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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!
17、明日の予定
しおりを挟むウルは後片付けを終わらせると、ベットからいまだに動けない俺を気遣うように、軽く頭を撫でてきた。
確かにその手はとても優しかった。
それはまるで、恋人に対しての行為に錯覚してしまいそうなほどに……。
でもこれは全部イルに対してだから、俺にじゃないから……喜んじゃだめだ。
そう思い撫でるのをやめてほしくなった俺は、ウルに対して嫌そうな顔をする。
そんな俺を見て、フッと笑ったウルは頭を撫でるのをやめて、予定を聞いてきたのだ。
「ウル、明日はどうするの?」
「明日は……冒険者ギルドに行こうかと思ってる」
「デオ、冒険者になることにしたんだね~」
「べ、別にウルに言われたからじゃない。それが効率がいいと思ったから……っ!ってどこ触ってるんだ!」
人が話していると言うのに、ウルは突然俺のお尻を撫で始めたのだ。あれが中に入っているせいなのか、触られるだけで少し感じてしまい撫でられるたびにピクッと反応してしまう。
「明日行くのはやめにしない?」
「なんでだっ……」
「だって少し触るだけでこんな風になっちゃうんだよ?大丈夫なの?」
「それはウルが触らなければいい話だろ……」
俺はウルの手を尻から剥がすために、その腕を掴もうとして逆に手を握られてしまう。
「ふーん、それともデオはそういうプレイが好きなのかな?」
「死んでもありえないから変な事を言わないでくれ!」
「一応心配だから一緒についていくけど、どうなっても俺は知らないからね?」
全部ウルのせいなのに、何故かいい人みたいに聞こえるのは何故なんだ……。
「わかった、自分でどうにかする」
「でも、変な人には着いていっちゃダメだよ?こんなエッチなもの着けてるってバレたら、すぐにお持ち帰りされて美味しく食べられちゃうからね」
「俺みたいな男に発情するやつは、お前ぐらいだろ?」
「もう今日のこと忘れたのかな?本当、イケナイ子だ」
「いっぁ!!」
そう言って、パチンとウルが俺の尻を軽く叩いた。
その振動が俺の中にまた直に伝わってしまう。
「デオ、ごめんなさいは?」
「ごめん、なさい」
「俺はこれでも心配して言ってるんだから、気をつけてよね~」
なんか納得いかないけど、今日変な男に連れてかれそうになったのは事実だ。
それに同じような事になったら、またウルにお仕置きされてしまうかもしれないのだ、行動には十分注意しよう。
「じゃあ、明日ギルドに長居しなくて済むように、この国の冒険者の仕組みについて俺が教えてあげるよ!」
「確かに、俺もこの状態で長居したいわけではないからな……それは助かる」
お礼を言う俺を見て目を細めて笑うウルは、俺の手を離すと冒険者ギルドの話をしはじめた。
「この国の冒険者ギルドでは、下級、中級、上級、超級、神級の5つにクラスが別れているんだよ」
まさかこんな所にも神に関わる文字が出てくるとは……神への憧れがこんなところにも影響しているということか。
「最初は下級からって事で良いんだな?」
「そうだよ。そしてもう一つ、そのクラスとは別にマスタークラスと言う物があって、まあ一つのものを極めた人に送られるクラスの事だね。そのクラスを手に入れれば貴族にだってなる事ができるらしいよ?」
「平民からしたら夢みたいな話と言う事か……」
「俺達には関係ない話だよね~」
どうでも良さそうに言うウルを見て、こいつのクラスはまさか神級とかじゃないだろうなと、気になってしまった。
「ウルは、どのクラスなんだ?」
「そんなの神級に決まってるじゃん!」
「へ、へぇー」
ウルが強いのはわかっているけど、やはり普通じゃ無かったんだな……そしてこれが上位種の強さか。
父上がその存在を生み出そうとしたのが、少しわかる気がしてしまう。
「冒険者になったら、あとはクラスごとに分かれている依頼書を掲示板から探し出して、受付に持っていくだけ。それはどこの国でも対して変わらないね」
「ウルは色んな国に行った事があるんだな」
「色んな国に行ったというか、追い出されたというか……」
追い出された……!?
ウルは悪魔とはいえ、一体何をやらかしたんだ?
「追い出されたといっても大した事はしてないよ。俺って少し強過ぎるでしょ?それが問題だった場所があっただけなんだ~」
そう話すウルは、なんだか少し寂しそうに見えた。
だから前にウルが『俺って寂しがり屋だから~』なんておちゃらけて言っていたけど、それはあながち間違っていないのかもしれない。
「よし、話はこのくらいで充分だよね?」
「え?そうだが、ウル何処か行くのか?」
いきなり立ち上がったウルを俺は見上げていた。
こんな時間から出かけるなんて……また前のような女の子がいるお店だろうか?
「少し寂しくなっちゃったからね、一人でお酒飲んでくるよ」
「なら、俺も……」
「ダメだ!デオは今、ここに何入れてるのかわかってるの?そんな状態でお酒なんて飲んだら、エロ親父に何されるかわかったもんじゃないんだよ!」
俺の肩を掴んで言うウルは、真剣に言っているのだと思う。
でも俺は、こんなゴツい男にそんなことしてくる人が本当にいるのだろうか?と、首を傾げてしまう。
「……大袈裟過ぎないか?」
「はぁ、デオにはもう少し危機感を持って欲しいよ。これ以上俺に何かされたくないなら、今は大人しくしてくれない?」
そう言われた瞬間に、中の振動がまた強くなったのがわかり、声をあげてしまう。
「ぁっ!まっ、まってなんで!……振動、強くすんなぁっ」
「デオがわかってくれないからだよ。今日はここに残る、良いね?頷くまでどんどん強くしてっちゃうよ?」
「っえぁ!?わかった…わかったからぁ、弱くしろっ!!」
そう叫んだ俺を見て、ウルはニコリと笑いながらそれを弱めてくれた。
「わかってくれてよかった。すぐに決断してくれなかったら振動強いまま、デオを放置して行くところだったよ?」
なんて、恐ろしい事を言ってくるウルに俺は少し青ざめる。
それなのに俺は、ウルが何処に行くのか気になってしまい、本当は送り出したくなかったのだ。
「わかったから、早く行ってこい。何処に行くのか知らないけど……」
本当は女の子のところなんだろ、なんて俺は聞くこともできずに俯いてしまう。
「さっきも言ったけど飲みに行くだけだよ?すぐに戻ってくるけど、先に寝てていいからね。それに今日はデオに結構無理させちゃったし……」
「やった本人がそれを言うのか?」
「ふふっ、それもそうだね。じゃあ俺は行ってくるから。デオ、おやすみ」
そう言って、ウルは宿屋から出て行った。
本当にお酒を一人で飲むと思えなかった俺は、きっとウルは女のところに行ったのだと、少し胸が痛んでしまったのだ。
でもその気持ちに納得がいかない俺は嘆いていた。
何で身代わりの俺が、こんな気持ちにならないといけないんだよ……。
その心を押し殺すように、俺は眠りについたのだった。
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