ。無理をして体を痛めて、動けない時に攻撃を受けて致命傷になったら意味がない。
「気を付けます!」
目の前にいる源十郎と鍔迫り合いながら言うと、もっと温度を上げられないのかとダメ出しをされた。
「これ以上すると自分が熱くて、温度を下げてました」
「下げるな! 炎の利点が無くなる! 緻密な調整をして自身には熱が伝わらないようにすんだ!」
「そんなことを言われても……」
緻密な調整ってなんだ? どうすればできるんだろうか? 魔力をより細かく操作をすればいいのか?
ぐるぐると思考を巡らせていると、源十郎が気を抜くなと叫びながら腹部を殴りつけてくる。
「ぐう! 急に殴らないでください!」
「考えている時も動くんだ! 戦場はお前のことを待ってはくれないぞ!」
考え事に集中をしていて防御姿勢が取れないでいると、続けざまに胸部に突きや斬り下ろしの攻撃を受け、想像以上の痛みに悶絶をしてしまう。
「い、痛い! 木刀なのに!?」
「久々に受けたか? 俺の魔力を通しているからな、そこらにある金属製の刀より硬いぞ。身体強化をしていなかったら骨折をしていたかもな」
骨折をするほどに硬い木刀。身体強化をしていてよかったと思うが、源十郎とどのように戦えばいいのか分からず、冷や汗がポタリと床に滴り落ちたのが分かった。
恐怖を感じながらも考えつつ源十郎の攻撃を防いでいると、二人の訓練を見ていた時宗が考え過ぎだと声を上げている姿が目に入る。
「お前にはお前の戦い方がある! 無理に考えないで、思ったように戦え!」
「そ、そんなことを言っても!」
一体どうしたらいいのか分からない。
自分自身の戦い方など分からないし、どうすればいいのかさらに悩んでしまう。
「俺には何がある……どんな戦い方ができるんだ……」
炎を撒き散らしながら攻撃を受け流していく。
突きによる攻撃から始めるのが基本である源十郎の攻撃は、バリエーションが豊かで凄まじい。
「お前はここで何を学んできた? どんな技を修得してきた!? お前には何が積み重なっている!」
俺には何があるんだ。この天明流で何を学んできた。今まで源十郎さんに何を教わってきた。俺は……俺は――。
「俺は……俺には天明流がある!」
出雲は目の前にいる源十郎を倒すだけを考えていた。
だけど天明流と魔法を合わせた戦い方をしようと決めた瞬間、先ほどまでのごちゃごちゃとした思考が嘘のように消え去っていた。なぜあれほどまでに考えていたのか分からなかったが、とても頭の中がスッキリとしていて気持ちがよかった。
「そうだ。それでいい。お前は多くのことを考えすぎる傾向があるからな。少し追い詰めさせてもらった」
「ありがとうございます。そのおかげで戦い方が分かった気がします!」
その言葉を革切りに、源十郎との本当の訓練が始まった。
一閃一閃が即死に思える攻撃を、防いでは受け流す。源十郎の攻撃は一撃が重すぎるため、天明流の受け流し技である霞受けが破られてしまう。
「技が崩される!? だけど、俺には魔法がある!」
一度距離を取って、勢いよく源十郎に向けて構えて突っ込む。
その技は瞬間的に思いついただけで、実際にできるかは分からないが、訓練という形であるが胸を借りる思いで攻撃を仕掛けることにする。
「天明流と魔法の合わせ技だ! 天明流・炎撃一閃!」
木刀に纏わせている炎を燃え上がらせて、天明流の技の一つである素早い横切りに炎属性の魔法を付与させる。これによって例え避けられても魔法による余波のダメージを与えられる結果となる。
「これでどうだ!」
「やるな! それでこそ我が弟子!」
いつ弟子になったとかという疑問が浮かぶが、今は気にせずに攻撃を続けることにする。
「もっと! もっと強くなるんだ!」
次に天明流の一つである双撃を放とうと決める。
この技は刀にて連続した四回の攻撃を放った後に、蹴りを入れる技だ。この技に炎属性の魔法を付与させて、オリジナルの技に昇華させることにした。
「今できる最高の技、行きます!」
「受けてたつ! やってみせろ!」
天明流・双炎撃。
居合のように木刀を腰に添える。ジリジリと距離を少しずつ詰めていくと、突如部屋に入ってきた麗奈がやめてと叫んだ。その声を革切りに、出雲は技を放つ。
一撃目は縦、二撃目は右から三撃目は左から横に斬る。そして四撃目は下から振り上げた。すると源十郎が持つ木刀を両断し、腹部に炎を纏わせた蹴りを入れようとした。
「これで終わりだ!」
既に源十郎を倒すことしか考えていなかった。遠くから麗奈がやめてと何度も叫ぶ声が聞こえるが、蹴りは止まらない。
時宗もやり過ぎだと叫んで止めようとするが、遠くにいて間に合わないだろう。誰もが源十郎の腹部に蹴りが当たると考えた瞬間、目の前に素早く人が入ってきて攻撃を防いだのである。
「そこまでだ。前当主も君もやり過ぎだ」
止めに入ったのは現当主である天竜龍雅であった。龍雅は両腕に魔力を纏わせて蹴りを防いだように見える。
炎を纏わせている蹴りを、いとも簡単に止めたその実力は流石としか言えない。
「その言葉を待っていた。訓練をやるぞ」
腰に差していた木刀を引き抜いた源十郎はその場で構えた。その姿を見た出雲は異様な威圧感を感じて、鳥肌が立ってしまう。
「な、何だこの威圧感……今まで感じたことがない……」
体を振るわせて目の前にいる源十郎を見ていると、時宗が本気だぞと声を上げていた。
「気を付けろ! そこの爺さんは本気で斬りかかって来るぞ!」
「え!?」
驚いた声を上げた瞬間、目の前に源十郎の姿があった。
いつの間に移動をしたのか分からないが、瞬きの間の一瞬で移動をしたのだろうと推測ができる。
「一瞬で!? どうやって!?」
「その答えを導いてみろ!」
突きや振り下ろしなどの多彩な攻撃を辛うじて防いでいると、一瞬で源十郎の姿が目の前から消えた。
足音もなく風切り音もない。周囲を見渡すために視線を左右に向けると、背後から威圧感を感じることに気が付く。
「まさか後ろ!?」
振り向きながら言葉を発すると、左頬に掌底を受けてしまう。
声にならない声を発しながら床に倒れると、続けざまに木刀が顔面に振り下ろされるのが見えた。
「くそ!」
木刀で防ごうとした瞬間、身体強化をしていないことに気が付く。
意識をしていたのに情けないと思いつつ、身体強化をしないと殺されると直感で感じていた。
「これじゃダメだ! 身体強化をして防がないと!」
したつもりが出来ていなかった身体強化を腕にかけ、振り下ろされる源十郎の木刀を防ぐことができた。
その重い一撃を受け、身体強化をしていなければどうなっていたのか考えるだけでも恐ろしい。もしかしたら骨折をしたかもしれないし、入院をしたかもしれない。
「身体強化をしていないことに気が付いたか。遅いくらいだが、よしとしよう」
「すみません! だけど、腕にかけて防げました!」
「当然だ。だが、部分的な強化ではなく、全身にかけて戦わないとダメだ。試験までにそれぐらいは常時出来るようにならなければ落ちるぞ」
常時と聞いて発動し続けられるか不安である。
戦いながら意識をしているのは不可能であり、常に発動しているのが当たり前というくらいにならなければならない。それを自身で出来るのか、出来ないのか分からなかった。
「出来る出来ないではない。やるんだ! お前の魔法騎士団への想いはその程度なのか?」
「そんなことないです! 俺は必ず入って叶えることがあります! 常時の身体強化くらい習得してみせます!」
「その意気だ。お前がこれで良いと諦めた状態の上を目指せ! それが合格ラインだ!」
「分かりました!」
これでいいやと思ってしまうことを見抜かれていたようだ。
ある意味限界を超えて訓練をしろということだろう。出雲は源十郎に言われた通り、諦めを超えて上を目指そうと決めた。
「諦めたいけど、諦めない! 俺は強くなるんだ!」
木刀に炎を纏わせる。
時宗に教わったことを活かして目の前にいる源十郎に切っ先を向けると、生意気な真似をしおってと口角を上げて喜んでいるように見える。
「やっと本格的な訓練になりそうだ。いくぞ――」
言葉と共に源十郎の姿が消えた。
流石と言うべきか、身体強化の境地の一つだと思ってしまう。源十郎は魔法の属性を持たないが、魔力は操作ができると以前言っていた。その時は聞き流していたのだが、もっと深く聞いておけばよかったと今更後悔をしてしまう。
「でも! 今の俺ならば!」
全身を身体強化しているので、動体視力が飛躍的に向上をしている。
そのおかげで素早く移動をしている源十郎の姿がハッキリとではないが見ることができていた。
「これでもハッキリとは見えないけど、それでもまだ追える!」
自身の周囲を素早く動く源十郎に対して、動きに合わせて木刀を振るう。すると、立ち止まって突きをしてきたので後方に下がって攻撃を避ける。
「よく避けれたな。その感覚を忘れるな」
「はい!」
それで終わりではなく、訓練はさらに続く。
流れるような連続攻撃や突きを床を転がったりバク転をして避けていく。
「いつの間にそんな避け方ができるようになったんだ?」
「魔法騎士団の中にはこのように避ける人がいるって知りました。憧れだけではなく、自身の糧にするために練習をしていたんです」
「そうか。糧にできるものはキチンと糧にしているみたいだな。その調子だ」
「はい! ありがとうございます!」
源十郎との訓練は気が抜けない。
一挙手一投足をよく見られ、何をしても評価をされてしまう。だいたいは助言と共に直されるが、たまに辛辣な言葉を言われるのでそれが嫌な点でもある。
「避けられるのならいいが、無理をしてはするなよ。無理に体を捻ったりすると余計な怪我に繋がるからな」
早速助言をされた。
今回は辛辣ではないので、嬉しい。確かに源十郎の言う通りだ。無理をして体を痛めて、動けない時に攻撃を受けて致命傷になったら意味がない。
「気を付けます!」
目の前にいる源十郎と鍔迫り合いながら言うと、もっと温度を上げられないのかとダメ出しをされた。
「これ以上すると自分が熱くて、温度を下げてました」
「下げるな! 炎の利点が無くなる! 緻密な調整をして自身には熱が伝わらないようにすんだ!」
「そんなことを言われても……」
緻密な調整ってなんだ? どうすればできるんだろうか? 魔力をより細かく操作をすればいいのか?
ぐるぐると思考を巡らせていると、源十郎が気を抜くなと叫びながら腹部を殴りつけてくる。
「ぐう! 急に殴らないでください!」
「考えている時も動くんだ! 戦場はお前のことを待ってはくれないぞ!」
考え事に集中をしていて防御姿勢が取れないでいると、続けざまに胸部に突きや斬り下ろしの攻撃を受け、想像以上の痛みに悶絶をしてしまう。
「い、痛い! 木刀なのに!?」
「久々に受けたか? 俺の魔力を通しているからな、そこらにある金属製の刀より硬いぞ。身体強化をしていなかったら骨折をしていたかもな」
骨折をするほどに硬い木刀。身体強化をしていてよかったと思うが、源十郎とどのように戦えばいいのか分からず、冷や汗がポタリと床に滴り落ちたのが分かった。
恐怖を感じながらも考えつつ源十郎の攻撃を防いでいると、二人の訓練を見ていた時宗が考え過ぎだと声を上げている姿が目に入る。
「お前にはお前の戦い方がある! 無理に考えないで、思ったように戦え!」
「そ、そんなことを言っても!」
一体どうしたらいいのか分からない。
自分自身の戦い方など分からないし、どうすればいいのかさらに悩んでしまう。
「俺には何がある……どんな戦い方ができるんだ……」
炎を撒き散らしながら攻撃を受け流していく。
突きによる攻撃から始めるのが基本である源十郎の攻撃は、バリエーションが豊かで凄まじい。
「お前はここで何を学んできた? どんな技を修得してきた!? お前には何が積み重なっている!」
俺には何があるんだ。この天明流で何を学んできた。今まで源十郎さんに何を教わってきた。俺は……俺は――。
「俺は……俺には天明流がある!」
出雲は目の前にいる源十郎を倒すだけを考えていた。
だけど天明流と魔法を合わせた戦い方をしようと決めた瞬間、先ほどまでのごちゃごちゃとした思考が嘘のように消え去っていた。なぜあれほどまでに考えていたのか分からなかったが、とても頭の中がスッキリとしていて気持ちがよかった。
「そうだ。それでいい。お前は多くのことを考えすぎる傾向があるからな。少し追い詰めさせてもらった」
「ありがとうございます。そのおかげで戦い方が分かった気がします!」
その言葉を革切りに、源十郎との本当の訓練が始まった。
一閃一閃が即死に思える攻撃を、防いでは受け流す。源十郎の攻撃は一撃が重すぎるため、天明流の受け流し技である霞受けが破られてしまう。
「技が崩される!? だけど、俺には魔法がある!」
一度距離を取って、勢いよく源十郎に向けて構えて突っ込む。
その技は瞬間的に思いついただけで、実際にできるかは分からないが、訓練という形であるが胸を借りる思いで攻撃を仕掛けることにする。
「天明流と魔法の合わせ技だ! 天明流・炎撃一閃!」
木刀に纏わせている炎を燃え上がらせて、天明流の技の一つである素早い横切りに炎属性の魔法を付与させる。これによって例え避けられても魔法による余波のダメージを与えられる結果となる。
「これでどうだ!」
「やるな! それでこそ我が弟子!」
いつ弟子になったとかという疑問が浮かぶが、今は気にせずに攻撃を続けることにする。
「もっと! もっと強くなるんだ!」
次に天明流の一つである双撃を放とうと決める。
この技は刀にて連続した四回の攻撃を放った後に、蹴りを入れる技だ。この技に炎属性の魔法を付与させて、オリジナルの技に昇華させることにした。
「今できる最高の技、行きます!」
「受けてたつ! やってみせろ!」
天明流・双炎撃。
居合のように木刀を腰に添える。ジリジリと距離を少しずつ詰めていくと、突如部屋に入ってきた麗奈がやめてと叫んだ。その声を革切りに、出雲は技を放つ。
一撃目は縦、二撃目は右から三撃目は左から横に斬る。そして四撃目は下から振り上げた。すると源十郎が持つ木刀を両断し、腹部に炎を纏わせた蹴りを入れようとした。
「これで終わりだ!」
既に源十郎を倒すことしか考えていなかった。遠くから麗奈がやめてと何度も叫ぶ声が聞こえるが、蹴りは止まらない。
時宗もやり過ぎだと叫んで止めようとするが、遠くにいて間に合わないだろう。誰もが源十郎の腹部に蹴りが当たると考えた瞬間、目の前に素早く人が入ってきて攻撃を防いだのである。
「そこまでだ。前当主も君もやり過ぎだ」
止めに入ったのは現当主である天竜龍雅であった。龍雅は両腕に魔力を纏わせて蹴りを防いだように見える。
炎を纏わせている蹴りを、いとも簡単に止めたその実力は流石としか言えない。
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