69 / 247
フラルアルド王国編
63話 主人公、古代神殿に行くー1
しおりを挟む「じゃあ、出発するよ。準備はいい?」
僕達は背中に荷物を背負い、武器を携帯した状態で、古代神殿の入り口の前にいた。
ここまでは、先日乗ったホバーで来た。近くにあると言っていた通り、ホバーですぐの場所だった。
僕の横には、刀を持ったサクラと、サブマシンガンを持ったモミジがいる。
僕は武器なんか無いけど、リオンとシオンも持っていない。
「リオンとシオンは、武器持たないの?」
そう聞くと、意外な答えが返ってきた。
「「えっ?持ってるけど?」」
「僕達の武器はコレだよ。隠し武器!」
シオンはそう言って、袖から刃物を出す。
「いろんなところに仕込んであるんだ。冒険者は両手が使えないといけないからね。その時に応じた武器を使うよ。」
「エレメンテの武器は、相手を殺傷するための道具じゃない。身を守るためのものだよ。逃げる間の足止めが出来ればいいんだ。」
なるほどね。
隠し武器ってことは、服の中にたくさんのものが仕込まれてるんだな。
さすが元冒険者!なんだか頼もしい。
僕は平和な世界から来たからね。
戦闘能力ゼロだから、守ってもらうことにしよう!と情けないことを考えていた。
「で、どこに神殿があるの?」
ここだよ、と双子は言うが、2人が立っている場所は、森の中。周りには、大きな樹木と大きな岩しかない。
ただの森の中だよね?出発するって言うから、ここから歩くのかと思ったんだけど。
「「この岩が入り口だよ!」」
なんだって!!!
古代神殿っていうから、勝手にパルテノン神殿みたいなものを想像してた!そんな建物見えないなぁって思ってたとこだよ!
「ここの古代神殿は、地下にあるんだよ!だから、かなり古い神殿なんだけど、最近になって発見されたんだ。」
最近って?50年くらい前って言ってたよね。最近なんだ、それ。
「だから、遺跡の状態は良いけど、どんな仕掛けがあるかは分からないからね。怪しい壁とか床には触らないように!」
「「じゃあ、行くよ。」」
双子のこの言葉で、僕達は神殿に入っていった。
神殿の中は、一言で言うと、豪華!だった。
「なんですか?これは?」
「きれーい!なんでキラキラしてるの?」
「天井が光ってる!どういう仕組みなんだろう?」
大きな岩の隙間の狭い通路を通るとすぐ、大きな扉のある空間に出る。その扉を開けると、キラキラの空間が広がっていたのだ。
地下だとは思えないくらいの明るさと広さに、僕はポカンとなる。
「タクミ!口、開いてるよ!」
リオンにそう言われて、慌てて口を閉じる。
「この神殿は、地下に何層もあるらしい。」
「最下層が宝物庫だと考えられてるけど、たどり着いた者はいないんだ。」
「この空間は地下一層目、大地の神、ガイアスを祀る神殿になっている。」
「この世界には、昔から、様々な神を祀る神殿が多くあるんだよ。でも、このエレメンテでは、神々の神殿を荒らす者は、必ず不幸になるって言われてるからね。神殿を荒らす者は、ほとんどいない。だから、古代の遺跡、特に神殿は荒らされずに綺麗な状態で残っている場合が多いんだ。」
「ここが綺麗な状態なのは、入り口が分かりづらいって理由もあるけどね。」
「この一層目は、ガイアス神を祀る祭壇があるだけだ。二層目以下は、仕掛けだらけだからね。気を抜かないように!」
「じゃあ、二層目に降りるよ。」
リオンとシオンの後について歩く。
「なんで天井が光ってるんだろうね?」
サクラがつぶやく。
「ヒカリゴケの一種かなぁ?」
モミジが答える。
「はい!モミジ、正解!」
リオンがモミジの頭を撫でる。
「これは、ヒカリゴケの一種で、空気や光を取り入れる穴から差す少しの光から、力を吸収して光っています。」
おぉ、リオンが先生みたいだ。
「最下層まで、この状態だという保証はないからね。あかりの準備は忘れないように。」
「大丈夫だよ!光源石をいくつか持ってきたから!ウチのカバンに入ってるよ!」と、モミジが答える。
「じゃあ、気を抜かずに進むよ。」
二層目への階段は、祭壇の後ろにある壁の裏にあった。壁に書いてある紋様がカモフラージュになっていて、階段があるようには見えない。
「これを見つけた人、すごいですね。」
僕は感心して言うが、「これくらい、冒険者ならすぐ見つけるよ」とシオンが答える。
冒険者ってすごいんだね。
二層目に降りる。
そこは、迷宮になっていた。
「ここは、仕掛けがいっぱいだからね。床や壁に触ると発動するトラップと、通っただけで発動するトラップだらけだ。一度発動したものは、冒険者が目印を残してくれてるから、触らないようにね。」
僕達は慎重に進むが、それでも何個かは発動させてしまう。でもその度に、リオンとシオンが適切な対応をしてくれる。
2人は優秀な冒険者だったんだ!
なんで、冒険者からグール研究者になったんだろう?
僕は不思議に思いながらも、迷惑をかけないように慎重についていく。
ついに、迷宮の出口らしき、空間に出る。
が、何もない?
下に進むための階段すら無いのだ。
間違えたのか?
「ここから先の情報はほとんど無いんだ。」
「この遺跡に来る前に、ここの情報を頭に叩き込んだんだけど、やっぱり最後は出たとこ勝負になるよね。」
「どこかにスイッチ的なものがあるはずなんだけど。」
リオンとシオンの言葉に、僕達は周りをキョロキョロと見回す。
そして、僕は何かに気付く。
そうだ!ドラゴンの瞳!
何かが見えるかも!
そう思った僕は、ドラゴンの瞳を発動させる。瞳が金色に輝く。
その瞳で周りを見た僕は驚く。
壁や床の所々に文字らしきものが見えるのだ。何語なのかは分からないけど、何故か意味が分かる。
その中のひとつ、"危険!"と書かれた壁をサクラが触るのが見えた。僕はとっさに、サクラをかばうように抱きかかえる。
カチッと何かが発動する音が聞こえたと思ったら、何者かに剣で切りつけられる。が、ドラゴンの防御能力で無傷だ。
「サクラ!大丈夫?」
抱きかかえたサクラに、そう確認する。
サクラはビックリした表情をしていたが、僕の顔を見ると、安心したように「大丈夫」と答える。
サクラにも傷は無いようだ。
「無事で良かった!」と、サクラを思わず抱きしめると、サクラもギュッと抱きついてきた。
そんなサクラの行動にドキッとするが、周りにたちこめるイヤな気配を察した僕は、サクラを僕の背後にやる。
僕達を切りつけてきた何者かが、まだ近くにいる気配を感じる。
そして、その後ろ。いままで何もなかった空間に、剣を持った石像が何体も出現するのが見えた。
リオンとシオンの焦った声が聞こえる。
「「ヤバイ!ガーディアンだ!」」
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
『ラズーン』第二部
segakiyui
ファンタジー
謎を秘めた美貌の付き人アシャとともに、統合府ラズーンへのユーノの旅は続く。様々な国、様々な生き物に出逢ううち、少しずつ気持ちが開いていくのだが、アシャへの揺れる恋心は行き場をなくしたまま。一方アシャも見る見るユーノに引き寄せられていく自分に戸惑う。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜
幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。
魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。
そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。
「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」
唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。
「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」
シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。
これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。
魔法少女になれたなら【完結済み】
M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】
【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】
【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】
とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。
そこから少女の生活は一変する。
なんとその本は魔法のステッキで?
魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。
異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。
これは人間の願いの物語。
愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに――
謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
悪行貴族のはずれ息子【第1部 魔法講師編】
白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
★作者個人でAmazonにて自費出版中。Kindle電子書籍有料ランキング「SF・ホラー・ファンタジー」「児童書>読み物」1位にWランクイン!
★第2部はこちら↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/162178383/450916603
「お前みたいな無能は分家がお似合いだ」
幼い頃から魔法を使う事ができた本家の息子リーヴは、そうして魔法の才能がない分家の息子アシックをいつも笑っていた。
東にある小さな街を領地としている悪名高き貴族『ユーグ家』―古くからその街を統治している彼らの実態は酷いものだった。
本家の当主がまともに管理せず、領地は放置状態。にもかかわらず、税の徴収だけ行うことから人々から嫌悪され、さらに近年はその長男であるリーヴ・ユーグの悪名高さもそれに拍車をかけていた。
容姿端麗、文武両道…というのは他の貴族への印象を良くする為の表向きの顔。その実態は父親の権力を駆使して悪ガキを集め、街の人々を困らせて楽しむガキ大将のような人間だった。
悪知恵が働き、魔法も使え、取り巻き達と好き放題するリーヴを誰も止めることができず、人々は『ユーグ家』をやっかんでいた。
さらにリーヴ達は街の人間だけではなく、自分達の分家も馬鹿にしており、中でも分家の長男として生まれたアシック・ユーグを『無能』と呼んで嘲笑うのが日課だった。だが、努力することなく才能に溺れていたリーヴは気付いていなかった。
自分が無能と嘲笑っていたアシックが努力し続けた結果、書庫に眠っていた魔法を全て習得し終えていたことを。そして、本家よりも街の人間達から感心を向けられ、分家の力が強まっていることを。
やがて、リーヴがその事実に気付いた時にはもう遅かった。
アシックに追い抜かれた焦りから魔法を再び学び始めたが、今さら才能が実ることもなく二人の差は徐々に広まっていくばかり。
そんな中、リーヴの妹で『忌み子』として幽閉されていたユミィを助けたのを機に、アシックは本家を変えていってしまい…?
◇過去最高ランキング
・アルファポリス
男性HOTランキング:10位
・カクヨム
週間ランキング(総合):80位台
週間ランキング(異世界ファンタジー):43位
今のは勇者スキルではない、村人スキルだ ~複合スキルが最強すぎるが、真の勇者スキルはもっと強いに違いない(思いこみ)~
ねぎさんしょ
ファンタジー
【完結保証】15万字足らず、約60話にて第一部完結します!
勇者の血筋に生まれながらにしてジョブ適性が『村人』であるレジードは、生家を追い出されたのち、自力で勇者になるべく修行を重ねた。努力が実らないまま生涯の幕を閉じるも、転生により『勇者』の適性を得る。
しかしレジードの勇者適性は、自分のステータス画面にそう表示されているだけ。
他者から確認すると相変わらず村人であり、所持しているはずの勇者スキルすら発動しないことがわかる。
自分は勇者なのか、そうでないのか。
ふしぎに思うレジードだったが、そもそも彼は転生前から汎用アビリティ『複合技能』の極致にまで熟達しており、あらゆるジョブのスキルを村人スキルで再現することができた。
圧倒的な火力、隙のない肉体強化、便利な生活サポート等々。
「勇者こそ至高、勇者スキルこそ最強。俺はまだまだ、生家<イルケシス>に及ばない」
そう思いこんでいるのはレジード当人のみ。
転生後に出会った騎士の少女。
転生後に再会したエルフの弟子。
楽しい仲間に囲まれて、レジードは自分自身の『勇者』を追い求めてゆく。
勇者スキルを使うための村人スキルで、最強を証明しながら……
※カクヨム様、小説家になろう様でも連載予定です。
女神様、これからの人生に期待しています
縁 遊
ファンタジー
異世界転生したけど、山奥の村人…。
普通は聖女とか悪役令嬢とかではないんですか?
おまけにチートな能力もなければ料理も上手ではありません。
おかしくありませんか?
女神様、これからの人生に期待しています。
※登場人物達の視点で物語は進んでいきます。
同じ話を違う人物視点で書いたりするので物語は進むのが遅いです。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる