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お茶会(4)

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 オスカーは、アデルとカタリナの間に座ってもらった。

 ここでわたしは、ヒロインたちをうんと誉めそやした。
 リリカの天然なかわいらしさ、カタリナの聡明さ、そしてアデルの勇敢さを。
 もちろん、少しでもオスカーに彼女たちへの興味をひかせるためだ。

 しかしオスカーは感情のこもらない整った笑みを浮かべて相槌を打つだけで、興味がないのがバレバレだ。

 もっと愛想よくしなさいよっ!
 楽しみにしているような態度は一体なんだったわけ?
 仕方ない、ちょっと奇抜な一手を繰り出してみようではないか。

「アデルはトカゲを飼っているのよ。わたしたち、よく学校の中庭でエサのバッタを捕まえているの」
 草をかき分けるような仕草をしながら説明する。

「いまどきの学校では、トカゲをペットとして飼う流行が……?」
 オスカーがいぶかしげに首を傾げた。
 
 そんなわけあるか!

「ええっと……どういうわけか私のバッグの中にトカゲが入っていまして、ずっとお世話をしているんです」
 わたしたちの会話を聞いていたアデルがおずおずと答えた。
「田舎育ちなものですから、トカゲに愛着がわいてしまって……」

「なるほど」
 オスカーがアデルに向かって微笑む。
 すると、アデルの顔がこれまで見たこともないほど真っ赤に染まった。

 これはいい感じだわ。もうひと押しね!
 
「アデルは将来、騎士になりたいのよね? いい機会だからオスカーに話を聞くといいわ」
 3人のうち誰がオスカーに見初められてもオッケーと言いつつ、ハードモードのアデルについ肩入れしてしまう。

「アデルさんは騎士を目指しているのですか?」
 
 オスカーに真っすぐ見つめられたアデルが、はにかみながら答える。
「はい。幼い頃に父からミヒャエル様の英雄伝説を話してもらうたびに、将来私もこうなりたいと思ったんです」

 アデルが緊張した声で語る様子を見て、オスカーは微笑んだ。
「最近は年々、騎士団に入団する女性も増えているのでいいと思いますよ」
 
 ここまで聞いて思い出した。
 このふたりのやり取りは、ゲームのセリフのまんまだわ!
 そういえば、アデルルートではいつごろから朝の剣稽古を始めるんだったっけ……?
 
 ふと頭に浮かんだ疑問がそのまま口に出る。
「ねえ、アデルって剣のお稽古はしているの?」
 
「まだ体力づくりしかしていなくて……。剣術は我流だと変な癖がつくと言いますから」

 それならば、アデルに剣稽古をつけてやってほしいとオスカーに頼もうかと考えていると、横から能天気な声がした。
「アデルちゃん、せっかくだからオスカー様に教えてもらえばいいんじゃなーい?」
 声の主は首をこてんと傾げてにこにこしている。
 そう、リリカだ。
 
 その背後ではカタリナが「なんて厚かましいことを!」という驚愕の表情でふわふわのハニーピンクの髪を見つめている。
 カタリナはバッタ探しにオスカーが加わることにもひどく困惑している様子だった。
 オスカーがアッヘンバッハ男爵の長男であることや、ミヒャエルが将来的に彼をエーレンベルク伯爵家の後継者にしたがっていることを、情報通のカタリナは知っているのだろう。
 
 オスカーに気安く願い事などするなと言いたいのだろうけど仕方ない。リリカは天真爛漫な聖女様なのだから。
 それに、これでオスカーとアデルの親密度が上がるのならわたしとしても大歓迎だ。
 
「そうね! ちょうどいいじゃない、教えてもらうといいわ。ね、オスカー、やってくれるでしょう?」
 拒否は許さないわよと思いながら見やると、目が合ったオスカーが余裕の笑みを見せる。
「ドリスのお嬢様のご命令とあらば喜んで」

 オスカーがハンナに稽古用の木剣を持ってくるよう指示した。
 肝心のアデルは、急展開にどうしていいかわからない様子でオロオロしている。
 
 アデル、チャンスよ!
 しっかりオスカーのハートを掴んでちょうだい!

 心の中で応援しながらアデルの背中を押した。
 
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