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お茶会(2)
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「素敵なお庭ね。珍しいバラが咲いているわ」
カタリナは目の前に並ぶスイーツよりも庭に興味があるようだ。
その隣でリリカはきゃわきゃわ言いながらクリームたっぷりのカップケーキを頬張っている。
良く晴れた休日の昼下がり。
爽やかな風がそよぐ中庭の木陰にテーブルセットを出してリリカ、カタリナ、アデルをもてなした。
ミヒャエルは朝から厨房を覗いたり、お天気は大丈夫かと何度も窓から空模様を気にしたりと落ち着かない様子だった。
ついにはハンナに「じっとしていてください!」と言われてシュンとなっていた。
そんな叱られたわんこのようなミヒャエルが、約束の時間に3人が到着した時にはエーレンベルク伯爵家の当主として堂々とした振る舞いで出迎えたのはさすがだ。
しかし堂々とした振る舞いはそこまでだった。
リリカに「パパさん、若い!」と言われると尻尾が揺れ始め、カタリナに「英雄殿にお会いできて光栄ですわ」と言われるとさらに大きく尻尾が揺れ、アデルに「ミヒャエル様に憧れて騎士を目指そうと思っているんです!」とキラキラした目で言われたところで、手に負えないほどグルングルン揺れる尻尾が見えた。
「ドリス、いい友人を持ったな」
ミヒャエルはすでに感極まって涙ぐんでいる。
まずい、このままじゃ感極まって3人のことを抱きしめてしまうんじゃないかしら!?
これはヤバいと思ったところで、同じくその空気を感じ取ったオスカーに連行されていくミヒャエルを苦笑とともに見送った。
エーレンベルク伯爵家の料理人バランをはじめ腕に覚えのあるメイドたちが総出でこのお茶会のために用意してくれたスイーツは、各人の好みを考慮してわたしが大まかにリクエストしたものだ。
リリカの好みに合わせたクリームたっぷりの甘ったるいカップケーキやフルーツ。
カタリナが上品に食べられるよう一口サイズにしたクッキーや小ぶりなマカロン。
そして甘いものがあまり得意ではないアデルには、スパイスのきいたペッパークッキーやジンジャースコーン。
美味しそうなスイーツがテーブルの上に所狭しと置かれている。
「これ、とても美味しいですね!」
アデルがペッパークッキーを気に入ってくれたようで、こちらも嬉しくなる。
なくなりそうな勢いでアデルが食べるものだから、先程アイコンタクトでハンナに追加を持ってくるよう指示を出しておいた。
その追加のクッキーをバランが運んできた。
「うわぁ、ありがとうございます! 甘さ控えめでスパイスがとてもいいですね!」
アデルが弾けるような笑顔でバランに賛辞を述べる。
実際、バランの作る料理はどれもとても美味しい。
「バランの料理はなんでも美味しいのよ。我が伯爵家の自慢のシェフだもの。わたしがここまで大きくなったのもバランの美味しい料理のおかげよ」
自分が褒められたわけではないのに嬉しくて、ふんすと胸を張る。
するとバランは、頬を搔きながら照れくさそうに破顔した。
「ドリスお嬢様の初めてのご友人に喜んでいただきたいと思いまして、腕によりを……」
「みなさま、お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
ハンナが慌ててバランの言葉にかぶせるように話題を変える。
そしてバランの背中を押して早くひっこめという素振りを見せた。
その様子にアデルは何が起きているのかわからない様子でキョトンとしている。
カタリナは一瞬気まずそうに視線を落とした後にすぐ口角を上げて「では紅茶のおかわりを」と微笑んだ。
それに対しリリカは、いつもの空気が読めない様子で首をこてんと傾げた。
「ドリスちゃんて、これまでお友達いなかったの?」
来たわね。強制イベント!
カタリナは目の前に並ぶスイーツよりも庭に興味があるようだ。
その隣でリリカはきゃわきゃわ言いながらクリームたっぷりのカップケーキを頬張っている。
良く晴れた休日の昼下がり。
爽やかな風がそよぐ中庭の木陰にテーブルセットを出してリリカ、カタリナ、アデルをもてなした。
ミヒャエルは朝から厨房を覗いたり、お天気は大丈夫かと何度も窓から空模様を気にしたりと落ち着かない様子だった。
ついにはハンナに「じっとしていてください!」と言われてシュンとなっていた。
そんな叱られたわんこのようなミヒャエルが、約束の時間に3人が到着した時にはエーレンベルク伯爵家の当主として堂々とした振る舞いで出迎えたのはさすがだ。
しかし堂々とした振る舞いはそこまでだった。
リリカに「パパさん、若い!」と言われると尻尾が揺れ始め、カタリナに「英雄殿にお会いできて光栄ですわ」と言われるとさらに大きく尻尾が揺れ、アデルに「ミヒャエル様に憧れて騎士を目指そうと思っているんです!」とキラキラした目で言われたところで、手に負えないほどグルングルン揺れる尻尾が見えた。
「ドリス、いい友人を持ったな」
ミヒャエルはすでに感極まって涙ぐんでいる。
まずい、このままじゃ感極まって3人のことを抱きしめてしまうんじゃないかしら!?
これはヤバいと思ったところで、同じくその空気を感じ取ったオスカーに連行されていくミヒャエルを苦笑とともに見送った。
エーレンベルク伯爵家の料理人バランをはじめ腕に覚えのあるメイドたちが総出でこのお茶会のために用意してくれたスイーツは、各人の好みを考慮してわたしが大まかにリクエストしたものだ。
リリカの好みに合わせたクリームたっぷりの甘ったるいカップケーキやフルーツ。
カタリナが上品に食べられるよう一口サイズにしたクッキーや小ぶりなマカロン。
そして甘いものがあまり得意ではないアデルには、スパイスのきいたペッパークッキーやジンジャースコーン。
美味しそうなスイーツがテーブルの上に所狭しと置かれている。
「これ、とても美味しいですね!」
アデルがペッパークッキーを気に入ってくれたようで、こちらも嬉しくなる。
なくなりそうな勢いでアデルが食べるものだから、先程アイコンタクトでハンナに追加を持ってくるよう指示を出しておいた。
その追加のクッキーをバランが運んできた。
「うわぁ、ありがとうございます! 甘さ控えめでスパイスがとてもいいですね!」
アデルが弾けるような笑顔でバランに賛辞を述べる。
実際、バランの作る料理はどれもとても美味しい。
「バランの料理はなんでも美味しいのよ。我が伯爵家の自慢のシェフだもの。わたしがここまで大きくなったのもバランの美味しい料理のおかげよ」
自分が褒められたわけではないのに嬉しくて、ふんすと胸を張る。
するとバランは、頬を搔きながら照れくさそうに破顔した。
「ドリスお嬢様の初めてのご友人に喜んでいただきたいと思いまして、腕によりを……」
「みなさま、お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
ハンナが慌ててバランの言葉にかぶせるように話題を変える。
そしてバランの背中を押して早くひっこめという素振りを見せた。
その様子にアデルは何が起きているのかわからない様子でキョトンとしている。
カタリナは一瞬気まずそうに視線を落とした後にすぐ口角を上げて「では紅茶のおかわりを」と微笑んだ。
それに対しリリカは、いつもの空気が読めない様子で首をこてんと傾げた。
「ドリスちゃんて、これまでお友達いなかったの?」
来たわね。強制イベント!
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