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第六章 解呪編

56、選択?

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光り輝きはじめたライムにダランティリアは、巻き込まれないように距離をとっていた。
そして俺はただそれを見つめることしかできなかった。

ライムは自分が自分でなくなるかもしれないと、言っていたけど。
それは、記憶が?見た目が?
もしかするとその両方かもしれない。
でもどうか一緒に過ごした記憶だけは残っていて欲しいと、そう願っていた……。

徐々に光が収束していき、俺はその姿を確認する。
そこには───。

「か、壁!?ら、ライムは何処に??」
「イル、お前何言ってんだ。ライムなら目の前に居るだろう?」
「ダランティリア!お前、ライムは壁だとでも言うのか?」
「はぁ。全くこれじゃぁライムは報われねぇな。ほれ触ってみろ」

さっきまでライムを吸収しようとしてたやつの言葉とは思えないし、少し馬鹿にされた気がする。
でも、俺は言われた通りその壁に手を伸ばした。

ポヨポヨンッ!!

俺の手は弾力のある何かを触った。
そして、俺はこの触り心地をもちろん知っている。

「ほ、本当にライムなのか?」
『イルレイン様。私がライムで間違いないです』
「えぇ!!?ライム、なんて大きくなってしまって……」

俺には壁に見えたそれはライムの一部であり、ライム本体は余りの大きさに何処まで上があるのか見えない。

『進化したばかりでサイズ調整ができていませんでしたが、すぐにサイズを変更致しますね』

そう言うと、そのスライムは徐々に小さくなっていく。
そして、最終的に俺と同じぐらいの高さになるまで縮まり続けたライムを見返して驚いた。

何故かスライムなのに羽生えてる!?
その疑問に答えたのはダランティリアだった。

「なるほどライムは『スライム神』になったんだな」
「ふん、その通りです。これであなたの呪縛はもうありません。そのかわり、イルレイン様との従魔契約も切れましたけど……」

スライム神って何!?ライムはとにかく偉い存在になったということだろうか……。
それにライムが俺を主と呼ばなくなったのは、従魔契約が切れたからだったのか。

「で?その姿ならイルを守れるのか?」
「そうです。あなたなんかに頼らなくても、私がいればイルレイン様に最高の守護を与えることができますから」

二人はそのまま睨み合ってしまった。
当の俺は置いてかれているのだけど、何がどうなってるんだよ!?

「だから邪魔なあなたを倒して、ずっと一緒にいるのはこの私です」
「いや、それだけは譲れねぇな。封印されたとしてもイルごと連れて行くぜ。何故ならイルは生まれた瞬間から俺のものだからな。それにしてもその姿で戦えるのか?」
「もちろんです、神に不可能はないのですよ!」

バチバチと今すぐやり合いそうな二人を見ていたら、とにかく止めなくてはと思った俺は二人の間に割り込んだ。

「ストーップ!!!よくわからないけど、これ以上争うのは禁止だ!俺はダンの姿をしたダランティリアが傷つくのを見たいわけじゃないし、スライムに姿は変わったけどライムにも何かあったら嫌だからな!」
「何甘いこと言ってんだ」
「そうですよ!そんな事を仰るのでしたら、イルレイン様が決めてください」

え?何を??
そう混乱する俺の肩を掴んだ二人はニヤリと笑って言いのけた。

「そんなの決まってるだろ?俺を選ぶのか……」
「それとも、私を選ぶのか……ですよ!!」
「ええ!!!?」

今の話の何処にそんな要素があったのか全くわからない俺は、目を白黒させて二人を交互に見てしまった。

「いやいやいやいや、まってくれ!なんで二人を選ぶって話になってるんだ?」
「何故って、選ばないとお前が死ぬからだろ?それと、この国が滅ぶ。」
「そうですよ!イルレイン様をお救いするのはこの私です!だからこの男を封印すれば全部解決しますから」

確かにそんな話をしていた気がするが、でもいつのまに二人を選ばないといけないことになったのだろうか……。
確かに俺はダンのこともライムの事も気になってはいたし、多分どちらも同じぐらい好きなんだと思う。
でも今はその答えを聞かれてるわけじゃないし、それに俺はまだ皆としたいことがある。

ライムに世話をしてもらって、ダンと冒険者をして、ルーディアに錬金術で何か作って貰ったり。そしてたまに兄上達とお茶とかしてみたい。
それを俺は、呪いの解けた元気な体でしたいのだ。

でもそれを全部するのは不可能だと、現実を突きつけられてしまった。
ダランティリア、ライムどちらかを選ばなければダメだと言うのだ。

確かにダランティリアが俺にした事を考えたら、ライムを選ぶべきなのだろう。
それなのに俺はダランティリアに少しの違和感をもっていたため、それを決めかねていた。正直ダンの事をまだ気にしていたのもある。

しかし時間はあまり無い。外ではドラゴンと冒険者達が戦っているのだ。
そして俺は悩んだ結果、一つの結論に辿り着いた。

俺だけが犠牲になればいいのではないかと……。

進化をすれば、俺はこの地を守護できる存在になれるかもしれない。
それは、呪いで死ぬよりかはだいぶマシな事だと思えたのだ。

だから俺はいまだに睨み合う二人に叫んだ。

「俺はどっちかを選ぶなんて出来ない!それだったら、俺が不可能だと決めつけた進化だってしてみせる!!」
「イル!?」
「イルレイン様!!」

勢いよく言い切った俺を、二人が驚いた表情で見つめてきたのだった。
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