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マルクトール王国編
131話 主人公、話し合うー5
しおりを挟む「次はアドラとエレーナだよ。」
シオンはエレーナの腕の中にいるアドラとエレーナの顔を見ながら、話す。
「アドラ、エレーナの特殊な事情は知っている。だが、エレーナはもう成人だ。いつまでもこのままではいけないって、アドラも分かっているはずだ。そして、エレーナ。アドラに表情がないのは、人形だからじゃない。君ができるだけ感情を出さないようにって日頃思っているから、アドラはこうなんだよ。」
エレーナは感情を出さないようにしてる?それって…。
「いいかい。人と関わる時、それはいい事ばかりじゃない。イヤな気分になったりもするだろう。でもそんな時に助けてくれるのは、パートナー精霊だ。世界で唯一、何があっても味方でいてくれる存在。パートナー精霊を否定することは、自分自身を否定することだよ。彼らは君たちの分身なんだから。」
シオンが全員の顔を見ながら、語る。
「アドラ、君は過保護過ぎる。エレーナが対人関係でイヤな思いをしないように、アドラが代わりに話をしているのは分かっている。でも一生そうやって過ごすの?このままだと、エレーナは誰とも人間関係を築くことができないよ。エレーナのことを思うなら、そろそろ過保護は卒業だよ。」
そう言われたアドラの顔が、落ち込んでいるように見える。
このままではいけないってアドラも分かっているからね。
「最後はタクミだ。」
えっ?僕?
僕とミライの関係は、なかなか良好だと思ってるけどな。
「君たちはまだお互いに成長途中だ。紋章システムの正しい使い方をパートナー精霊と共に学ぶことが、重要だ。」
成長途中!たしかにそうだ。
僕はミライをジッと見る。
そして、『ミライ、これからもよろしくね』と心から思ったのだった。
「このままじゃ話が進まないから、今日の話し合いは終了だよ。明日同じ時間に再開するから、それまでパートナー精霊とよく話をしてね。」
「っと、その前に。結論を出す時の鉄則を教えてあげる。この世界では、心に大きな負荷がかかることは決してしてはいけない。グールに取り憑かれて、怪異になってしまうからね。」
「そう。だから、アドラが言っていたことにも一理ある。結果が大きく変わってしまうものを決めるときには、多数決という方法は使ってはいけない。自分の考えが選ばれなかった人は、心に大きな負荷がかかってしまうからね。」
「では、どうしたらいいか?自分の考えの妥協点を見つけるんだ。」
妥協点?
「妥協っていうのは、相手に全て譲ることじゃない。お互いに譲り合い、合意できるポイントを見つけることだ。」
「何かを考えるときは、自分の案と共に、ここまでだったら譲れるっていうことまで考えるんだよ。」
「相手の考えを受け入れない人は、自分の考えも受け入れてもらえない!それをよく考えてね。」
「このことは、パートナー精霊とちゃんと絆が出来ている場合は、教えてもらえている情報なんだけどね。」
「「ということで、終了!」」
双子はそう宣言すると、僕達を強制的に神殿の外に出す。
みんな困惑した顔をしている。
そうだよな。急にパートナー精霊と話せって言われても困るよな。
それでも各自、動き出す。
その場でパートナー精霊と話す子もいれば、自分の宿泊所に戻る子もいる。
「ミライ、僕達はどうする?」
「あい!ミライはタクミが大好きだから、特に話すことないよ。昨日もいっぱい話したし。みんな、どうして話さないのかなぁ?楽しいのに。」
うん、そうだね!
パートナー精霊と話すって、とても楽しいし、心の安定につながる。あの子達も、ちゃんと話せるようになるといいけど。
「あっ、そういえば。リオンとシオンに聞きたいことがあったんだった。戻ってもいいかな?」
「あい!終了って言われただけで、戻ってきちゃダメって言われてないからね。いいと思うよ!」
僕とミライは、神殿の中に戻る。
「あれ?タクミ。戻ってきたの?」
「自分の宿泊所でゆっくりしてていいのに。」
双子が驚いた顔をしている。
「うん。ちょっと聞きたいことがあったからさ。前に言ってた問題児って結局誰のことだったのかなって気になって。」
「あぁ、それね。タクミは誰だと思う?」
「最初はショウゴかと思ったんだけど…。アランだね?」
「「正解~!」」
「あの子は、パートナー精霊との結び付きがほとんどない。このまま大人になるのは、ダメだよ。」
「ショウゴのパートナー精霊は、ショウゴの代わりに必死で謝ってた。あれはね。ショウゴを守ろうとしてるんだよ。」
「なるほどね。でもショウゴも問題だよね?感情が制御できないなんて。」
「別に問題ないよ。」
えっ?問題ないの???
「この世界では普通のことだよ。基本、獣人の血が濃い場合は血の気が多いからね。すぐ怒り出すんだよ。」
「じゃあ、ショウゴは…。」
「見た目は完全にヒト種だけど、好戦的な獣人種の血が入ってるよ。」
「そうなんだ!じゃあ、成人したら、ガンガルシア王国に行くのかな?」
好戦的なサーシャを思い出した僕は、ショウゴも討伐者を目指しているのでは、と推測する。
「「いや、それは無いと思うよ。」」
リオンとシオンが見事にハモる。
「なんで分かるの?」
「このエスティオに集まったメンバーには、もう一つ、気になる特徴があるからね。」
もう一つの特徴?
パートナー精霊との絆が未熟ってこと以外に何かあるのか?
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