上 下
47 / 247
セシリア王国編

44話 主人公、国の成り立ちを聞くー2

しおりを挟む
 

「そして、ついに紋章システムの開発に成功し、この島で、実用試験を繰り返した後に、難民の受け入れを開始したんだよ。」

「はじめは、国を作ろうなんて思ってなかったんだ。研究の結果、大いなる呪いに呪われてる者は、紋章システムが使えないっていうのは、早い段階で分かっていた。だから、セシルさまは、まずは、その呪われし者を見つけたい、と思ってはじめたんだ。その頃は、呪われし者がエレメンテ中に、何人存在するかは、分かってなかったからね。」

「セシルさまは、呪われた存在を前から知ってたってことだよね。」

「「そうだよ。」」

「だって、セシルさま自身が、その呪われた存在だからね。何度、転生してもそうなんだって。」

「大商人としての情報収集で、エレメンテには、同じような人が何人かいるようだ、というのはわかっていたんだ。」

「呪われし者は、いつも何かのズバ抜けた才能がある。戦争が多い時代だったから、その人達の才能は戦争に使われていたんだ。イリスのような、人を魅了する能力をもった人を利用して、大勢を兵士として戦争に行かせた国もあった。」

「セシルさまの開発の才能も、戦争に使われていたら、今頃、エレメンテは人が住めない不毛の世界になっていたと思うよ。」

「なんで、戦争なんかあるんだろう?」
 戦争を体験したことのない僕は、戦争について何も分からない。戦争を起こす人の気持ちも、全然理解できない。

「そうだね。後世の人が見たら、戦争は愚かなものだろう。だけどね。いま現在、戦争をしている人にとっては、愚かでも何でもないんだ。」

 どういうこと?

「ドゥイガーン王国のことは、知ってるね。ドゥイガーンの国民は、本当に国を良くしよう、子供達を守りたいって純粋な気持ちで戦争を始めたんだ。ドゥイガーンの王様もそうだよ。」

「そして、侵略された国の国民もそうだ。国を守りたい、ただそれだけの気持ちでドゥイガーンの兵士達と戦った。」

「世の中にはね。絶対の悪も絶対の善もないんだよ。それこそ、アースで会ったサヤカのようにね。」

 北条サヤカ?陽子ちゃんをイジメてた張本人。でも、サヤカも母親からしつけと言う名のイジメを受けてた。

「人の世は、そういうものなんだ。戦争を始めたから、この国が悪い!で終わるものじゃない。戦争をする理由が必ずあるんだよ。」

 そうか。サヤカが陽子ちゃんをイジメてたのは、母親からクラスで一番の成績を強要されてたから。トラウマで母親に逆らえないサヤカは、陽子をイジメることで自分を保っていた。

「人はね。ダメだと分かっていても、してしまう愚かな生き物なんだ。日本には、法律というものがあるよね。法によって国を治める、法治国家だ。でも、全部の法律を守ってます!って日本人はいないでしょ?」

「僕は犯罪をしたことはないよ!」

「じゃあ、赤信号を渡ったことないの?止まれの標識で止まらずに行っちゃったことあるでしょ?」

「それは…、ありますけど。」

「決まりだからダメだって、わかってても、車来てないから、とか、警察いないから、とかだと、赤信号無視することあるよね。」

「僕達に言わせれば、戦争もそれと一緒。戦争はダメだって、わかっているけど、いろいろ理由をつけて戦争を起こすんだ。」

「ドゥイガーンの場合は、食糧難がその理由だよ。」

 信号無視と戦争を同じように語って欲しくないですけど!

 ドゥイガーンの王様は、もっと複雑な理由があって戦争を起こしたのかもしれないけど、後世の人から見たら、そんな捉え方になるのかも。

 でも僕は断固戦争反対です!

「セシルさまが、呪われし者を探してた本当の理由は、それだったんだよ。」

 それ?

「呪われし者には、特別な才能がある。戦争に利用されれば、戦争がもっと酷くなる。それを防ぎたいって思いがあったんだ。呪われし者を、出来るだけ早い時期に保護して、利用されないようにするために。」

「いまエレメンテに王国が7つあるのも、それが理由だよ。」

「呪われし者は、必ず何かの才能がある。そして、利用されやすい。誰に利用されると言えば、それは時の権力者だ。何らかの権力を持った人は、自分の都合が良いように、誰かを利用するからね。それをさせないようにするにはどうしたらいいか?」

 まさか?

「だから、王様なんだね!王様より偉い人はいない。王様を利用してやろうって人は、そうはいないから!」

「「正解!!」」
 僕の答えに、双子は満足そうに笑って、そう答えたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

5度目の求婚は心の赴くままに

しゃーりん
恋愛
侯爵令息パトリックは過去4回、公爵令嬢ミルフィーナに求婚して断られた。しかも『また来年、求婚してね』と言われ続けて。 そして5度目。18歳になる彼女は求婚を受けるだろう。彼女の中ではそういう筋書きで今まで断ってきたのだから。 しかし、パトリックは年々疑問に感じていた。どうして断られるのに求婚させられるのか、と。 彼女のことを知ろうと毎月誘っても、半分以上は彼女の妹とお茶を飲んで過ごしていた。 悩んだパトリックは5度目の求婚当日、彼女の顔を見て決意をする、というお話です。

落ち込み少女

淡女
ライト文芸
「ここから飛び降りて」 僕はたった今、学校の屋上で、 一人の少女から命を絶つよう命じられていた。 悩き多き少女たちは 自らの悩みを具現化した悩み部屋を作ってしまう!? 僕はどこまで踏み込める? どこまで彼女たちの痛みに関われる? 分からない、だからこそ僕は人と交わるんだ。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

アイドルの恋愛事情

モルガナイト
BL
アイドルグループ・scarlet(スカーレット)のリーダー:湊(ミナト)と、同じグループで1番人気:竜也(リュウヤ)、優しい2人の恋愛ストーリー サイドストーリー:スカーレットメンバー遥兎×優希 たまにR18あるかも

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

車輪屋男爵~異世界から来たピンク髪で巨乳の女の子が冷蔵庫とかシャワーとか良く分からないことを言ってるので訳してもらっていいッスか?

くさなぎ
ファンタジー
 『車輪』、それは神代文字……カタカムナ。  郵便馬車で始まった車輪屋は異世界文化の流入と同時に次第に変化していった。  斜陽を迎え、崩壊と混乱へと向かいつつある巨大な『帝国』世界。  元も辺境に位置する弱小貴族のアレキサンダー男爵の当主エドアードこと、三流魔術師クローリー。  彼は、|賢者《セージ》を名乗る異世界から召喚されてきた小太りの青年から伝え聞いたバブル時代の日本の豊かさと平和に憧れた。  世界を変えようとまでは思わない。  自分と自分の周り、つまり小さな自分の領地の中だけでも豊かにしたかった。  優れた領主というわけではない。  人望もあまりない。  みんなで食料に困らず、今よりちょっと豊かに、今よりちょっと楽ができる世界。  それがクローリーの妄想する世界だった。  混乱する帝国では各諸侯たちが暗躍する。  異世界から異能の力を持ったバランスブレイカーを召喚して戦略兵器としてキャスティングボードを握ろうとしていた。  そのために次々と異世界から召喚されるが、その多くは平凡な人物だった。  彼らは『ハズレ』と呼ばれゴミのように捨てられた。  だが、そのような存在こそクローリーの望むもの。  能力よりも豊かな異世界の文化の知識を必要としていたのだ。  例えば塾講師、例えばテロリスト……。  例えば胸の大きい女子中学生。  後で考えればその巨乳ロリ中学生の沙那を拾ったことが全ての始まりだったのかもしれない。 「なにこれ、美味しくないーい!味しなーい!」「お風呂とシャワーはー?」「街の中がトイレの臭いするー。くっさーい!」  物怖じしない超アクティブなJCに振り回されつつ、クローリーの野望は現実化していく……のだが!  世界は混沌としていくばかり。  クローリーの箱庭のような領地にも次々と難題が襲い掛かる。、   何で攻めてくるやつらがいるの?     荒波の中の小舟のように揺れるクローリーたちの明日はどっちだ!? (この作品は下書きみたいなものなので、いずれは再構成版をアップしたいと思います)

処理中です...