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エピローグ

61、終結

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「竜人様、国王陛下入場します」

その声とともに、俺とダンはパーティー会場の中を進む。
本来は竜人も国王陛下も俺なのだが、周りから見たらダンをドラゴンと認識出来ないため、そういうことにしてあるのだ。


そんなことよりも、俺は真っ直ぐ進むダンに言いたいことがあった。

「なんで、俺はお姫様抱っこで入場させられてんの!?」
「イル、静かにしろ!音が大きいから周りには聞こえないだろうが、一応お前は『竜の花嫁』だからな」
「だからってこれは……」

そう言いながら周りを見渡すと、俺が思ったのとは違う反応が返ってきていた。

「あぁ、あれが竜人様よ!私達の守護神!!」
「竜人様にお姫様抱っこされるなんて、流石『竜の花嫁』だわぁ~。それがこの国の王だなんて誇らしく思ってしまうわね」

何故かご婦人方に大人気だった!
それでもやはり、男性人には険しい顔をしている人もいるわけで……。
俺もそんな顔がしたいです!と、思ったのだった。

そして俺達が定位置につくと、音楽が止まる。
俺は恥ずかしいのを我慢して、お姫様抱っこのまま声を張り上げた。


「皆、今日この日に来てくれたこと感謝する。私も今日で18歳だ。まだ若輩ではあるが今後とも良き王として邁進して行きたいと思っている。どうかその手助けを今後ともよろしく頼む」

俺の挨拶に皆が拍手で返してくれる。
今まで呪われた俺のことなんて見向きもしなかった奴らがだ。
だから俺はこれからこの国の良き王として、こいつらをきっちり見極めなくてはならない。

でもそれは、まだまだ時間をかけてゆっくり締めていこうと思っている。


そんな訳で俺の誕生日パーティーは幕を開けた。
とにかく迎賓が多くて数時間経った頃には、俺はすでにぐったりと疲れてしまったのだった。
そして今、ダンは俺を抱えたまま何処かへと連れて行こうとしていた。

「ダン、何処に向かってるんだ?」
「疲れただろう?だから少しの間ぐらい休憩室にいてもいいって、シルが言ってたからな」
「流石兄上、時間の調整も完璧なんだな!」

成る程!と俺は変に納得して、休憩室の扉をくぐったのだった。


「「「イル!!誕生日おめでとう!!!」」」
「え?」

パンパンパーーーン!!

部屋に入った瞬間、盛大に祝われた俺は目の前にいる人達をみて声が出なくなってしまった。

そこには、ギル兄上、シル兄上、バレン兄上、ガイにルーディア、ウル……そして───。

「デオル兄上……」
「恥ずかしながら、どうしてもお前を祝いたくてうじうじしていたら、ウルに無理やり連れてこられてしまったんだよ」

そう言う兄上は少し恥ずかしそうにしていた。その横でウルが親指を立てたので、俺も返しておく。
ウルのくせにいい仕事をしてくれた!


「そう言う訳で、お前をお祝いするために皆ここに来てくれたんだぜ」

ダンがようやく俺を下ろしてくれる。
見回すと皆がいてくれて、嬉しいのにその中にライムがいないことに少し寂しく思ってしまう。

『イルレイン様、今日だけは私もここから挨拶させて頂きます』
「ら、ライム!?え、何処に……?」

俺は必死にライムの人型の姿を探したのにやはり何処にもいなくて、空耳だったのかと首を傾げる。

『こちらでございます』

その声はピョンコピョンコと跳ねるマニから発せられていた。

「まさかの通信!?」
『私は神ですからこのぐらいでしたら……』
「そっか、じゃあ本当に皆俺のために来てくれたんだ……」

俺は信じられないようなものを見る目で、周りを見回していた。
だって去年はデオル兄上とバレン兄上、そしてライムにしか直接お祝いされなかったのだ。

それなのに今年は皆にお祝いされて、俺はなんて幸せものなのだろう。
きっと呪いが解けなかったなら、こんな幸せな時間は来なかったはずなのだ。

「俺は生まれてきて、初めてこんなに沢山の人に祝ってもらえて、本当に幸せ者です!」

俺は笑顔で涙を流しながら、皆の笑顔を見回したのだった。


「よっし!快気祝いも兼ねて、イルを皆で抱き上げようぜ!」
「んっ!?」

幸せに浸かっていた俺は、ダンのその言葉で我に帰る。

「いいですね、縁起担ぎにもなりそうですね」
「じゃあ俺様が最初だな!」

そういって混乱している間に、俺はギル兄上に抱え上げられていた。

「では次は私が」
「いや、俺が!」
「僕です!!」

なんて皆が俺を取り合い始めた。
でも、ひとつだけ言わせて欲しい。

「やめて!!俺を抱っこしないで!!!」

そう、力の限り叫んでいたのだった。




気がつけばこうして、俺は過保護な男達に囲まれていた。
でもそれは決して悪いことじゃなくて、寧ろ皆がいてくれたから、俺は今こうしてここで生きている。

そのことがとても幸せなのだ。

だけど俺の恋心は全く決着がつかなくて、俺には皆大好きとしか思えないのだ。
でもまだまだこれから長い時を過ごすのだから、考える時間はたっぷりあるはずだ。

だからそれまでは、こんな俺の側にいたいと言ってくれた皆との、ハーレム気分をもう少しだけ楽しみたい。


なんて思ってしまったのは、皆には内緒だ。





          ー HAPPY END ー










─────────────────────

ここからは作者の長い独り言です。

最後まで読んで頂き有り難うございました。
ハーレムエンドなので、誰か一人と結ばれてはないですが、それでも皆に愛されてイルレインは幸せを掴み取ることができました!よかった!
なにより、最後まで完走してくださった皆様には感謝感激で土下座ものです!

この後はダランティリア視点を上げて本編は完全に終了です。あとはオマケも少しだけ書きます。
完走した感想もコメントでお待ちしております!


そしてなんと次は、ウル×デオルの話を上げます!
最後の方で二人がどうなるのか気になって、書きたくなってしまったのです。
本編とは全く別の新作として書きます。
ほぼ二人しか出てこないです。

※追記です。
ウル×デオがすでに別作品で上がっております!
忠告ですが、ガッツリR-18でかなりエロくて変態なウルが見れます。あとデオル兄上の表記は向こうはデオです。性格がイルに対してではないのでかなり違うように見えると思います。あとデオル兄上めっちゃ喘いでますね。
それを気になさらない方は是非読んでみて下さい!
それとギャグではないです。

  
ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました!
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