上 下
132 / 163
二章

130、スライム神(ウル視点)

しおりを挟む

とあるスライム説得話をウル視点で2話続きます。
これが終わればエロです!

ー  ー  ー  ー  ー



















俺がコイツと会うのはこれで3回目だ。
しかも今は俺より上位の存在になってしまった為、俺はどう接するべきか少し悩んでいた。
その間にダンはその男と話始めたのだった。

「おー、よく来たな」
「ダン、私を呼び出すとはそれ程大事な用なのでしょうね?」
「ああ、俺達にはとても大事な事だ。そして今回お前に頼み事があるのは俺じゃない、この男だ」

そう言ってダンは俺を指さした。
男は俺をチラリと見ると、呆れるように言った。

「……何処かで見た事があると思ったら、ただのクソ悪魔ではないですか」

そういえばコイツって口が悪い奴だったと思い出した俺は、悩むのが馬鹿馬鹿しくなり普通に話す事にしたのだ。

「うん、どうやら君は全く変わってないみたいだね」

そう嫌味を返した俺の前には今、色取り取りのスライムが溢れていた。そしてその声は、真ん中に鎮座する青い通信スライムから聞こえていたのだ。
因みに通信スライムとは、離れている相手の姿を映し話す事ができる便利なスライムの事だ。
その為、目の前にいる青いスライムには先程から一人の人物が映っていた。
ライム色の髪に、ライム色の瞳。全てがライム色のこの男は見た目は確かに人型だが、れっきとしたスライムである。

彼はスライムのライム。
俺の記憶だと昔はイルの従魔だったはずだけど、色々あって現在はこの国の守護神であるスライム神として、神殿に引きこもっている。
そして俺とはスライム神になる前に、少し助言をしただけの関係なのでほぼ赤の他人と言えるだろう。
しかし今現在のコイツは、スライム神と言う名でイルを監視するただの変態としか俺は思っていなかった。
そしてライムも、俺のことをただのクソ悪魔としか認識していないようだった。

「……姿が変わろうが、私は私です。ですから貴方をクソ悪魔と呼ぶ事もおかしくない筈です」
「うーん、それはおかしいよね。だって俺は君と最後に会った時に、最高の助言をしてあげたと思ったんだけどもう忘れちゃったのかな?」
「……そんな事もあった気がしますが、それは過去の話です。私はヒトとは違いスライムですから、過去の事を全く引きずりません」

スライムである彼は人とは全く違う感性で生きている為、会話が成り立たない事が多い。
だけど俺も似たようなタイプなので、気にせずに話を続けていく。

「別に俺は感謝しろと言ってる訳じゃないんだよ?もう少し過去の話で盛り上がってもいいんじゃないかと思ってさ?」
「いえ、そんな無駄話をする時間はありませんので。それと貴方は私に何か頼みたい事があったようですが、私はイルレイン様以外の願いを聞くつもりはありません。ですからすぐにでもお引き取りください」

どうもイル絶対主義のスライムは中々手強そうだ。
それなのに今回は俺1人で交渉するしかない。それは俺の横にいるデオが、先程からライムの神々しさに当てられたのか驚いたままずっと固まっているからだ。
ここはデオとイルの為に、俺は嘘をついてでも頑張るしかないか……。
そう思っていると、俺の横で成り行きを見守っていたダンが口を挟んできたのだ。

「おい、どうすんだよ。お前に言われて無理矢理ライムを呼び出したけど、これじゃあ話し合いも出来ないんじゃねぇか?」
「いや、そこは大丈夫。だって彼にはひとつだけ弱点があるんだから、ここは俺に任せてよ」

そうダンに返したのに、何故か俺の言葉に反応したのはライムの方だった。

「私に弱点……それは私も気になりますので、教えて頂けませんか?しかしそれがくだらない事でしたら、私はすぐにイルレイン様の監視に戻る事にします」

まさかライムがその話に食いつくとは思っていなかった俺は、これが話に引き込むチャンスだと考えたのだ。
確かにライムは常に無表情で何を考えているのかわらないけど、ライムにだって弱点はある。
それは、イルレインに関わる全て───。
つまりライムはイルの話題なら絶対に耳を貸してくれる筈であり、だから俺はイルを活用した『ライムへ頼み事作戦』を開始する事を決めたのだった。

「今回、ライムへ頼み事をするのは俺じゃないんだよね」
「何の話ですか?先に私の弱点を……」

俺はライムの質問を強引に遮って、そのまま話を進める。

「実は君に頼み事をするのは、本当はイルなんだけど……ライムはイルからのお願いが気にならないのかな?」
「……貴方は一体何を言い出すのです。もしそれが本当の話だとしても、私はイルレイン様の口から直接聞いたことしか引き受けません……」

確かに自分でもおかしい事を言ってるのはわかっているし、イルからのお願いというのも勿論大嘘だ。
だけど既に弱点に釣られ始めたライムは、話が気になるのか何度も俺をチラリと見ていた。
ここまでは予想通りの反応だし、後は俺の話術次第ってところだね。

「それなら最後に一つだけ確認させてくれるかな。ライムはさ、イルが兄であるデオルライドに会いたがっている事を知ってる?」
「それは勿論……」
「知ってるなら教えてあげるんだけど、ここにいるデオルライドは今はまだイルに会いたくないと言ってるんだ。そうすると兄上に会えないイルはとても悲しむよね?」
「……貴方は先程から一体何が言いたいのです?」
「実はね。イルはデオルライドに会いたいと、ずっと密かに俺達へお願いをしていたんだよ。もしかするとそれは、君にも思い当たる節があるんじゃないかな?」

この話はありえない程、強引だった。
だけど今の俺には少しだけ勝算があったのだ。
寧ろそうじゃないと、こんな変な話は出来ないからね……。
そして実際にその効果はわかりやすく出ていた。
だって目の前にいるライムは思い当たる事があったのか、目を見開いて驚いていたのだから。

「……ま、まさかイルレイン様がしているあの奇行にはそんな意味が?いえ、確かにあの方ならあり得る事です。しかしこの私が全く気付かないなんてそんな事……」

ダンが少し前に、イルはある日課をしていると言っていたからカマをかけてみたんだけど、どうやらそれはライムが信じ込むほどの奇行だったらしい。

「でもこれは事実なんだよ。だから俺達がイルの為に何をしたらいいか、ライムはもうわかっているよね?」
「……勿論です。私はイルレイン様の為に、その方を脅してでも無理矢理連れて行く事にします。そうすればイルレイン様も喜んでくれる事でしょう」

そのあまりにも予想外の答えに、俺はガクリと肩を落としてしまったのだ。

「あのさ、君はイルの事になると手段が手荒過ぎるよね……」
「何故です?私にとってイルレイン様が喜んで下さるなら手段なんてどうでもよいのです」

流石ライム、考え方が過激過ぎる。
確かにデオとイルが会うのはとてもいい事だけど、このまま誕生日よりも早くイルの所に連れて行かれては困るのだ。
だってそれだとサプライズにならないからね。
しかも先程からダンが目線でどうにかしろと訴えてくるので、とても鬱陶しい。
俺はそれを無視しながら、ライムに言った。

「ねぇ、ライムはイルの為ならデオルライドの事もどうでも良いと、本当に思っているの?だってイルはデオルライドに関して、異常なくらいブラコンなんだよ?」
「それが何か?」
「ふーん、そっか。それならライムは、イルに嫌われてもいいんだ?」
「なっ!?」

その言葉に、ライムは今まで1番の動揺を見せたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忌子は敵国の王に愛される

かとらり。
BL
 ミシャは宮廷画家の父を持つ下級貴族の子。  しかし、生まれつき色を持たず、髪も肌も真っ白で、瞳も濁った灰色のミシャは忌子として差別を受ける対象だった。  そのため家からは出ずに、父の絵のモデルをする日々を送っていた。  ある日、ミシャの母国アマルティナは隣国ゼルトリアと戦争し、敗北する。  ゼルトリアの王、カイは金でも土地でもなくミシャを要求した。  どうやら彼は父の描いた天使に心酔し、そのモデルであるミシャを手に入れたいらしい。  アマルティナと一転、白を高貴な色とするゼルトリアでミシャは崇高な存在と崇められ、ミシャは困惑する。

オーリの純心

シオ
BL
【軍人×革命で打倒された国の王子】 ◆ 年上×年下 ◆ 王子を敬愛する軍人×傷付いた王子 ◆ 序盤に暴力(性的表現含む)表現有り 《予告無くR18表現が出てくるので、18歳以下の方は閲覧をお控え下さい》 18世紀ヨーロッパ風の世界観。王国の第四王子であったオリヴィエは、王朝打倒の革命によって幸福な生活を奪われる。果てしない暴力を受け傷ついたオリヴィエと彼を守りたいと願う軍人、テオドール。

死に戻りオメガと紅蓮の勇者

渡辺 佐倉
BL
オメガであることが分かったユーリは屋敷で軟禁されて暮らしていた。 あるとき、世界を救った勇者と婚約が決まったと伝えられる。 顔合わせをした勇者は朗らかでとてもやさしい人で…… けれどアルファ至上主義であるこの国の歪みが悲劇を生む。 死んだと思ったユーリは気が付くと性別判定の儀式の前に逆行していることに気が付いたが…… 一度目の人生で引き離された二人が二度目の人生で幸せをつかむ話です。 オリジナル設定のあるオメガバース異世界です。 タイトルの通り死に戻りの物語です。逆行前は不幸な話が続きますのでご注意ください。 勇者と言ってますがこの世界の勇者は魔法使いです。 後半にラブシーンが入る予定なのでR18としています。

この行く先に

爺誤
BL
少しだけ不思議な力を持つリウスはサフィーマラの王家に生まれて、王位を継がないから神官になる予定で修行をしていた。しかし平和な国の隙をついて海を隔てた隣国カリッツォが急襲され陥落。かろうじて逃げ出したリウスは王子とばれないまま捕らえられてカリッツォへ連れて行かれて性奴隷にされる。数年間最初の主人のもとで奴隷として過ごしたが、その後カリッツォの王太子イーフォの奴隷となり祖国への思いを強めていく。イーフォの随行としてサフィーマラに陥落後初めて帰ったリウスはその惨状に衝撃を受けた。イーフォの元を逃げ出して民のもとへ戻るが……。 暗い展開・モブレ等に嫌悪感のある方はご遠慮ください。R18シーンに予告はありません。 ムーンライトノベルズにて完結済

βのくせに巣作りしてみたら

ぽぽ
BL
 αの婚約者がいるβの瑛太。Ωでないことを気にしているが、婚約者は毎日愛を囁いてくれるため満足していた。  しかし、ある日ふと婚約者が「巣作りって可愛いよね」と話しているのを聞き、巣作りをしてみた。けれども結局恥ずかしくなり婚約者が来る前に片付けようとしたが、婚約者が帰ってきてしまった。   ━━━━━━━━ 執着美形α×平凡β 表紙はくま様からお借りしました。 https://www.pixiv.net/artworks/86767276 R18には☆を付けてます。

できそこないの幸せ

さくら怜音
BL
溺愛・腹黒ヤンデレ×病弱な俺様わんこ 主人公総愛され *** 現役高校生でありながらロックバンド「WINGS」として地道に音楽活動を続けている、今西光と相羽勝行。 父親の虐待から助けてくれた親友・勝行の義弟として生きることを選んだ光は、生まれつき心臓に病を抱えて闘病中。大学受験を控えながらも、光を過保護に構う勝行の優しさに甘えてばかりの日々。 ある日四つ葉のクローバー伝説を聞いた光は、勝行にプレゼントしたくて自分も探し始める。だがそう簡単には見つからず、病弱な身体は悲鳴をあげてしまう。 音楽活動の相棒として、義兄弟として、互いの手を取り生涯寄り添うことを選んだ二人の純愛青春物語。 ★★★ WINGSシリーズ本編第2部 ★★★ 高校3年生の物語を収録しています。 ▶本編Ⅰ 背徳の堕天使 全2巻 (kindle電子書籍)の続編になります。読めない方向けににあらすじをつけています。 冒頭の人物紹介&あらすじページには内容のネタバレも含まれますのでご注意ください。 ※前作「両翼少年協奏曲」とは同じ時系列の話です 視点や展開が多少異なります。単品でも楽しめますが、できれば両方ご覧いただけると嬉しいです ※主人公は被虐待のトラウマを抱えています。軽度な暴力シーンがあります。苦手な方はご注意くだださい。

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜

鏑木 うりこ
BL
シメジ以下と言われ死んでしまった俺は気がつくと、秋の森でほんわりしていた。  弱い毒キノコ(菌糸類)になってしまった俺は冬を越せるのか?  毒キノコ受けと言う戸惑う設定で進んで行きます。少しサイコな回もあります。 完結致しました。 物凄くゆるいです。 設定もゆるいです。 シリアスは基本的家出して帰って来ません。 キノコだけどR18です。公園でキノコを見かけたので書きました。作者は疲れていませんよ?\(^-^)/  短篇詐欺になっていたのでタグ変えました_(:3 」∠)_キノコでこんなに引っ張るとは誰が予想したでしょうか?  このお話は小説家になろう様にも投稿しております。 アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会に小話があります。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

処理中です...