133 / 247
マルクトール王国編
121話 主人公、エスティオに参加する
しおりを挟む僕達はいま、エスティオに参加するため、マルクトールの王宮の地下に来ていた。
参加者はここに集まって、全員で移動することになっている。
参加者は全部で7人。
ショートカットで愛嬌のあるフロム。
長身で長い黒髪が特徴のシェラ。
あまり背は高くなく、ちょっとぽっちゃりしているのはタツコ。
優等生って感じで、生真面目そうなアラン。
腕にフランス人形のアドラを抱いたエレーナ。
そして、ミライを左肩に乗せた僕。
僕達は、最後の1人を待っていた。
「遅いね。集合時間を過ぎてる。」
「パートナー精霊が注意するはずだから、遅刻なんてする子はいないと思うんだけど。」
リオンとシオンも不審そうだ。
そこに。
「わりーな。遅れて。」
最後の1人であるショウゴが現れた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
ショウゴの頭の横で、タツノオトシゴがフワフワ浮かびながら、謝罪している。
たっ、タツノオトシゴが浮いてる!
なんてシュールな映像!
「なんで遅れたの?理由は?」
リオンがショウゴに聞く。
「特に理由は無いな。なんとなく遅くなっただけだよ。」
ショウゴは悪びれずにそう答える。
なんとなくって!いいのかそれで!
「あっ、そうなんだ。」
リオンもなんでも無いことのように受け答えをする。
えっ?そんな返事でいいの?
そこは、遅れるなよ!とか注意するとこじゃないの?
「じゃあ、全員が集まったから、移動するよ。今回のエスティオは、宗教都市ザンザーラに行きます。その都市での問題を解決してもらうから、頑張ってね。ちなみに今回、監督官をするシオンだ。こっちは双子のリオン。僕達は手助けしないからね。」
そのシオンの言葉にショウゴが驚いている。
「お前、監督官だったのかよ。早く言えよ。同じ参加者だと思ったぜ。」
ショウゴがリオンを責めている。
「勘違いしたのは、そっちでしょ。見た目で判断するからだよ。」
「何だよ!オレが悪いって言うのかよ!」
ショウゴが怒り出す。
はぁ。遅刻はするし、すぐ怒り出すし。
ショウゴは問題児だな。
こんな子とチーム組むの?イヤだな。
そう思ったが、今さら帰ることもできず、仕方なく、みんなと共に転移扉を開けたのだった。
宗教都市ザンザーラは、マルクトールの王宮から数百キロ離れた場所にある都市である。
街の中心にはザーラ神を祀る神殿があり、そこから放射状に街が形成されている。
この神殿は1500年ほど前に建てられたらしい。ザーラ神は学問の神で、神殿にはたくさんの人が参拝に来ていたという。紋章システムができるまでは。
ザンザーラの近くの転移扉から、目的地まで歩く間に、僕はミライから基本的な情報をこっそり聞く。
「紋章システムができるまでは、アースのように学校に入るためや国の役人になるための試験があったからね。それに受かりますようにって祈りに来る人が多かったんだ。」
「あっ、そうか。紋章システムができて、そんな試験は無くなったから、この神殿に来る人は減ったんだね。」
「あい!そうだよ。」
他の参加者達も歩きながら、自分のパートナー精霊と話している。今から行く場所の情報を確認しているようだ。
うん。みんなしっかりしてるな。
さすが、もうすぐ成人の子達だ。
先頭を歩いているリオンとシオンが止まった。目的地に着いたようだ。
「はい、これがザーラ神の神殿だよ。」
リオンの前にあるのは、神社のような建物だった。なんだか厳かな雰囲気だ。
でも。
僕はこのザンザーラの街に入った時から感じている違和感が無くならない。
なんだ?この感じ…。
よく考える。
あっ!そうか!人が居ないんだ!
街の入り口から神殿まで歩いて来たが、誰とも会わなかった。
でも建物や道路は破損していない。
誰も住まなくなると家は朽ちるし、道路も整備されなくなるから、分かるはずだ。
どうなってるんだ?
だが僕の疑問はすぐ解消される。
「はい!じゃあ、この人からの話を聞いてね。今回のエスティオは、この人からの依頼を解決したら終了です。終了するまで帰れないから、頑張って解決するように!」
シオンの話が終わると、神殿から1人の老人が出てきた。
「依頼者のヤスナだよ。ここの最後の住人だ。」
最後の住人?
「ワシがヤスナだ。この神殿の神官をやっておる。王宮から来たっていうのはお前達か?まだガキではないか!こんなガキどもに何ができるというのだ!」
なに?なんか怒ってる?
すると、ヤスナの横に狛犬に似た精霊が現れて、「それは言わない約束ですよ。ヤスナ。あなたも納得したではありませんか」と、なだめる。
狛犬は僕達の方に向くと、一礼して話し出す。
「はじめまして、皆様。ヤスナのパートナーのチカゲです。詳しい説明は、私がします。」
とても礼儀正しい精霊だね。
いきなり怒り出したヤスナとは大違いだ。
「このザンザーラは歴史ある街です。ところが、100年ほど前から人が減り、数年前ついにヤスナ1人になってしまいました。」
ヤスナはこの街に1人で住んでるの?
この街は神殿を中心として半径1キロくらいはあると思うんだけど。それがすべて無人ってこと?
「紋章システムができるまでは、この街は賑わっていました。この神殿に代々仕える神官の家系が、この街を守ってきたからです。」
守ってきた?
でも今はヤスナ1人になった?
何があったんだ?
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~3巻が発売中!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
第四巻は11月18日に発送。店頭には2~3日後くらいには並ぶと思われます。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!
沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました!
定番の転生しました、前世アラサー女子です。
前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。
・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで?
どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。
しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前?
ええーっ!
まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。
しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる!
家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。
えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動?
そんなの知らなーい!
みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす!
え?違う?
とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。
R15は保険です。
更新は不定期です。
「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。
2021/8/21 改めて投稿し直しました。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~
鐘ケ江 しのぶ
ファンタジー
第15回ファンタジー大賞、奨励賞頂きました。
投票していただいた皆さん、ありがとうございます。
励みになりましたので、感想欄は受け付けのままにします。基本的には返信しませんので、ご了承ください。
「あんたいいかげんにせんねっ」
異世界にある大国ディレナスの王子が聖女召喚を行った。呼ばれたのは聖女の称号をもつ華憐と、派手な母親と、華憐の弟と妹。テンプレートのように巻き込まれたのは、聖女華憐に散々迷惑をかけられてきた、水澤一家。
ディレナスの大臣の1人が申し訳ないからと、世話をしてくれるが、絶対にあの華憐が何かやらかすに決まっている。一番の被害者である水澤家長女優衣には、新種のスキルが異世界転移特典のようにあった。『ルーム』だ。
一緒に巻き込まれた両親と弟にもそれぞれスキルがあるが、優衣のスキルだけ異質に思えた。だが、当人はこれでどうにかして、家族と溺愛している愛犬花を守れないかと思う。
まずは、聖女となった華憐から逃げることだ。
聖女召喚に巻き込まれた4人家族+愛犬の、のんびりで、もふもふな生活のつもりが……………
ゆるっと設定、方言がちらほら出ますので、読みにくい解釈しにくい箇所があるかと思いますが、ご了承頂けたら幸いです。
[完結]麗しい婚約者様、私を捨ててくださってありがとう!
青空一夏
恋愛
ギャロウェイ伯爵家の長女、アリッサは、厳格な両親のもとで育ち、幼い頃から立派な貴族夫人になるための英才教育を受けてきました。彼女に求められたのは、家業を支え、利益を最大化するための冷静な判断力と戦略を立てる能力です。家格と爵位が釣り合う跡継ぎとの政略結婚がアリッサの運命とされ、婚約者にはダイヤモンド鉱山を所有するウィルコックス伯爵家のサミーが選ばれました。貿易網を国内外に広げるギャロウェイ家とサミーの家は、利害が一致した理想的な結びつきだったのです。
しかし、アリッサが誕生日を祝われている王都で最も格式高いレストランで、学園時代の友人セリーナが現れたことで、彼女の人生は一変します。予約制のレストランに無断で入り込み、巧みにサミーの心を奪ったセリーナ。その後、アリッサは突然の婚約解消を告げられてしまいます。
家族からは容姿よりも能力だけを評価され、自信を持てなかったアリッサ。サミーの裏切りに心を痛めながらも、真実の愛を探し始めます。しかし、その道のりは平坦ではなく、新たな障害が次々と立ちはだかります。果たしてアリッサは、真実の愛を見つけ、幸福を手にすることができるのでしょうか――。
清楚で美しい容姿の裏に秘めたコンプレックス、そして家と運命に縛られた令嬢が自らの未来を切り開く姿を描いた、心に残る恋愛ファンタジー。ハッピーエンドを迎えるまでの波乱万丈の物語です。
可愛い子ウサギの精霊も出演。残酷すぎないざまぁ(多分)で、楽しい作品となっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる