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グランエアド王国編
100話 主人公、批評家を知るー2
しおりを挟む「私の批評は公開した通りよ。それ以上でも、それ以下でもないわ。説明することはない。」
ホンファは、冷静に応じる。
「そうですか。では、率直な意見を述べさせていただきます。まずこの批評は批評ではありません。ただの感想と憶測です。エアリーが王の力を使っているという証拠でもお持ちですか?証拠もないものを、あたかもそうであるかのように語り、批判するのは、ただの嫌がらせですね。」
ジークが淡々と話す。
「証拠なんて無いわ。でも、見れば分かるわよ。アレはいま公開されているどの技術でも再現不可能よ。」
「以前、ライブ会場で2人の男性のケンカを仲裁した時のことを聞きました。ホンファ、貴女が聡明で、本質を見抜く力があることは認めましょう。しかし世の中には、不思議な現象が山程あるのですよ。」
「もしそうだとしても、あの空中で歌う演出だけは、どの技術でも絶対に不可能よ。それとも最新の精霊工学かしら?でもそんな画期的な発明を公開しない発明家なんていないはずよ。」
「いないはず、ね。貴女の価値観で語ってはいけませんよ。世の中には色々な価値観の人がいるのだから。」
このジークの言葉にホンファの顔色が変わった。
「自分の価値観で語るのが、批評よ。そうでなければ、全てのものを批評できなくなるわ!」
少し興奮した様子で、言い返すホンファ。
冷静そうな感じだったのに、どうしたんだろう?
「そうですか。でも今回のエアリーに対する批評に関しては、納得できません。あれは、ただの批判です。自分が気になったところを指摘するだけなら誰にでもできます。
その人のためを思って、ダメなところ、悪いところを指摘してあげていると主張する人もいますが、それは本人に求められた時にだけするべき行為です。
こうした方が良くなるのに、というような代替案を言わない批判は、ただの悪口ですよ。
この世界で批評を公開するということは、エレメンテ中の人が見るということです。このような批評は、貴女の価値を下げるだけだと思いますね。」
「ジークってば、キツイね。」
2人のやり取りを見ていた僕は、隣にいるリオンとシオンに、こっそりささやく。
「んーっ、でもジークの言ってることは正しいよ。憶測で批評なんかしてはいけないよ。この世界では、批評は実名で、感想はペンネームでもOKっていうルールがあるけど、今では感想を言うのも実名で書き込む人が多いんだ。」
「そうだよ。ここにはひどい言葉で他人を侮辱する人はいないからね。でもアースにはいるでしょ?アイドルに、『観るに値しないから、すぐにやめろ!このブス!』とか、書き込む人。」
「えっ?そんな人いるの?」
「アースの匿名で書き込めるところなんて、これよりもっとひどいと思うよ。でも、この世界には、そんな人いないから!」
「この世界では、書き込む前にパートナー精霊が必ず忠告してくれる。本当にいいんですかってね。」
「成人する前に紋章システムの試用期間があるんだけど、その時に厳しく言われる注意事項がある。それは、『言葉はブーメランだ。自分が使った言葉はいつか必ず自分に返ってくる。それを分かって、発言しようとしてますか?』って。」
「試用期間に言葉の使い方を叩き込まれるから、紋章システムで言葉を公開する場合は、とても気をつけるようになる。一回公開したものは2度と消せないからね。」
「だからこの世界の人達は、公開されたものに対しての感想を言う時も、実名でするようになったんだよ。感想だけど責任を持って発言してますよってアピールするためにね。ペンネームで感想を書く人もいるけど、それってどういう人なんだろ?」
「好き過ぎて、実名じゃ感想も言えないんじゃない?」
「えっ?そんな人いるかな?」
「いるかもしれないじゃん!」
「えーっ、そうかなぁ。」
あぁ!また話が脱線してる。
「ところで、ホンファも言葉の重みは分かってるはずだよね?なのに、なんで今回はこんな批評をしたのかな?」
僕は話を元に戻すように促す。
「たしかに!ホンファっていつもは、愛のある批評してるのに。」
「愛のある批評?」
「うん。いつもは、批評する相手のことが好きだっていう情熱が文章から感じられるんだよ。だから、ここをこうした方がもっと良くなるのにっていう最後の主張が、とてもすんなり心に入って来るんだ。ブランカもそうだったって言ってたよ。」
「たしかに今回のは、終始、憶測に基づく批判だけだからね。しかも愛が感じられないんだよなぁ。エアリーのこと、そんなに好きじゃないのに、嫌々批評しましたって感じ。」
「なにかあったのかなぁ?」
僕達のコソコソ話の横で、ジークとホンファの応酬はどんどん過熱していく。
「そもそも、貴女はエアリーのファンではないですよね?あの批評からは、愛を感じませんでした。なのに、なぜエアリーの批評をするのですか?」
「そんなの私の勝手でしょ?公開されたものを批評するのは、批評家だからよ。」
「だから、貴女のエアリー批評は、批評ではありませんよ。」
もうほとんど、口喧嘩だ。
これは収集がつかないぞ、と思っていると、エアのノンキな声がした。
「はい!みんなお待たせー!ボクの特別ライブの始まりだよ!」
特別ライブ?
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