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第一章 冒険者編

5、冒険者としての一日(後編)

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ダンとともにギルドに着くと、周りの視線が痛かった。
でもこれはいつもの事だ。何せ俺はどう見ても強く無さそうなのに、7スターSSランクなのだから。
それも相まって、前に倒したアーマードラゴンの話題があちこちで聞こえてくる。

「本当にあんなガキンチョが?」
「でも実際にその場で助けられた冒険者がいるんだぞ……」
「本当は後ろにいる長身がやったんじゃねぇのか?」

などと、疑心暗鬼な皆さんの声が俺にまで届いて来ていた。まあいつもの事だから気にしない事にする。
それなのに後ろにいるダンの方が気にしているのか、周りに殺気を振りまいているのがわかった。

うん、これが一番の原因だな。
その殺気のせいでダンが倒したんじゃないかと思われてるに違いない。

そう口には出さず、俺は窓口に向かう。
窓口にはカウンターと個室がそれぞれあり、俺たちはいつも個室を使わせて貰っている。
内容が内容だから仕方がないのだ。


そして今、目の前にはギルド職員のお姉さんが和かに座っている。
何よりそれを見るのが俺の一番の癒しだった。
なにせ、ハーレムを目指しているのに女性が周りに全く居ないのだ。
だからたとえ年齢が一回り以上離れていたとしても、癒されはするのだ仕方がない。

「ギルドカード確認いたしました。セイ様とダン様ですね。先週はアーマードラゴンの討伐、並びに唐突な救援クエストにお応え頂きありがとうございました」
「いや、職員さんが早めに伝えてくれたおかげで、誰も犠牲にならずにすんだんだ。それよりも討伐後、時間がなくてアーマードラゴンを納品できずにすまなかった。まだ納品は間に合うだろうか?」

あのときは時間切れでそこまで頭が回らなかった。
だからこそ納品出来なくても仕方がないと諦めている。

「いえ、大丈夫です。アーマードラゴンは全て納品でよろしいですか?」
「ああ、それと一つ頼みがある。納品した金額の一部を、運悪くアーマードラゴンに出会って怪我をしてしまった冒険者グループに渡して欲しい」

正直俺が沢山お金を持っていても仕方がないし、この方が気分がいいからな。それと今回の残りはとりあえずダンに渡しておこう。いつも世話になってるし。

「残りは今度ダンに渡しておいてくれ。ダンもそれでいいな?」
「しょーがねぇから預かって置いてやるよ」
「預かるんじゃなくて、貰ってくれよ……」
「貰った金は俺が自由に管理するから大丈夫だ」

そう言ってダンはニカっと笑いながら俺の頭を撫でる。そうやっていつもごまかされている気がする。
俺が微妙な顔で撫でられていると、目の前からふふっと笑い声が聞こえたので二人でそちらを向く。

「本当にお二人は仲がよろしいのですね」

ギルドのお姉さんが微笑ましそうにこちらを見ていた。ダンはもうすぐ30歳らしいし、お姉さんからしたら俺たちは仲良し親子みたいに見えるのかもしれない。

「ああ、俺はこいつの保護者みたいなもんだからな」
「まあっ」

そう言ってダンは笑顔で俺の肩を引き寄せる。その様子にお姉さんは驚きつつも、その笑顔に頬を染めていた。
何というかイケメンはズルイ。
そう思った俺はすぐさま話題を変える事にした。


「それで、お願いしていた錬金術師については……?」
「あ、はい。錬金術師が出している依頼は今全くない状態でして……最近はギルドに依頼をせずご自身で素材を取りに行くのが流行っているのか、そういう方たちが増えてきていますので」
「そうですか……」

何度目になるかわからないその答えに、俺は落胆する。

俺には呪を解呪する素材の為に、どうしても錬金術師の知り合いが必要だった。
それなのに最近の錬金術師はアクティブな魔法使いが多く、自ら素材を取りに足を運ぶそうだ。
その方が他の素材もついでに持ち帰れて楽だとか……。

「あ、でも!この王都にある錬金術アカデミーには逆に依頼を請け負うっていう制度があるんですよ。自分の実力をつける事や名を上げることも出来るので、結構優秀な子が多いって噂です」
「え?そんな制度があるなんて知らなかった」
「民間にはあまり知られてないですからね。お役に立てたなら嬉しいです」

王都で暮していたけど、そんな制度があるなんて聞いた事がない。俺はそっとダンにアイコンタクトを送るも、首を振っている。
ダンも知らなかった所を見ると、本当に民間には宣伝していないのだろう。確かに名を上げるには貴族に、取り入る方が簡単だからだ。

「ありがたい情報だ、今度早速行くことにさせてもらう。それで、今日はどんな依頼があるのだろうか?」
「ええと……急ぎなのは、氷雪峠でアイスドラゴンの目撃情報があったので、それの調査依頼ですかね」

ギルドのお姉さんは書類をチラチラ見ると、俺たちにも見えるように紙を机の上に置いた。

「あそこはいつも雪が吹雪いているから視界が悪い。本当にアイスドラゴンなのか?」
「実はまだ調査が済んでいないんです。あそこは視界が悪いうえに遭難しやすく、高ランクの冒険者にお願いするしかなくてですね……」

黙って聞いていたダンは机の用紙を掴み、じっと内容を確認すると口を開いた。

「つまりは俺たちに調査ついでに討伐できるならして欲しいって事だな」
「……そういう事になりますね」
「なら災害になる前に対処した方がいいな。ダン時間がない、すぐに向かおう」

立ち上がりすぐに動ける準備をする。
俺は時計を確認し、陽が沈むまでの時間を考えていた。

「え!今から向かうんですか!?」
「今日やらなくては次は来週になってしまうからな。アーマードラゴンを納品したらすぐに向かわせて貰う」
「でしたら少しお待ち下さい!氷雪峠用のマントぐらいはお貸しできますし、すぐに納品所にお持ちしますから!!」

そう言いながらお姉さんは勢いよく立ち上がり、部屋を飛び出していったのだった。
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