196 / 247
ベアルダウン王国編
180話 主人公、暗黒大陸を冒険するー2
しおりを挟む翌朝、ハドリー岬から9人全員で暗黒大陸に転移する。
今日は目的の座標に到着する予定だ。
何が起こるか分からないので、万が一、国外活動装置が使えなくなった時のために各自最低限の荷物を持って行くことにした。
一番怖いのは油断だと、ユーリは言った。紋章システムが使えると思って気を抜いていると、使えなくなった時にパニックになることもあるという。
たしかに便利な道具ほど、使えなくなった時は困るよな。僕も仕事中、外出先でスマホを水没させた時はパニックになったな。営業先の電話番号が分からなくなり、検索も出来ず、頭が真っ白になったよ。
特別仕様のホバーは7台。後から参加することになったガルシアとカシムの分はない。だから、病み上がりのジルと防御能力最弱のガルシアを後ろに乗せることにした。ライルの後ろにジル、カシムの後ろにガルシアを乗せて、ホバーは進む。
「そろそろ目的の座標なんだけど…。おかしいね。見渡す限り砂漠だ。」
座標の確認をしていたユーリが困惑している。
「精霊王を祀る神殿があると推測していたのですが…。何も見つけられないなんて…。」
ライルもショックを隠せない。
各自、ホバーを降りて、周りを探索し始める。
僕も何か見えるかもしれないと思い、ドラゴンの瞳を発動する。
すると、目の前の景色がユラリと揺れたような気がした。そして、ガルシアが歩いていく先に異変を感じる。
ガルシア様の前方の何もない空間がカーテンみたいに揺れている?おかしいな…。
そう思っていると、ガルシアがその揺らぎに触れた。
その瞬間、それは起きた。
ガルシアの足元の砂の中から鋭く尖った棘が出現して、ガルシアを貫いたのだ。
「ガルシア様!!!」
カシムがとっさに紋章システムからムチのような武器を出し、ガルシアを手繰り寄せる。
ガルシアの腹部から血が流れ出す。
「コレはヤバイです!治癒の術を!」
カシムがガルシアの傷口を押さえながら、叫ぶ。
「カシム!僕が治癒しますから、あなたは周りの警戒を!」
ライルがガルシアに駆け寄る。
僕達も辺りを警戒しながら、ガルシアの周りを囲むように集まる。
そんな僕達の目の前の砂が舞い上がり、巨大な何かを形成していく。
砂の怪物?
その怪物がハッキリと見えるようになったのと同時に、奥には見たこともないくらい綺麗な神殿が現れた。
「もしかして、あれが目的の神殿?ということは、これは遮蔽の術!ガルシア様が発動させてしまったようだね。」
冒険者としての経験が長いユーリが叫ぶ。
「遮蔽の術?」
「あい!この世界の古い遺跡や神殿でたまに見つかることがあるんだよ。何かを隠すために見えなくなる術がかけられてて、その領域に入ってしまうと発動する。発動すると、宝箱とかを護る最強のガーディアンが現れるのが多いんだよ。」
「じゃあ、いまこの目の前にいる怪物は…。神殿を護る最強のガーディアン?」
「あい!そうなるね!」
ミライは明るく話すが、目の前の怪物には油断できない気配を感じる。
ガルシアに容赦のない一撃をくらわせたことを考えると、この怪物に感情など無い。ただ自動的に侵入者を撃退するのみだ。
「ガルシア様は大丈夫なの?」
「この世界の治癒は、再生が基本なんだよ。本人の自己回復能力を高めて、欠損部分を再生させる。健康で若い人なら、心臓でも脳でも、すぐに再生できるよ!」
心臓はまだ分かるけど、脳も再生できるの?それはヤバイ。考えたくないけど、頭を吹き飛ばされても、大丈夫ってこと?
「あい!再生できるよ!でも元々、再生能力が弱ってる人や時間が経ち過ぎている時は再生できないこともある。だから普通は、パートナー精霊が防御結界を発動せるよ。ただ、ガルシア様にはパートナー精霊がいないし、ここはガンガルシアじゃないから王の力も使えないし。」
ガルシアじゃなくても、危険はある。ここは暗黒大陸だ。国外活動装置があるとは言え、正常に防御結界が発動するとは限らない。
「これがガーディアンだとすると、こいつを倒さないと神殿には入れない!アタイ達で、こいつをなんとかするよ!」
ユーリが皆に指示をする。
「ライルはそのまま、治癒を続けて!2人の護衛はリオンとシオンに任せて、残りの全員であいつを倒すよ!」
全員がユーリの指示に頷く。
「ジル!あんたは病み上がりだ。攻撃は控えて、観察を頼む。これだけ大きなガーディアンは初めてだ。アタイ達の攻撃なんか効かないかもしれない。よく観察して弱点を探ってほしい!」
「おぅ!任せとけ!お前達も気を付けろ。見たところ、そのガーディアンは砂の怪物だ。こちらの攻撃は効かないだろう。ガーディアンの身体に核があるはずだ。それを見つけて、破壊しろ。いいな!」
さすがジル!ひと目見ただけで、そこまで分析してるなんて!
「砂の怪物だべか。じゃ、これを試してみるべ。」
タムが取り出したのは、氷の剣だ。
「これで固めてから、核ごと砕くだよ。」
タムが氷の剣を構えて、砂のガーディアンに向かっていく。
斬りつけた箇所が凍りついて動かなくなる。それを見たカシムは、紋章システムから弓を出し、遠距離から凍りついた箇所を狙う。
「タムはすごいデス。ガーディアンの核が有りそうな箇所を狙って、凍らせていマス。」
そう言うカシムもスゴイ。
一発で凍った箇所を撃ち砕く。
攻撃が効いてるのか砂のガーディアンは、動きが鈍くなる。
このまま倒せるのか?
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
幼馴染みとの間に子どもをつくった夫に、離縁を言い渡されました。
ふまさ
恋愛
「シンディーのことは、恋愛対象としては見てないよ。それだけは信じてくれ」
夫のランドルは、そう言って笑った。けれどある日、ランドルの幼馴染みであるシンディーが、ランドルの子を妊娠したと知ってしまうセシリア。それを問うと、ランドルは急に激怒した。そして、離縁を言い渡されると同時に、屋敷を追い出されてしまう。
──数年後。
ランドルの一言にぷつんとキレてしまったセシリアは、殺意を宿した双眸で、ランドルにこう言いはなった。
「あなたの息の根は、わたしが止めます」
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる