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二章
130、スライム神(ウル視点)
しおりを挟むとあるスライム説得話をウル視点で2話続きます。
これが終わればエロです!
ー ー ー ー ー
俺がコイツと会うのはこれで3回目だ。
しかも今は俺より上位の存在になってしまった為、俺はどう接するべきか少し悩んでいた。
その間にダンはその男と話始めたのだった。
「おー、よく来たな」
「ダン、私を呼び出すとはそれ程大事な用なのでしょうね?」
「ああ、俺達にはとても大事な事だ。そして今回お前に頼み事があるのは俺じゃない、この男だ」
そう言ってダンは俺を指さした。
男は俺をチラリと見ると、呆れるように言った。
「……何処かで見た事があると思ったら、ただのクソ悪魔ではないですか」
そういえばコイツって口が悪い奴だったと思い出した俺は、悩むのが馬鹿馬鹿しくなり普通に話す事にしたのだ。
「うん、どうやら君は全く変わってないみたいだね」
そう嫌味を返した俺の前には今、色取り取りのスライムが溢れていた。そしてその声は、真ん中に鎮座する青い通信スライムから聞こえていたのだ。
因みに通信スライムとは、離れている相手の姿を映し話す事ができる便利なスライムの事だ。
その為、目の前にいる青いスライムには先程から一人の人物が映っていた。
ライム色の髪に、ライム色の瞳。全てがライム色のこの男は見た目は確かに人型だが、れっきとしたスライムである。
彼はスライムのライム。
俺の記憶だと昔はイルの従魔だったはずだけど、色々あって現在はこの国の守護神であるスライム神として、神殿に引きこもっている。
そして俺とはスライム神になる前に、少し助言をしただけの関係なのでほぼ赤の他人と言えるだろう。
しかし今現在のコイツは、スライム神と言う名でイルを監視するただの変態としか俺は思っていなかった。
そしてライムも、俺のことをただのクソ悪魔としか認識していないようだった。
「……姿が変わろうが、私は私です。ですから貴方をクソ悪魔と呼ぶ事もおかしくない筈です」
「うーん、それはおかしいよね。だって俺は君と最後に会った時に、最高の助言をしてあげたと思ったんだけどもう忘れちゃったのかな?」
「……そんな事もあった気がしますが、それは過去の話です。私はヒトとは違いスライムですから、過去の事を全く引きずりません」
スライムである彼は人とは全く違う感性で生きている為、会話が成り立たない事が多い。
だけど俺も似たようなタイプなので、気にせずに話を続けていく。
「別に俺は感謝しろと言ってる訳じゃないんだよ?もう少し過去の話で盛り上がってもいいんじゃないかと思ってさ?」
「いえ、そんな無駄話をする時間はありませんので。それと貴方は私に何か頼みたい事があったようですが、私はイルレイン様以外の願いを聞くつもりはありません。ですからすぐにでもお引き取りください」
どうもイル絶対主義のスライムは中々手強そうだ。
それなのに今回は俺1人で交渉するしかない。それは俺の横にいるデオが、先程からライムの神々しさに当てられたのか驚いたままずっと固まっているからだ。
ここはデオとイルの為に、俺は嘘をついてでも頑張るしかないか……。
そう思っていると、俺の横で成り行きを見守っていたダンが口を挟んできたのだ。
「おい、どうすんだよ。お前に言われて無理矢理ライムを呼び出したけど、これじゃあ話し合いも出来ないんじゃねぇか?」
「いや、そこは大丈夫。だって彼にはひとつだけ弱点があるんだから、ここは俺に任せてよ」
そうダンに返したのに、何故か俺の言葉に反応したのはライムの方だった。
「私に弱点……それは私も気になりますので、教えて頂けませんか?しかしそれがくだらない事でしたら、私はすぐにイルレイン様の監視に戻る事にします」
まさかライムがその話に食いつくとは思っていなかった俺は、これが話に引き込むチャンスだと考えたのだ。
確かにライムは常に無表情で何を考えているのかわらないけど、ライムにだって弱点はある。
それは、イルレインに関わる全て───。
つまりライムはイルの話題なら絶対に耳を貸してくれる筈であり、だから俺はイルを活用した『ライムへ頼み事作戦』を開始する事を決めたのだった。
「今回、ライムへ頼み事をするのは俺じゃないんだよね」
「何の話ですか?先に私の弱点を……」
俺はライムの質問を強引に遮って、そのまま話を進める。
「実は君に頼み事をするのは、本当はイルなんだけど……ライムはイルからのお願いが気にならないのかな?」
「……貴方は一体何を言い出すのです。もしそれが本当の話だとしても、私はイルレイン様の口から直接聞いたことしか引き受けません……」
確かに自分でもおかしい事を言ってるのはわかっているし、イルからのお願いというのも勿論大嘘だ。
だけど既に弱点に釣られ始めたライムは、話が気になるのか何度も俺をチラリと見ていた。
ここまでは予想通りの反応だし、後は俺の話術次第ってところだね。
「それなら最後に一つだけ確認させてくれるかな。ライムはさ、イルが兄であるデオルライドに会いたがっている事を知ってる?」
「それは勿論……」
「知ってるなら教えてあげるんだけど、ここにいるデオルライドは今はまだイルに会いたくないと言ってるんだ。そうすると兄上に会えないイルはとても悲しむよね?」
「……貴方は先程から一体何が言いたいのです?」
「実はね。イルはデオルライドに会いたいと、ずっと密かに俺達へお願いをしていたんだよ。もしかするとそれは、君にも思い当たる節があるんじゃないかな?」
この話はありえない程、強引だった。
だけど今の俺には少しだけ勝算があったのだ。
寧ろそうじゃないと、こんな変な話は出来ないからね……。
そして実際にその効果はわかりやすく出ていた。
だって目の前にいるライムは思い当たる事があったのか、目を見開いて驚いていたのだから。
「……ま、まさかイルレイン様がしているあの奇行にはそんな意味が?いえ、確かにあの方ならあり得る事です。しかしこの私が全く気付かないなんてそんな事……」
ダンが少し前に、イルはある日課をしていると言っていたからカマをかけてみたんだけど、どうやらそれはライムが信じ込むほどの奇行だったらしい。
「でもこれは事実なんだよ。だから俺達がイルの為に何をしたらいいか、ライムはもうわかっているよね?」
「……勿論です。私はイルレイン様の為に、その方を脅してでも無理矢理連れて行く事にします。そうすればイルレイン様も喜んでくれる事でしょう」
そのあまりにも予想外の答えに、俺はガクリと肩を落としてしまったのだ。
「あのさ、君はイルの事になると手段が手荒過ぎるよね……」
「何故です?私にとってイルレイン様が喜んで下さるなら手段なんてどうでもよいのです」
流石ライム、考え方が過激過ぎる。
確かにデオとイルが会うのはとてもいい事だけど、このまま誕生日よりも早くイルの所に連れて行かれては困るのだ。
だってそれだとサプライズにならないからね。
しかも先程からダンが目線でどうにかしろと訴えてくるので、とても鬱陶しい。
俺はそれを無視しながら、ライムに言った。
「ねぇ、ライムはイルの為ならデオルライドの事もどうでも良いと、本当に思っているの?だってイルはデオルライドに関して、異常なくらいブラコンなんだよ?」
「それが何か?」
「ふーん、そっか。それならライムは、イルに嫌われてもいいんだ?」
「なっ!?」
その言葉に、ライムは今まで1番の動揺を見せたのだ。
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