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ベアルダウン王国編

175話 主人公、ドラゴンの神殿を調査するー1

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「それじゃ、今日から神殿の中の調査に行くとしようか。その前に歩きながら、少し説明しておくよ。」

 僕とユーリは、拠点である小屋から神殿まで歩いて向かっていた。この世界では、歩きが基本だ。

「この神殿が発見されたのは、300年ほど前。建物自体は、2000年前のものではないかと言われている。」

「えっ?そんなに古そうには見えないよ。」

 すぐ目の前にある建物は、つい最近建ったかのようにキレイだ。

「不思議だろう?この建物には秘匿の術がかけられているんだ。しかも、今のエレメンテでも、この術がどういうものなのか解明できていないのさ。誰が何のために建てたのか?それすら、分からない。」

「詳しく調査している人はいないの?」

「なにせ、ここは国外だ。紋章システムが使えないから、何かあっても誰も助けに来ない。だから、調査しようって物好きはそうはいないのさ。それに、国外に出るのは王宮の許可がいるし。」

「許可?厳しいんだね。」

「いや、全然厳しくないよ。アタイが国外専門の冒険者になりたいって言った時なんて、先代の王の『いいよ~』って一言だけだったよ。」

 そんな軽い感じなんだ?

「じゃ、無断で国外に出る人はいないんだね?」

「いないだろうね。いたとしても、すぐに分かるよ。国外に出た時点で、パートナー精霊が王宮に連絡するから。」

「へぇ、国外に出た人は、そうやって把握してるんだ。」

「300年の間に調査に来た物好きも何人かいたけど、何も分からなかった。だから、興味深い構造物なのに、研究する人もいなくなったのさ。アタイがこの神殿に初めて来たのは10年前。ドラゴンの瞳を使ったのは偶然だったんだけど、それでドラゴンの紋様らしきものを見つけたんだ。」

「紋様らしきもの?」

「アタイはサーシャと一緒で、ドラゴンの瞳を上手く使えなくてね。だから、母さんに見てもらったんだけど、母さんですらドラゴンの紋様が薄っすら見えるだけで何も分からなかった。でもタクミはドラゴンの先祖返りだ。タクミなら、何か見えるかもしれない。」

「分かった。じゃ、とりあえずユーリがドラゴンの紋様を見つけた場所を教えてくれる?」

 一番大きな建物の中に入る。
 ユーリの案内で複雑な構造の建物の中を歩く。

 部屋の数が多いな。それぞれが個室になっていて、廊下でつながっている。何かの宿泊施設のような造りだな。

「この部屋だ。天井を見てくれ。」

 ユーリがココだと言った部屋は一際大きな個室だった。
 ドラゴンの瞳を発動させて、天井を見る。

 こっ、これは…。
 東洋の龍が外側にデザインされたドラゴンの紋様だった。

 へぇ、カッコいいデザインだなぁ。
 あっ、もしかして。

 僕はドラゴンの瞳で、部屋中を見る。

 うわぁ、これはすごい。
 部屋中に煌びやかな装飾が施されている。

「綺麗な装飾が見えるよ。これを見せてあげられないのは残念だよ。」

「そうかい!やっぱり、タクミには何か見えるんだね!」

 ドラゴンの瞳を発動させたまま、入ってきた扉の辺りを見ると、『レベル1、次はこちら』の文字を発見する。

 矢印だ。指示に従って、次の場所へ移動する。

「ユーリ、こっちに行けって指示があるから、移動するよ。」

「ははっ!やっぱり、この神殿には何か秘密があったんだな!」

「そういえば、なんでここは神殿って呼ばれてるの?祭壇があるようには見えないし。」

「あぁ、ここにはケモノが近寄らないんだよ。一種の結界が張ってあるんじゃないかって考えられてるのさ。結界を張ってまで守ってる建物と言えば、神殿か王宮だからね。」

「王宮かもしれないよ?」

「まさか?こんな形の王宮なんか見たことないよ。」

「僕が住んでいた世界には、ここに似た建物があって、それは王様の居城だったんだよ。」

「へぇ、じゃあ、もしかしたらここも王宮だったかもしれないね。」

「うん。可能性はあるかも。あっ、次の指示だ。」

『レベル2、本物の扉はどれ?』

 本物の扉?

 その文字が書いてある壁の向こう側の廊下には、扉がたくさん設置されているのが見えた。廊下を挟んで、両側に多数の部屋があるってことかな?

 本物の扉ってどういうことだろう?
 試しにひとつの扉を開けてみる。中は普通に個室だ。

 とりあえず全部見てみよう。
 僕は近くの扉から開けていく。5つ目の扉を開けようとしたところで、ユーリが「何してるのさ?」と声をかけてくる。

「えっ?扉を開けて中を確認しようかと…。何かあった?」

「アタイには、扉なんか見えないよ。タクミが触っているのは、ただの壁だ。」

 ただの壁?こんなにハッキリ扉が見えているのに?じゃ、これが正解の扉かな?

 開けて中を見る。
 今まで見た個室と同じ造りだ。

 ユーリがいなかったら、部屋の中を確認せずに扉を閉めていただろう。

 部屋の中に入るが、何もない。ヒントになる文字も無い。
 間違いだったのか?と不安になってユーリを見ると、入ってきた扉と反対の壁を触っている。

「ユーリ、何してるの?」

「えっ?ここに扉があるじゃないか。先へと進もうと思ったんだが…。」

 扉?
 僕はドラゴンの瞳を解除する。

 ホントだ!扉が見える!
 ドラゴンの瞳を発動してたら、見えない仕掛けになってたんだな!

 この仕掛けは一体誰が…。
 それに、この建物は何のために建てられたんだ?

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