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フラルアルド王国編

63話 主人公、古代神殿に行くー1

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「じゃあ、出発するよ。準備はいい?」

 僕達は背中に荷物を背負い、武器を携帯した状態で、古代神殿の入り口の前にいた。

 ここまでは、先日乗ったホバーで来た。近くにあると言っていた通り、ホバーですぐの場所だった。

 僕の横には、刀を持ったサクラと、サブマシンガンを持ったモミジがいる。

 僕は武器なんか無いけど、リオンとシオンも持っていない。

「リオンとシオンは、武器持たないの?」
 そう聞くと、意外な答えが返ってきた。
「「えっ?持ってるけど?」」

「僕達の武器はコレだよ。隠し武器!」
 シオンはそう言って、袖から刃物を出す。

「いろんなところに仕込んであるんだ。冒険者は両手が使えないといけないからね。その時に応じた武器を使うよ。」

「エレメンテの武器は、相手を殺傷するための道具じゃない。身を守るためのものだよ。逃げる間の足止めが出来ればいいんだ。」

 なるほどね。
 隠し武器ってことは、服の中にたくさんのものが仕込まれてるんだな。
 さすが元冒険者!なんだか頼もしい。
 僕は平和な世界から来たからね。
 戦闘能力ゼロだから、守ってもらうことにしよう!と情けないことを考えていた。

「で、どこに神殿があるの?」

 ここだよ、と双子は言うが、2人が立っている場所は、森の中。周りには、大きな樹木と大きな岩しかない。

 ただの森の中だよね?出発するって言うから、ここから歩くのかと思ったんだけど。

「「この岩が入り口だよ!」」

 なんだって!!!

 古代神殿っていうから、勝手にパルテノン神殿みたいなものを想像してた!そんな建物見えないなぁって思ってたとこだよ!

「ここの古代神殿は、地下にあるんだよ!だから、かなり古い神殿なんだけど、最近になって発見されたんだ。」

 最近って?50年くらい前って言ってたよね。最近なんだ、それ。

「だから、遺跡の状態は良いけど、どんな仕掛けがあるかは分からないからね。怪しい壁とか床には触らないように!」

「「じゃあ、行くよ。」」

 双子のこの言葉で、僕達は神殿に入っていった。




 神殿の中は、一言で言うと、豪華!だった。

「なんですか?これは?」

「きれーい!なんでキラキラしてるの?」

「天井が光ってる!どういう仕組みなんだろう?」

 大きな岩の隙間の狭い通路を通るとすぐ、大きな扉のある空間に出る。その扉を開けると、キラキラの空間が広がっていたのだ。

 地下だとは思えないくらいの明るさと広さに、僕はポカンとなる。

「タクミ!口、開いてるよ!」
 リオンにそう言われて、慌てて口を閉じる。

「この神殿は、地下に何層もあるらしい。」
「最下層が宝物庫だと考えられてるけど、たどり着いた者はいないんだ。」

「この空間は地下一層目、大地の神、ガイアスを祀る神殿になっている。」

「この世界には、昔から、様々な神を祀る神殿が多くあるんだよ。でも、このエレメンテでは、神々の神殿を荒らす者は、必ず不幸になるって言われてるからね。神殿を荒らす者は、ほとんどいない。だから、古代の遺跡、特に神殿は荒らされずに綺麗な状態で残っている場合が多いんだ。」

「ここが綺麗な状態なのは、入り口が分かりづらいって理由もあるけどね。」

「この一層目は、ガイアス神を祀る祭壇があるだけだ。二層目以下は、仕掛けだらけだからね。気を抜かないように!」

「じゃあ、二層目に降りるよ。」

 リオンとシオンの後について歩く。

「なんで天井が光ってるんだろうね?」
 サクラがつぶやく。
「ヒカリゴケの一種かなぁ?」
 モミジが答える。

「はい!モミジ、正解!」
 リオンがモミジの頭を撫でる。

「これは、ヒカリゴケの一種で、空気や光を取り入れる穴から差す少しの光から、力を吸収して光っています。」

 おぉ、リオンが先生みたいだ。

「最下層まで、この状態だという保証はないからね。あかりの準備は忘れないように。」

「大丈夫だよ!光源石をいくつか持ってきたから!ウチのカバンに入ってるよ!」と、モミジが答える。

「じゃあ、気を抜かずに進むよ。」

 二層目への階段は、祭壇の後ろにある壁の裏にあった。壁に書いてある紋様がカモフラージュになっていて、階段があるようには見えない。

「これを見つけた人、すごいですね。」
 僕は感心して言うが、「これくらい、冒険者ならすぐ見つけるよ」とシオンが答える。

 冒険者ってすごいんだね。

 二層目に降りる。
 そこは、迷宮になっていた。

「ここは、仕掛けがいっぱいだからね。床や壁に触ると発動するトラップと、通っただけで発動するトラップだらけだ。一度発動したものは、冒険者が目印を残してくれてるから、触らないようにね。」

 僕達は慎重に進むが、それでも何個かは発動させてしまう。でもその度に、リオンとシオンが適切な対応をしてくれる。

 2人は優秀な冒険者だったんだ!
 なんで、冒険者からグール研究者になったんだろう?
 僕は不思議に思いながらも、迷惑をかけないように慎重についていく。

 ついに、迷宮の出口らしき、空間に出る。
 が、何もない?
 下に進むための階段すら無いのだ。

 間違えたのか?

「ここから先の情報はほとんど無いんだ。」
「この遺跡に来る前に、ここの情報を頭に叩き込んだんだけど、やっぱり最後は出たとこ勝負になるよね。」
「どこかにスイッチ的なものがあるはずなんだけど。」

 リオンとシオンの言葉に、僕達は周りをキョロキョロと見回す。

 そして、僕は何かに気付く。

 そうだ!ドラゴンの瞳!
 何かが見えるかも!

 そう思った僕は、ドラゴンの瞳を発動させる。瞳が金色に輝く。

 その瞳で周りを見た僕は驚く。
 壁や床の所々に文字らしきものが見えるのだ。何語なのかは分からないけど、何故か意味が分かる。

 その中のひとつ、"危険!"と書かれた壁をサクラが触るのが見えた。僕はとっさに、サクラをかばうように抱きかかえる。
 カチッと何かが発動する音が聞こえたと思ったら、何者かに剣で切りつけられる。が、ドラゴンの防御能力で無傷だ。

「サクラ!大丈夫?」
 抱きかかえたサクラに、そう確認する。

 サクラはビックリした表情をしていたが、僕の顔を見ると、安心したように「大丈夫」と答える。

 サクラにも傷は無いようだ。

「無事で良かった!」と、サクラを思わず抱きしめると、サクラもギュッと抱きついてきた。

 そんなサクラの行動にドキッとするが、周りにたちこめるイヤな気配を察した僕は、サクラを僕の背後にやる。

 僕達を切りつけてきた何者かが、まだ近くにいる気配を感じる。

 そして、その後ろ。いままで何もなかった空間に、剣を持った石像が何体も出現するのが見えた。

 リオンとシオンの焦った声が聞こえる。

「「ヤバイ!ガーディアンだ!」」

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