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ミヒャエルの病気(2)

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 デビュタントのあたりから、時折具合が悪そうな様子を見せるミヒャエルではあった。
 いくら若く見えるとはいえ41歳という年齢を考えれば、調子の悪い時だってあるだろうと思っていたのだけれど……。

「パパ、また熱が出たみたい」
「最近、熱が出る風邪が流行っているから数日休めば大丈夫だって侍医が言っていたよ」
 オスカーはわたしの肩を優しく抱き寄せて、心配いらないと励ましてくれる。
 
 きっと大げさだと思われているのだろう。
 しかしわたしは知っているのだ。
 ハルアカでもミヒャエルは、ドリスのデビュタントあたりから体調を崩しがちになる。
 1年後にはほぼ寝たきりとなり、さらにその1年後、ドリスの19歳の誕生日パーティーの日に命を落とす。

 死因は毒。病気ではなく実はドリスがミヒャエルに少しずつ毒を盛っていたせいだ。
 オスカーは当初、ドリスが毒を盛っていることに気付かないまま戦地へと赴く。
 バルノ王国との戦争が長引き膠着状態が続く中で一時的に帰還したオスカーは、ミヒャエルの病状が進行していてショックを受ける。
 そのさなかに誕生日パーティーを開くと言いだすドリスの態度にも不信感を募らせ、アルトやヒロインと共にドリスの悪事の数々を暴いて追放するのだ。

 でも!
 もちろんわたしは、ミヒャエルに毒など盛っていない。
 料理人のバランは絶対にそんなことはしないはずだし、今エーレンベルク家に仕える使用人たちの中に毒を盛るような人物も見当たらない。
 それでも万が一と思って、ミヒャエルのベッドに食事を運ぶ時は事前にこっそり味見もしている。
 わたしの体調に変化がないということは、少なくとも味見をした料理の中に毒は含まれていないのだろう。

 ハルアカの内容をもう一度よく思い出さないといけない。
 どうしてドリスが毒を盛ったってことになったんだっけ?
 よく思い出すのよ……!

「ドリィ?」
 オスカーが気づかわしげにわたしを見ている。きっと険しい顔をしていたのだろう。
「ありがとう、オスカー。大丈夫よ」
 優しく寄り添ってくれるオスカーにお礼を言って抱き着くと、ぎゅうっと抱き返してくれた。
 
 夜、ベッドに腰かけてひとりでよく考える。
 ハルアカではたしか、アルトがオスカーよりも一足先に帰還する。
 アルトが本格的に登場するのはこのあたりからで、それまではオスカーの友人のひとりとして何度か登場するだけだ。
 しかしオスカーからドリスとの関係とヒロインへの気持ちをあきらめきれない悩みを聞かされていたアルトは、たまたま見かけたヒロインに声をかける。
 そこでヒロインから、ドリスの誕生日会に招待されている話を聞く。
 ミヒャエルの病状がよくないことも。
 
 家が破産して経済的に困窮しているはずのドリスがどうやってパーティーなど開くのかと訝るアルトは、いろいろ探りを入れる。
 その頃のドリスは、男たちに寄生して食事をおごってもらったりドレスをプレセントしてもらったりしていた。つまりパトロンが複数いたわけだ。
 ドリスに接触したアルトは、人懐っこい笑顔で言葉巧みに彼女を持ち上げ、いろいろなことを聞きだす。

 その話の中で、ドリスが青い小瓶を取り出して、
「誕生日パーティー当日に、これで決着をつけるつもりよ」
と悪だくみをしているような笑みを浮かべる。

 ここまで思い出して、待てよと思う。

 青い小瓶……?

 
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