上 下
207 / 247
ベアルダウン王国編

191話 主人公、異世界の秘密を知るー3

しおりを挟む
 

 セシルさまが、この城の姫!?
 精霊王の娘で、エンシャントエルフとヒトの間の子供!?

「ソラは、姫さん、いや、セシルを鍛えると同時にある術を開発していた。ソラには分かっていたんだよ。このままのセシルでは異世界の穴を閉じることはできないと。」

「ソラって術の開発もしてたの?」

「セシルの開発の師匠はソラだよ。」

「それでか!」
 ジルが大きな声を出す。
「セシルさまの開発品には、不思議な術が使われていることが多かった。ドラゴンの師匠がいたとは!俺の師匠は、前のセシルさまだが、ソラっていうドラゴンは、師匠の師匠ってことだな!」

「ハハハッ!正にその通りだ!」
 タイジュは大笑いする。師匠の師匠って言葉が面白かったようだ。

 そんなに笑うことかな?タイジュは笑い上戸なのか?

「ソラは、セシルの肉体とこの城に残っていた精霊王のチカラを使って、異世界の穴を閉じる術を考案した。だから、セシルは分離することに合意したんだ。」

「おいおい。分離って言っても、そんなこと、普通できねーだろ?」
 ガルシアが呆れた声で言う。

「もちろん、普通のヤツじゃ無理だ。セシルのように、チカラの強い種族だから出来る芸当だよ。そうだな、ドラゴンなら出来るかもな。タクミもやってみるか?」

 話を振られた僕は、全力で拒否する。
 出来るかも?で、やることじゃないよ!セシルさまも怖かっただろうな。でもきっと、この術に賭けたんだ。

「ソラは分離した精神を転生させることにした。転生を繰り返すことで経験を積ませ、魂を鍛えようとしたんだよ。」

 魂の強さは身体に影響を及ぼす。魂が強くなれば、精霊王のように、エンシャントエルフのチカラを使いこなせるようになるかもしれない。それを期待したんだ!

「セシルは、その提案を受け入れた。ただし、ひとつだけ条件を付けた。精霊王はこの世界から消える時に、『呪いの影響を強く受けた者が生まれるだろう』と言っていた。その呪われた子に転生したいと言い出した。ソラになら出来るだろうと。
 ソラは、呪いの子を特定して、その子が産まれる前にセシルの精神を転生させた。その子の呪いが『怠惰』だったんだよ。『怠惰』の呪いとセシルの魂は深く結び付いた。だから、何度転生しても必ず『怠惰』の呪いを受けることになったんだ。」

「ソラは呪いを特定することができるの?じゃあ、呪いそのものを無くすことが出来るんじゃ?」

「それが出来たら、とっくにやってるさ。ソラでも解呪できない。この呪いは全世界、いや、全異世界に存在する呪いなんだよ。それに、呪いの子を特定できたのは運が良かっただけだ。」

「!!!」

「セシルは転生を繰り返して、呪いの謎を探っていた。何のチカラも無いセシルに呪いの謎を探るのは困難だったが、何度目かの転生時に重要な仲間ができる。それがエルだ。」

 エル!セシルを『マスター』と呼ぶ精霊種。今は746歳だと言っていた。セシルが分離して、転生するようになった後、誕生したってことか!

「エルは姫さんの側に常に一緒にいた精霊なんだよ。お前達のパートナー精霊と同じだ。転生を繰り返す姫さんのチカラになりたいって想いが強かったために、具現化したんだよ。」

エルにはそんな秘密が…。

「セシルは転生を繰り返すことで、この世界のことを学んだ。そして、商人として世界の情報を集め、エルの協力で呪いの謎を解明しようとした。呪いを強く受けた人々の存在。そしてグールと怪異のこと。それらを認識したセシルは、この呪いを何とかしないと、この世界はいつか滅ぶと思ったんだよ。だから、紋章システムを開発した。」

「その間、ソラは?トゥーラ達はどうしてたの?協力はしなかったの?」

「魂を鍛えるために転生してるんだぞ。ソラやトゥーラに助けてもらっていては、成長しないだろ?セシルは分離するときに、いつか自分の力でこの城に帰ってくると決意してた。それでも、ソラはたまに会いに来たよ。あいつは自由人だからな。」

 ハハッ…。自由人ね…。

「オレと仲間達は、精霊王の民の紋様を調べて、この城の座標を知った。そして、300年ぶりにこの城に戻ってきて、トゥーラから多くの情報を得た。トゥーラが集めてくれていた情報のおかげで、紋章システムが開発できて、このセシルのチカラによって、紋章システムは完成したんだよ。」

「でっ、では。紋章システムはこの精霊王の姫のチカラで成り立っているということデスか?」

「そうだ。正確に言うと、この城全体が紋章システムの中核だよ。」

「不思議に思っていまシタ。紋章システムのような便利なものを動かすには、莫大な動力が必要デス。この世界で最もチカラのある種族を動力にしていたのデスね…。」

「正確に言うと、紋章システムの動力は精霊なんだよ。エンシャントエルフは、精霊を意のままに操ることが出来たんだ。セシルはチカラが足りないから、術で補っているが。そうだなぁ。精霊に愛されているドラゴンなら可能かもしれないな。」

「僕にならセシルさまの代わりができるってことですか?だけど異世界の穴は、セシルさまにしか閉じられないんだよね?僕じゃ代わりになれないよ。」

「デモ、紋章システムを動かすことなら出来ますよね?」

「やけに紋章システムにこだわるな。カシムとガルシアが暗黒大陸に来た真の目的は、紋章システムの秘密を探ることだろ?」

「どっ、どうしてそれを…。」

「オレは紋章システムの管理人だ。カシムのパートナー精霊とも繋がってる。お前が何を悩んでいるかも知っている。」

「でっ、では。教えてください。アースで紋章システムを開発することはできマスか?」

 アースで紋章システム?
 カシムは何を言ってるんだ?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪行貴族のはずれ息子【第2部 魔法師匠編】

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
※表紙を第一部と統一しました ★作者個人でAmazonにて自費出版中。Kindle電子書籍有料ランキング「SF・ホラー・ファンタジー」「児童書>読み物」1位にWランクイン! ★第1部はこちら↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/162178383/822911083 「お前みたいな無能は分家がお似合いだ」 幼い頃から魔法を使う事ができた本家の息子リーヴは、そうして魔法の才能がない分家の息子アシックをいつも笑っていた。 東にある小さな街を領地としている悪名高き貴族『ユーグ家』―古くからその街を統治している彼らの実態は酷いものだった。 本家の当主がまともに管理せず、領地は放置状態。にもかかわらず、税の徴収だけ行うことから人々から嫌悪され、さらに近年はその長男であるリーヴ・ユーグの悪名高さもそれに拍車をかけていた。 容姿端麗、文武両道…というのは他の貴族への印象を良くする為の表向きの顔。その実態は父親の権力を駆使して悪ガキを集め、街の人々を困らせて楽しむガキ大将のような人間だった。 悪知恵が働き、魔法も使え、取り巻き達と好き放題するリーヴを誰も止めることができず、人々は『ユーグ家』をやっかんでいた。 さらにリーヴ達は街の人間だけではなく、自分達の分家も馬鹿にしており、中でも分家の長男として生まれたアシック・ユーグを『無能』と呼んで嘲笑うのが日課だった。だが、努力することなく才能に溺れていたリーヴは気付いていなかった。 自分が無能と嘲笑っていたアシックが努力し続けた結果、書庫に眠っていた魔法を全て習得し終えていたことを。そして、本家よりも街の人間達から感心を向けられ、分家の力が強まっていることを。 やがて、リーヴがその事実に気付いた時にはもう遅かった。 アシックに追い抜かれた焦りから魔法を再び学び始めたが、今さら才能が実ることもなく二人の差は徐々に広まっていくばかり。 そんな中、リーヴの妹で『忌み子』として幽閉されていたユミィを助けたのを機に、アシックは本家を変えていってしまい…? ◇過去最高ランキング ・アルファポリス 男性HOTランキング:10位 ・カクヨム 週間ランキング(総合):80位台 週間ランキング(異世界ファンタジー):43位

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】偽物の王女だけど私が本物です〜生贄の聖女はよみがえる〜

白崎りか
恋愛
私の婚約者は、妹に夢中だ。 二人は、恋人同士だった賢者と聖女の生まれ変わりだと言われている。 「俺たちは真実の愛で結ばれている。おまえのような偽物の王女とは結婚しない! 婚約を破棄する!」 お好きにどうぞ。 だって私は、偽物の王女だけど、本物だから。 賢者の婚約者だった聖女は、この私なのだから。

婚約破棄は誰が為の

瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。 宣言した王太子は気付いていなかった。 この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを…… 10話程度の予定。1話約千文字です 10/9日HOTランキング5位 10/10HOTランキング1位になりました! ありがとうございます!!

処理中です...