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一番鶏は夜明けを告げる *
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俺の頬に触れながら、ユージーン様が口を開いた。
「ティトは、私のことが一番に好きなのだろう?」
「それはっ! もちろんです、死ぬまでずーーーっと、ユージーン様をお慕いしています!!」
うん、といつも通りユージーン様が頷く。
「私も、お前のことだけを愛しているのは……残念ながら、伝わっていなかったようだが」
「伝わって……? 俺、え……俺??」
ぶはは、とランス様が変な笑い声を出して、侍従さんに「お早く!」と言われながら出て行ってしまった。そういえば、ユージーン様の新しい侍従さんたちはどこにいるのだろうか。
「だって。ユージーン様の、侍従はクビだって……」
「伴侶として迎える相手に、侍従をさせていたらおかしいだろう。臣下ではなく、対等の相手に。……痩せてしまったな。ようやく起きているティトに会えた」
寝台に下ろしてもらえて、ほっとしていると、ユージーン様の指が俺の首筋に触れてきた。そこからまた、一気にゾクゾクとした熱が広がり始める。
「ジーン、さま」
「煽るな。今抱いたら、子ができてしまうかもしれない」
ユージーン様の指が、俺の頬に触れてくる。そのくすぐったさに笑いながら、ユージーン様のお子、というところに耳がしっかりと反応した。
「ユージーン様のお子さまなら、ぜったいに可愛いです……!」
さっきまで酔っていた感覚とは、違う。酔いは醒めたのに、ユージーン様のすぐ傍にいると、頭がぼうっとしてきて――残っていた体の火照りが、全身の疼きへと変わっていく。それでも、ユージーン様の言葉尻だけを掴んでニコニコと笑いかけると――ユージーン様が真剣な表情になった。
「ティトが、私の子を……」
「ユージーン様のお子さまに、早くお会いしたいです」
そうか、とユージーン様が微かに呟いた。それから端整なユージーン様の顔が近づいてきて、何度も口づけをされて――もっと口づけてほしくて、酔いがまだ残っているのか、俺は確実に強欲な人間になっていた。
「……気持ちいい、です。ジーンさま、もっと……ほしい」
「ティト。舌を出して」
舌。それがどうなるのだろう、と深く考えもせず口を開くと、体温を宿す濡れたものが、俺の口の中を侵し始めた。
「……んっ」
逃げようとすると、すぐに口腔の中で捕らえられ、恍惚とさせられていく。
「――ティト」
深い口づけの終わりとともに、ユージーン様が俺の名前を囁く。
「……ジーンさま、おれ……へんです」
「私の前でなら、変になっても良い」
ほんとう? と尋ねながらも、疼く体に触れて欲しくて泣きそうになる。「たくさん、さわってほしくて――」やっぱり、変ですよね。そう言いたかった俺の口は、またしても奪われた。
「すご……、きもちよくて……」
ユージーン様の唇の動きにいちいち翻弄されながらも、うっとりとしてしまう。でも、変になっても良いって言ってもらえたから。俺自身や、あちこちに口づけられたり触れられているとますます、自分が強欲になっていく。
「ジーンさまに、もっとくっつきたい、です」
そう言ったら、強く抱きしめられた後に開かされた両の脚の間を――変な声が出てしまうまでたっぷりと濡らされた後孔に、硬くて熱いものが穿たれた。
「……やっ、あ……ああっっっ!!」
「ティト、良い子だ」
ゆっくり、でも確実に俺の中を押し入ってくる。ぴたりとユージーン様の身体と繋がったのだと、分かった瞬間に――深く口づけられて、あまりの気持ち良さに泣き喚きそうになる。俺が泣きそうになるところを確かめるように、ユージーン様が腰を打ち付けてくる度に勝手に涙が零れていった。
「あ……っ、おれのおくまで……ジーンさま、が……」
「すべてが可愛くて……おかしくなりそうだ」
口づけだけじゃなくて、ユージーン様の熱いものが、俺の中に入り込んで来るたびに感じる快楽に、身体が悦ぶ。愛されている――そう感じそうになってしまうくらいに、たくさん触れられて、たくさん交わって――ユージーン様が俺の最奥に放ったのを感じながら、俺もまた、自分が強い愉悦と共に絶頂に達するのを感じていた。
***
目が覚めたら、実家にある自分の部屋で、俺は寝ていた。
(夢……にしては、ものすごく生々しかった……)
何度も、俺の名前を呼ぶユージーン様に抱かれていた。抽挿のたびにぴたりと身体がくっついた感触を思い出して、自分自身がぴくりと反応しかけて慌てる。
恐る恐る、着た覚えのない寝衣を開くと、見たこともない赤いあざがあちこちに散らばっていた。そういえば何度も、ユージーン様にきつく肌を吸われた。その時の痕なのかな、と思ったら――顔が一気に赤くなる。やはり、あれは……現実で良いのだろうか。
(でも、これじゃ……俺だけが嬉しいような……。お情けをいただいたってことなのかな)
俺の身体に残る、ユージーン様の痕に一人で身悶えたその時。
「ティトさんっ!! ティトさんーーー!!??」
足音は上品に、しかし鬼気迫る勢いで近づいてくる叔母の声に、俺は慌てて自分の寝衣を元に戻した。ノックもそこそこに、叔母が勢い込んで俺の部屋に転びかけながら入ってくる。俺がぽかんとしていると、「たたたっ、大変なことが……!」と叔母が叫んだ。
「叔母上、落ち着いて」
そんな叔母の後ろから、兄上も顔を出す。錯乱中の叔母上とは正反対で、兄上はいつもどおりのんびりだ。俺と同じ、ふわふわとした兄の青髪が、叔母の大きな動きで起こった風によって揺れている。
「ゆゆゆっ、ユージーン殿下が……っっ、……おおお、お迎え……っ!! こっ、こここっ、ティトさん、あなた……殿下と婚約って!? 信じられないわ……私の一族から、王族……こここ、ここっ、けけけっこん」
「叔母上、顔もお言葉もニワトリになりかけていますから、とにかく落ち着いて、人に戻ってください」
兄上が言う通り、こここ、こんやく……こここ、と叔母はまだニワトリになっている。叔母に声をかけてから、兄上は俺に近づくと「急いで着替えをしないとね」と穏やかに笑いかけてきた。
「ティト、良かったね。大好きなユージーン殿下と、末永くお幸せに」
それから、優しく髪を撫でられて――俺は必死に頷くことしか、できなかった。
「ティトは、私のことが一番に好きなのだろう?」
「それはっ! もちろんです、死ぬまでずーーーっと、ユージーン様をお慕いしています!!」
うん、といつも通りユージーン様が頷く。
「私も、お前のことだけを愛しているのは……残念ながら、伝わっていなかったようだが」
「伝わって……? 俺、え……俺??」
ぶはは、とランス様が変な笑い声を出して、侍従さんに「お早く!」と言われながら出て行ってしまった。そういえば、ユージーン様の新しい侍従さんたちはどこにいるのだろうか。
「だって。ユージーン様の、侍従はクビだって……」
「伴侶として迎える相手に、侍従をさせていたらおかしいだろう。臣下ではなく、対等の相手に。……痩せてしまったな。ようやく起きているティトに会えた」
寝台に下ろしてもらえて、ほっとしていると、ユージーン様の指が俺の首筋に触れてきた。そこからまた、一気にゾクゾクとした熱が広がり始める。
「ジーン、さま」
「煽るな。今抱いたら、子ができてしまうかもしれない」
ユージーン様の指が、俺の頬に触れてくる。そのくすぐったさに笑いながら、ユージーン様のお子、というところに耳がしっかりと反応した。
「ユージーン様のお子さまなら、ぜったいに可愛いです……!」
さっきまで酔っていた感覚とは、違う。酔いは醒めたのに、ユージーン様のすぐ傍にいると、頭がぼうっとしてきて――残っていた体の火照りが、全身の疼きへと変わっていく。それでも、ユージーン様の言葉尻だけを掴んでニコニコと笑いかけると――ユージーン様が真剣な表情になった。
「ティトが、私の子を……」
「ユージーン様のお子さまに、早くお会いしたいです」
そうか、とユージーン様が微かに呟いた。それから端整なユージーン様の顔が近づいてきて、何度も口づけをされて――もっと口づけてほしくて、酔いがまだ残っているのか、俺は確実に強欲な人間になっていた。
「……気持ちいい、です。ジーンさま、もっと……ほしい」
「ティト。舌を出して」
舌。それがどうなるのだろう、と深く考えもせず口を開くと、体温を宿す濡れたものが、俺の口の中を侵し始めた。
「……んっ」
逃げようとすると、すぐに口腔の中で捕らえられ、恍惚とさせられていく。
「――ティト」
深い口づけの終わりとともに、ユージーン様が俺の名前を囁く。
「……ジーンさま、おれ……へんです」
「私の前でなら、変になっても良い」
ほんとう? と尋ねながらも、疼く体に触れて欲しくて泣きそうになる。「たくさん、さわってほしくて――」やっぱり、変ですよね。そう言いたかった俺の口は、またしても奪われた。
「すご……、きもちよくて……」
ユージーン様の唇の動きにいちいち翻弄されながらも、うっとりとしてしまう。でも、変になっても良いって言ってもらえたから。俺自身や、あちこちに口づけられたり触れられているとますます、自分が強欲になっていく。
「ジーンさまに、もっとくっつきたい、です」
そう言ったら、強く抱きしめられた後に開かされた両の脚の間を――変な声が出てしまうまでたっぷりと濡らされた後孔に、硬くて熱いものが穿たれた。
「……やっ、あ……ああっっっ!!」
「ティト、良い子だ」
ゆっくり、でも確実に俺の中を押し入ってくる。ぴたりとユージーン様の身体と繋がったのだと、分かった瞬間に――深く口づけられて、あまりの気持ち良さに泣き喚きそうになる。俺が泣きそうになるところを確かめるように、ユージーン様が腰を打ち付けてくる度に勝手に涙が零れていった。
「あ……っ、おれのおくまで……ジーンさま、が……」
「すべてが可愛くて……おかしくなりそうだ」
口づけだけじゃなくて、ユージーン様の熱いものが、俺の中に入り込んで来るたびに感じる快楽に、身体が悦ぶ。愛されている――そう感じそうになってしまうくらいに、たくさん触れられて、たくさん交わって――ユージーン様が俺の最奥に放ったのを感じながら、俺もまた、自分が強い愉悦と共に絶頂に達するのを感じていた。
***
目が覚めたら、実家にある自分の部屋で、俺は寝ていた。
(夢……にしては、ものすごく生々しかった……)
何度も、俺の名前を呼ぶユージーン様に抱かれていた。抽挿のたびにぴたりと身体がくっついた感触を思い出して、自分自身がぴくりと反応しかけて慌てる。
恐る恐る、着た覚えのない寝衣を開くと、見たこともない赤いあざがあちこちに散らばっていた。そういえば何度も、ユージーン様にきつく肌を吸われた。その時の痕なのかな、と思ったら――顔が一気に赤くなる。やはり、あれは……現実で良いのだろうか。
(でも、これじゃ……俺だけが嬉しいような……。お情けをいただいたってことなのかな)
俺の身体に残る、ユージーン様の痕に一人で身悶えたその時。
「ティトさんっ!! ティトさんーーー!!??」
足音は上品に、しかし鬼気迫る勢いで近づいてくる叔母の声に、俺は慌てて自分の寝衣を元に戻した。ノックもそこそこに、叔母が勢い込んで俺の部屋に転びかけながら入ってくる。俺がぽかんとしていると、「たたたっ、大変なことが……!」と叔母が叫んだ。
「叔母上、落ち着いて」
そんな叔母の後ろから、兄上も顔を出す。錯乱中の叔母上とは正反対で、兄上はいつもどおりのんびりだ。俺と同じ、ふわふわとした兄の青髪が、叔母の大きな動きで起こった風によって揺れている。
「ゆゆゆっ、ユージーン殿下が……っっ、……おおお、お迎え……っ!! こっ、こここっ、ティトさん、あなた……殿下と婚約って!? 信じられないわ……私の一族から、王族……こここ、ここっ、けけけっこん」
「叔母上、顔もお言葉もニワトリになりかけていますから、とにかく落ち着いて、人に戻ってください」
兄上が言う通り、こここ、こんやく……こここ、と叔母はまだニワトリになっている。叔母に声をかけてから、兄上は俺に近づくと「急いで着替えをしないとね」と穏やかに笑いかけてきた。
「ティト、良かったね。大好きなユージーン殿下と、末永くお幸せに」
それから、優しく髪を撫でられて――俺は必死に頷くことしか、できなかった。
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