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フラルアルド王国編

62話 主人公、実験台になる!

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 あー、いま僕はとても後悔しています。あんな事言うんじゃなかった!!!

 ジルに古代神殿に行ってみるか?と言われた僕は、是非行ってみたいです!と即答していた。

 ところが、行く前にしてほしいことがあるんだな、と言って、ジルはニヤリと笑った。

 そこで逃げておけば良かった。
 僕は激しく後悔した。



「チームのメンバーが揃うまでに時間がかかるからな。その間に古代神殿探検に行ってこい!」

「でも、特A級の遺跡なんだよね?僕が行っても大丈夫かな?」

「ドラゴンは、身体防御能力が高いんだろ?大丈夫じゃないか?それに、そこに二人も優秀な冒険者がいるだろ?」と、ジルが指差す。

 ジルの指の先には、リオンとシオンがいる。
 んっ?どういうこと?

 はぁっと、双子はため息をつく。そして、「僕達が冒険者だったのは、すごく昔のことだよ!」と言うが、すぐに、仕方ないなぁと、つぶやいた。

 ということは!一緒に行ってくれるの?

「でも、行く前に、俺の実験に少し付き合ってくれな。ドラゴンのデータが欲しいんだ!」
 そう言うジルの顔は、今まで見たこともないような、満面の笑顔だった。

 なんか、嫌な予感……。

 そして、嫌な予感は当たる。

 それから、丸一日かけて、ありとあらゆる実験をされた僕は、精神的なダメージを負った。

「ギャーッ!!痛い!痛いって!」

「ウギャー!それ以上は無理だって!!」

「気持ち悪い!気持ち悪いって!」

「無理無理無理!!!」

 はぁ、はぁ。もうムリ……。

 身体的に傷つかないのは、分かってるけど、もうこんな実験には、付き合いたくない!と、弱音を吐きそうになった頃、ようやく実験は終了した。

「タクミ!ありがとな。良いデータが取れたぞ!お前の協力は無駄にはしないからな!」

 ジルはすごく嬉しそうだ。
 お役に立てて光栄です!
 でも、二度目は無いからね!!!

 ぐったりしている僕の横では、双子とジルが相談している。

「リオン、シオン。悪いんだが、サクラとモミジも連れて行ってくれないか?あいつらにも、そろそろ古代神殿を見せてやりたくてな。いい刺激になると思うんだよ。」

「いいけど。あそこは、特A級だよ。あの2人は大丈夫なの?」

「2人共、成人したばかりだが、討伐者か冒険者にならないかって、誘いがきたくらい戦闘能力は高いぞ。自分の身は自分で守れるだろうよ。それに、何事も体験するのは、重要だからな。」

「僕達は、戦闘は不得意だからね。危なかったら、さっさと帰ってくるよ。それでも良いの?」

「おぅ!それで良いぞ!じゃ、頼むな。」



 そんな経緯で、神殿に行くことになった僕とサクラとモミジは、現在、双子先生の話をログハウスのリビングで聞いていた。

「じゃあ、古代神殿に行くけど、いくつか注意事項があるから、聞くように!」

 今日の衣装は、探検家風だ。
 話の内容ごとに着替えるって、何のこだわりだよ!

 僕の心のツッコミなど、分かっていないサクラとモミジは、僕の横でソワソワしていた。

「わたし、古代神殿は初めてなんだ!」
「ウチも特A級は、初めて!」

 2人共とても興奮している。そして、僕も。実はとってもワクワクしてます!

「特A級の遺跡は、生命の保証はないっていう遺跡です。だから、自分の身を自分で守るのは、最低限!特に精霊に頼り切った生活をしてる人は、生きて帰れません!」

「ウチとサクラは大丈夫だよ!普段から、あまり精霊は出さないからね!」

「君達は、成人したばかりだからね。まだ精霊に頼り切った生活はしてないだろうから、大丈夫かな。」

「まず、特A級の遺跡で一番気を付けなくてはならないのは、紋章システムが使えなくなる可能性があるってこと!」

「そう!だから、最低限の荷物と武器は常に所持するように!サクラ、モミジ!君達の得意な武器は何?」

 16歳の女の子に得意な武器は何?って聞く?

「わたしは刀だよ!愛刀を持っていくよ!」と、サクラ。

「ウチはガンナーだからね。サブマシンガンとアサルトライフル、どっちがいいかな?」と、モミジ。

 どっちも愛用の武器があるんだ!
 この世界の女の子って!

「「タクミの武器はナニ?」」

 2人に笑顔で聞かれた僕だが、「僕がいた世界では愛用の武器が無かったから」と答えるしかなかった。

「タクミはドラゴンだからね。身体防御能力は、エレメンテでも最高クラスだ。武器も必要ないと思うよ。」

 シオンはそう言ってくれるが、本当に大丈夫なのだろうか?

「武器が必要ってことは、遺跡には危険なものがいるってこと?」

「いい質問だよ、タクミ!特A級の遺跡には、必ず侵入者を拒む仕掛けがあるんだ。何かを守っているからじゃないかって説が有力だけど、本当のところは分からない。」

「守ってるって?金銀財宝ってことかな?」

「財宝はね。その古代神殿が出来た時の文化によって、様々なんだ。飢饉が多い時代に作られた神殿には作物の種が大事に保管されていたし、芸術が盛んな時代に作られた神殿には、たった一つの彫刻を守るために、数百体のガーディアンがいた。」

「僕達が行く古代神殿が発見されたのは、約50年前。発見されてすぐに特A級に指定された。これまで、何人もの冒険者が挑んだけど、宝物庫までたどり着いた者はいないっていうワケありの神殿だよ。」

「モミジ!宝物庫には、何があるんだろうね!」
「そうだね!それも楽しみだけど、ウチは神殿の仕掛けの方が気になるな!」
「きっと、すごい仕掛けがあるんだよ!」

 サクラとモミジは、とても興奮している。その証拠に、2人の尻尾が揺れている。

 かっ、可愛い!触りたい!

 はっ!ダメだ!
 僕は良識ある大人だからね。ガマンガマン!

「「じゃあ、準備が整ったら行くからね。持ち物と心の準備するように!」」

 リオンとシオンの言葉に正気を取り戻した僕は、サクラとモミジと共に、「「「了解です!」」」と元気よく返事をした。

 ということで、古代神殿に行きます!

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