上 下
20 / 110
第二章 錬金術師編

17、裏技!ドロップアイテム(前編)

しおりを挟む

素材集めから帰ってきて3日後、ようやく活動できるぐらい調子が良くなってきた俺は、今日こそある事をしようとベットから起き上がろうとした。

「おはようございます。まだ起き上がらずじっとしていて下さい」

しかし挨拶してきたライムに肩を掴まれ阻止されてしまう。そして素早くオデコにスライム感触が……。
多分、最近日課の検温をするためにオデコにチューされたんだと思う。

慣れと言うものは怖いもので、その素早い動作で簡潔に行われる行動に、俺は何も思わなくなってしまった。

「平温ですね。身体の寒さ、暑さにも異常は無さそうですね」
「ああ、大丈夫だ。それで今日は少しなら外に出てもいいか?」
「そうですね……もう少し様子見したら私が抱えていきましょう」

まだ本調子ではないので、それぐらいは許容しなくてはならないとわかってはいても、少し抵抗感が出てしまう。

「いや転移で向かうし、ついたら俺は座ってるから抱えなくても……」
「いえ!またいつ体調を崩されるかわかりませんし、それに接触していないと気づけない事もあるはずですから。それを許可して頂けませんと、スライム牧場には連れて行けません」

そこまで言われたら俺は拒否する事なんて出来ずに、大人しく従う事にした。



今日、俺が今から向かうのは『スライム牧場』だ。
俺が隔離されている宮の裏手にある森に、コッソリと作り上げた牧場である。

経緯としては、ライムが余りにもポンポンスライムを生み出すし、そのスライム達が更にスライムを生み出すので取集がつかなくなり、とりあえず放牧する事に決めた事から始まっている。


そして前にも言った通り、この世界の魔物や生物の起源はほぼスライムである。
そしてスライムは進化する。それもある日突然光だし、全く別の個体へと変わることがあるのだ。

この牧場を始めてから、進化したスライムの観察、そして危険な魔物に進化した場合、即座に討伐するなどをしている。
まあ一応ここは王宮内なので、こんなところで魔物が暴れたら大問題だからな。


「久しぶりに来てみたが……ちょっと増えすぎじゃないか?」

俺はライムに抱えられて、スライム牧場を見渡す。
前来た時に比べたら2倍ぐらいスライムがいるし、生き物の種類も段違いで多く見える。

「一応我々スライムは増えてもすぐに倒される、超弱小モンスターという扱いですからね。増えるのは早いですよ」
「でもこれ以上増えたら流石に他の宮にバレるんじゃないのか?」
「では、今すぐ間引きします」

そう言って身体から武器を出すライムに、魔物やスライム達が逃げようと後退する。
びっくりした俺は慌ててライムの服を掴んだ。

「待て待て!こいつらだって一緒にやってきた仲だろ、他に使える事があるかもしれないし、別に殺さなくてもいいだろう!?」
「主、勘違いをされているようですが、私は別に殺しませんよ?」
「へ?」

熱弁しかけたのにただの勘違いで、俺は顔が熱くなるのがわかる。
じゃあ、その武器なんなの?とは更に恥をかきそうで聞けない。

「この牧場では主を主人だと認識したもの、あるいは主の役に立ちそうな魔物以外、私が取り込もうかと考えておりました」
「取り込む?ってライムが?」
「はい。私は一応スライムですので、取り込んだ魔物の能力を吸収する事が出来ます。私が主を守る為には強くなる必要がありますから」

ようは育てて魔物に進化したスライムをまた取り込んで、ライム自身の経験値にしていると……。
よくわからなくて、なんだか育成ゲームを見ている気分になってしまう。

「よくわからないけど、ライムに任せる」
「承りました。ところでこちらに来た目的は素材ですよね?でしたらあちらに保管庫を作りましたので、確認しにいきましょう」

実は進化したスライムが凶暴な魔物に進化した場合、その場で討伐している。そうすると自然と素材が手に入るわけで、その素材をどうしようかと悩んでいたところだった。


保管庫にたどり着いた俺達は、薄暗い部屋に灯りをつけて中を見回した。

「おー、凄い大量にあるなぁ。これは見るのも大変そうだけど……」
「一緒にお探ししますので頑張りましょう。ただし疲れた場合はすぐに言ってくださいね」

俺は頷くと、ライムに床へ下ろしてもらい部屋をうろつく。
そして今必要な素材を思い出す。

欲しいのは光のマテリアル、大黒蛇の皮、白蜂の針、鈍色の魔石だ。
マテリアルと、魔石は良く出るからあると思う。
そして大黒蛇は少し前に牧場で暴れたとライムが言っていた記憶があるから探せばあるはずだ。

問題は白蜂の針か……。とりあえず探してから考える事にしよう。
そう思い、俺は部屋を行ったり来たりすることになるのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

彼の至宝

まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...