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第三大陸編
虫地獄
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ギルターの鼻を頼りにテイマーがいるであろう方向に飛んでいく。
木々が生い茂る森の上。
直射日光でとても暑い。
『ここら辺だ』
ギルはそう言って鼻をひくひくさせた。
下を覗き見てみるが、木の密集度が高いのでその下がどうなっているのかはわからなかった。
「フィズ。あの辺りで降りてくれ」
『わかりました』
ちょっと離れたところに降りた。
「暗いね」
「ああ」
樹木によって日光が遮られていて、辺りは薄暗かった。
直射日光はないが、湿気が多く蒸し蒸しとした暑さが襲う。
そんな暑さの中、俺たちは森の中を歩いていく。
しばらく進んでいくと何やら森の雰囲気が変わった。
「なーんか嫌な感じぃ」
カプリスもその雰囲気を感じ取ったのかそう呟く。
『主。何か来るぞ』
ギルが警戒しながら伝えてきた。
その言葉に俺たちも警戒態勢に入る。
それはすぐに現れた。
ガサガサと藪をかき分ける音が辺りに響き、それらが現れた。
「ひっ」
現れたのは大量の虫。
その光景にカプリスが悲鳴を漏らした。
まあ、虫使いが相手なのだからこうなるわな。
俺も虫には慣れているが、こうも大量に押し寄せてくると虫唾が走る。と言うか生理的に無理。
「ど、どうするのさー!」
勢いを落とす気配のない虫たちにカプリスが俺にしがみついてきた。
「狩るしかないんじゃないか?」
「虫の体液なんて被りたくないよ!」
「何のための魔術だ」
「魔術なんて使えないよ!? うち!」
「んじゃ、俺とリーリス、フィズ」
『私も嫌だぞ』
「じゃあ、カプリスを守っててくれ」
『了解した。下がろう』
ギルはカプリスを連れて後ろに下がった。
「フィズ。土属性に形態変化。リーリスは風の魔術で迎撃」
『わかりました』
「了解しました」
俺の指示に従い、フィズは形態変化し黄土色になった。
リーリスは風の魔術で刃を生成し、次々来る虫たちを切り裂いていく。
俺も魔術を使って虫を迎撃することにしよう。
森の中にいるため、使う魔術の属性には気を付けて行こうか。
俺も体液浴びたくないしな。
固定砲台と化した俺たちは、虫の勢いが収まるまで魔術を打ち続けた。
並みの魔術師だったらぶっ倒れる位魔力を使った。それほどまでに虫の量が多かったのだ。
途中で森ごと燃やしてやろうかと思ったくらいだ。
辺りに散らばる虫の死骸。
体液によって地面には緑の模様が形成されていた。
正直気持ち悪い。
「・・・」
俺ですら嫌悪を抱く光景。カプリスに至っては目をぎゅっと瞑り、俺の背中に張り付いている。
「先に進もう」
行く気が起きないが、被害が出始めている以上見過ごすわけにもいかない。
憂鬱だ。
リーリスも嫌悪を前面に押し出して一言も発しなかった。
『虫って脆いのですね』
フィズはいつもの調子。
俺たちと違ってそこまで嫌悪していないようだ。
ギルも同じ。
先ほどの虫たち以降、俺達の前に虫も魔物も出てくる気配はなく。
不気味なほど静かな森が続いている。
かなり進んだところで、崖に空いた洞窟の前にたどり着いた。
「ここか?」
『ここだ。この奥から虫どもの臭いがする。人間の臭いもな』
「ありがとう」
ギルターに礼を言う。
「カプリス、リーリス、ギルターはここで外の警戒を頼む。俺とフィズリールで洞窟内の探索だ」
「・・・うい」
『了解した』
「お二人でいいのですか?」
「ああ。さっきみたいに大量の虫が出ると予想すると、カプリスは連れていけないしな。かといってカプリスだけをここに残していくわけにもいかないからな。ギルだけじゃ守り切れるかわからないし」
『信用されていないようで思うところはあるが、確かに先ほどみたいに大量に来られると私だけでは対応できるかわからない』
「了解しました。お気をつけて」
「ごめんね。マスター」
しょんぼりするカプリスが小さく謝ってきた。
「気にするな。誰にも得意不得意はあるからな」
そう言って頭を撫で、俺はフィズと共に洞窟内へと足を踏み入れた。
ジメジメとした洞窟内はどこか不気味に感じた。
どれくらい進んだだろうか。
ここまで分かれ道も見当たらなかった。どこまで進んでも敵一匹出てこず、足音と滴る水の音のみが洞窟内に反響しているだけだった。
「変だな」
『・・・幻覚でしょうか?』
「幻覚か。あり得るな。何か感じるか?」
『はい。空気中に漂う微かな魔力を感じます。恥ずかしながらここに来るまで気が付きませんでした。後でどんなお仕置きも覚悟いたします!』
後半は聞かなかったことにしよう。
「幻覚かどうかは定かではないが、もしも幻覚ならば簡単だ」
自分の顔とフィズの顔に手を当て魔術で状態異常を回復させる。
するとどうだろう。先ほどまで静かだった洞窟内が騒がしくなってきたではないか。
顔に当てた手を退かしたくないな。これ。
周りから聞こえるギチギチ音。
ああ、寒気がする。
いつまでもこうしているわけにはいかないのでそっと手を退ける。
開けた視界に映るのは虫虫虫。
おぞましい数の虫が辺りに蠢いていた。
「ああ、もう。最高」
鳥肌が立ってきたわ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
虫嫌いの人すみません。
お読みいただきありがとうございます。
お気に入り登録、感想、誤字脱字もお待ちしておりますよ!
木々が生い茂る森の上。
直射日光でとても暑い。
『ここら辺だ』
ギルはそう言って鼻をひくひくさせた。
下を覗き見てみるが、木の密集度が高いのでその下がどうなっているのかはわからなかった。
「フィズ。あの辺りで降りてくれ」
『わかりました』
ちょっと離れたところに降りた。
「暗いね」
「ああ」
樹木によって日光が遮られていて、辺りは薄暗かった。
直射日光はないが、湿気が多く蒸し蒸しとした暑さが襲う。
そんな暑さの中、俺たちは森の中を歩いていく。
しばらく進んでいくと何やら森の雰囲気が変わった。
「なーんか嫌な感じぃ」
カプリスもその雰囲気を感じ取ったのかそう呟く。
『主。何か来るぞ』
ギルが警戒しながら伝えてきた。
その言葉に俺たちも警戒態勢に入る。
それはすぐに現れた。
ガサガサと藪をかき分ける音が辺りに響き、それらが現れた。
「ひっ」
現れたのは大量の虫。
その光景にカプリスが悲鳴を漏らした。
まあ、虫使いが相手なのだからこうなるわな。
俺も虫には慣れているが、こうも大量に押し寄せてくると虫唾が走る。と言うか生理的に無理。
「ど、どうするのさー!」
勢いを落とす気配のない虫たちにカプリスが俺にしがみついてきた。
「狩るしかないんじゃないか?」
「虫の体液なんて被りたくないよ!」
「何のための魔術だ」
「魔術なんて使えないよ!? うち!」
「んじゃ、俺とリーリス、フィズ」
『私も嫌だぞ』
「じゃあ、カプリスを守っててくれ」
『了解した。下がろう』
ギルはカプリスを連れて後ろに下がった。
「フィズ。土属性に形態変化。リーリスは風の魔術で迎撃」
『わかりました』
「了解しました」
俺の指示に従い、フィズは形態変化し黄土色になった。
リーリスは風の魔術で刃を生成し、次々来る虫たちを切り裂いていく。
俺も魔術を使って虫を迎撃することにしよう。
森の中にいるため、使う魔術の属性には気を付けて行こうか。
俺も体液浴びたくないしな。
固定砲台と化した俺たちは、虫の勢いが収まるまで魔術を打ち続けた。
並みの魔術師だったらぶっ倒れる位魔力を使った。それほどまでに虫の量が多かったのだ。
途中で森ごと燃やしてやろうかと思ったくらいだ。
辺りに散らばる虫の死骸。
体液によって地面には緑の模様が形成されていた。
正直気持ち悪い。
「・・・」
俺ですら嫌悪を抱く光景。カプリスに至っては目をぎゅっと瞑り、俺の背中に張り付いている。
「先に進もう」
行く気が起きないが、被害が出始めている以上見過ごすわけにもいかない。
憂鬱だ。
リーリスも嫌悪を前面に押し出して一言も発しなかった。
『虫って脆いのですね』
フィズはいつもの調子。
俺たちと違ってそこまで嫌悪していないようだ。
ギルも同じ。
先ほどの虫たち以降、俺達の前に虫も魔物も出てくる気配はなく。
不気味なほど静かな森が続いている。
かなり進んだところで、崖に空いた洞窟の前にたどり着いた。
「ここか?」
『ここだ。この奥から虫どもの臭いがする。人間の臭いもな』
「ありがとう」
ギルターに礼を言う。
「カプリス、リーリス、ギルターはここで外の警戒を頼む。俺とフィズリールで洞窟内の探索だ」
「・・・うい」
『了解した』
「お二人でいいのですか?」
「ああ。さっきみたいに大量の虫が出ると予想すると、カプリスは連れていけないしな。かといってカプリスだけをここに残していくわけにもいかないからな。ギルだけじゃ守り切れるかわからないし」
『信用されていないようで思うところはあるが、確かに先ほどみたいに大量に来られると私だけでは対応できるかわからない』
「了解しました。お気をつけて」
「ごめんね。マスター」
しょんぼりするカプリスが小さく謝ってきた。
「気にするな。誰にも得意不得意はあるからな」
そう言って頭を撫で、俺はフィズと共に洞窟内へと足を踏み入れた。
ジメジメとした洞窟内はどこか不気味に感じた。
どれくらい進んだだろうか。
ここまで分かれ道も見当たらなかった。どこまで進んでも敵一匹出てこず、足音と滴る水の音のみが洞窟内に反響しているだけだった。
「変だな」
『・・・幻覚でしょうか?』
「幻覚か。あり得るな。何か感じるか?」
『はい。空気中に漂う微かな魔力を感じます。恥ずかしながらここに来るまで気が付きませんでした。後でどんなお仕置きも覚悟いたします!』
後半は聞かなかったことにしよう。
「幻覚かどうかは定かではないが、もしも幻覚ならば簡単だ」
自分の顔とフィズの顔に手を当て魔術で状態異常を回復させる。
するとどうだろう。先ほどまで静かだった洞窟内が騒がしくなってきたではないか。
顔に当てた手を退かしたくないな。これ。
周りから聞こえるギチギチ音。
ああ、寒気がする。
いつまでもこうしているわけにはいかないのでそっと手を退ける。
開けた視界に映るのは虫虫虫。
おぞましい数の虫が辺りに蠢いていた。
「ああ、もう。最高」
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