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イリステラ王国編
セシルさまのお悩み相談室【本日のお題 恋と愛】
しおりを挟むタクミ
本日のお題は、『恋と愛』です。
僕には経験がないので、どういう感情が恋なのか、愛なのか、さっぱり分からないんです。
セシル
そうじゃなぁ。
何代か前のイリステラ王は、『好きになるのが恋で、恋の先にあるのが愛』だと言っておったなぁ。
タクミ
いまのイリス様は、子供が15人いますけど、全員父親が違うって言ってましたよ。好きの種類は違うけど、全員"好き"になったから、子供が産まれたのよって。
僕には良く分からない感覚なので、セシルさまに聞いてみたいと思ってました。
セシル
我は、何度も転生しておるのだが、その中では、ヒト種だけでなく、獣人種や妖精種だったこともある。そして、男の時もあったし、女だった時もある。その経験から話をすると、好きになるのは人それぞれだ。
獣人種の男だった時は、発情期があったからのぅ。そういう相手は、それこそ誰でも良かったな。
タクミ
えっ?発情期があるんですか?
セシル
特定の獣人種には、発情期があるぞ。いまは混血が進んで、それで困っている者は、ほとんどいなくなったが。
ヒト種なんて、つねに発情期じゃろう?
タクミ
そうだと言われてますね。僕には分からないですけど…。
セシル
男と女の好きも少し違うのぅ。上手く表現できないが、女の時は相手を独占したいって感情が強かった。逆に男の時は、守ってあげなくてはっていう使命感みたいな感情が強かった。
タクミ
単純な好きって感情じゃないってことですか?
セシル
一夫一妻制度があった頃は、一人の人を一生愛し続けることが素晴らしいことだ、という考えだった。だから、女性は独占欲、男性は保護欲が強かったのではないかと、今になって思うのじゃ。特に昔は、女性の方が立場が弱かった。男性の愛を失うこと=生活できなくなる、じゃったからなぁ。
タクミ
あぁ、だから独占欲が強かったってことですね?
セシル
相手を好きになる気持ちは、いつの時代も同じじゃ。しかし、好きの先には生活がある。
好きだと思ったけど、一緒に生活してみたら我慢できなかったってこともあるじゃろう。
タクミ
あぁ、会社員時代の先輩が、嫁がケチで困ってるって言ってましたよ。付き合ってる時は、高い物もねだらないし、そこが好きだと思って結婚したけど、毎月のお小遣いは少ないし、節約節約でノイローゼになりそうって。
セシル
好きという感情だけでは、生活はできないからな。2人での生活を円滑にするために、好きの感情が変化するのじゃよ。それこそ、家族愛に変わる者もいるじゃろう。
タクミ
一緒に生活することで、恋愛の"好き"から、家族としての"好き"に変わっていくってことですね。なるほどなぁ。
そういえば、この世界ではカップルでも一緒に暮らすことは少ないって聞きましたよ。
セシル
誰かと一緒に暮らすというのは、良い事ばかりではないからのぅ。紋章システムが出来てから、どちらも選べるというのに、一緒に暮らすことを選ぶヤツラの考えてることが分からんよ。
タクミ
えっ?誰かと一緒に暮らす方が楽しいじゃないですか?セシルさまは違うのですか?
セシル
我は一人の方が気楽じゃ。
毎日誰かと話すのは疲れるしのぅ。
タクミ
(どんだけ怠惰なんだ!)
そっ、それにしても、愛の形っていろいろなんですね。
独占欲が強いと言えば、ジャンという男がティアにかなり執着してましたよ。
セシル
ティアは元々、ティアドロップという宝石だ。ティアドロップには不思議な魅力があって、それに魅入られてしまうと手に入れたくて仕方なくなる、そんな曰く付きの宝石じゃった。
タクミ
だから、ティアと付き合う男性は独占欲が強くなるってことですか?
セシル
そうかもしれぬのぅ。
タクミ
ティアがジャンという男に腕を掴まれた時に、防御結界が発生しましたけど、アレは普通のことなんですか?
セシル
この世界には人を害してはいけないっていうルールがひとつあるだけじゃ。それが成り立っているのは、この防御結界があるからなのだ。何があっても使用者を守るから、この世界には法律や警察が無いのじゃよ。
タクミ
ホームにいる小さい子供達はまだパートナー精霊がいませんけど、防御結界は発生するんですか?
セシル
そうじゃよ。身体に危険があると判断した場合に、自動で発生する。パートナー精霊はまだ目覚めていないだけで、存在しているのだから。
タクミ
じゃあ、この世界では交際相手から暴力を受けたりなんて、無いんですね?
セシル
絶対に無い。そして、合意の無い性行為も絶対に無い。防御結界は必ず使用者を守るのだから。
タクミ
それは安心です!
アースには、力や立場の弱い女性や子供を狙う男性もいますからね。
セシル
うむ。そのような輩の中には、合意があったと言い張るヤツもいるのぅ。万死に値するぞ!そんなヤツは、我が跡形も無く消し去ってやる!
タクミ
(過激だなぁ。セシルさまって、過去に何かあったのか?)
そうだ!アースにも出来ませんか?防御結界!それがあれば、僕の両親も事故で亡くなることはなかったのに。
セシル
そうじゃな。身体を守るものができるといいな。危険を察知すると、エアバッグみたいなものが身体を包んで守る、とかな。誰か開発してほしいのぅ。
タクミ
そうですね。
それにしても、ジャンはティアを愛しているからしてしまったのだと言い訳をしていましたけど、相手に危害を加えるくらいの愛って、愛なんですかね?
セシル
愛にはいろいろな形があるからのぅ。
それは日本人の方が詳しいのではないか?
タクミ
どういうことです?
セシル
日本には、愛の付く文字がいっぱいあるではないか!日本人は古来から、愛を理解できる国民なのではないか?
でも、日本は家同士の結婚が多いから、愛を貫き通すのは難しかった。だから、そのような言葉が多くできたのかもしれんのぅ。
タクミ
そうですね。恋愛と結婚は別って言ってる友人もいましたよ。家族が認めてくれないから結婚できないって。
セシル
日本の結婚は、"家"を守るためにあるからのぅ。
タクミ
結婚って難しいですよね?僕にも、結婚する機会は何回かあったんですよ。お見合いを勧められたり。でも相手を守れる自信がなかったので、断りました。
セシル
この世界エレメンテには、結婚なんて制度はないから、相手を守らなくては!なんて、思わなくてもいい。
タクミはこの世界で、深く考えずに人を好きになってほしいのぅ。人を好きになる、愛することは、本当は難しいことではないのだから。
タクミ
セシルさま、ありがとうございました。本日の話は、これで終了です。僕もこの世界で、好きな人が見つかるといいなって思います。
(いや、まてよ?ドラゴンは、そういう人とはなかなか出会えないって聞いたばかりだよ!)
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