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イリステラ王国編
148話 主人公、恋を知るー3
しおりを挟む「お嫁さんってどういうこと?」
「それに答える前に、とりあえず、オラの話を聞いてほしいだ。」
タムが真剣な表情をする。何か深刻な事情でもあるのかな…。
「オラのおっ父には、嫁が5人いるだ!」
んっ?
「オラの兄ちゃんには、嫁が3人いるだ!」
んんっ?
この世界には、もう婚姻って制度は無いって聞いてたけど!しかも、お父さんには5人、お兄さんには3人、嫁がいるってナニ!
「この世界では、子供を授かると好きなファミリアを選んで、そこで子供を産むだ。オラがホームにいる頃から、おっ父とおっ母達は、ホームに会いに来てくれただよ。」
「お母さん達?」
「んだ。オラを産んでくれたおっ母は、おっ父の5番目の嫁だけど、おっ父の嫁は全員、オラのおっ母だと思ってるだ。オラはホームにいた頃から、病気がちだったべ。だから、おっ父とおっ母達は交代で、指導者としてホームに来てくれただよ。」
「お母さんが5人いて、全員が来てくれるの?仲良しなんだね?」
「んだ。おっ父とおっ母達は全員仲良しだよ。」
アースの常識では理解できないな。今の日本は、一夫一妻だ。一夫多妻の国もあるけど、僕には想像もできない。
「オラは成人した後、おっ父が住んでる地域に住むことにした。おっ父はベアルダウン王国でファーマーしてるだ。オラもその仕事が好きだったから、おっ父にいろいろ教えてほしかっただよ。おっ父は穀物を作るのが上手なんだ。」
「タムにはお兄さんもいるの?」
「んだ。兄ちゃんは、おっ父の1番目の嫁の子供だ。同じ地域に住んでるだ。兄ちゃんは野菜作りの名人だべ。この世界では、子供が出来る方が珍しいだ。おっ父には5人、嫁がいるけど、オラと兄ちゃんしか子供はいないだよ。」
「お兄さんにも、お嫁さんが3人いるんだね?」
「んだんだ。オラの住んでる地域は、昔からそういう風習があるだよ。昔は穀物もなかなか育たないし、凶暴なケモノもいる、厳しい地域だったべ。そこで暮らしていくためには、1人では困難だった。だから、一夫多妻、一妻多夫の人達が増えたんだ。」
「一妻多夫?」
「んだよ。近所に住んでるジャスミンには、婿さんが2人いるだよ。2人の婿さんは双子だべ。」
うーん。すごい地域だな。
「その風習を守ってるってこと?」
「逆だべ。一夫一妻で暮らしてる人や特定の相手を作らない人には、こういう生き方は理解できないべ。だから、一夫多妻、一妻多夫という生き方を選んだ人達が、この地域に集まってくるようになったんだ。ここは昔からそうだったから、理解があるだよ。」
そうだった。この世界では、どんなことをしても自由だったな。そして、理解できない価値観の人達は離れて暮らす方が幸せだって考えだ。同じような価値観の人達が集まった方が、分かりあえて良いよね。
「じゃあ、タムもお嫁さんがいっぱい欲しいんだ?」
「それは違うだ!」
タムが激しく否定する。
「オラは、1人でいいだよ。オラと一生を共にしてくれる運命の人を探してるだ。」
「お父さんとお兄さんとは、考え方が違うってこと?」
「んだよ。それにおっ父と兄ちゃんは、オラから見てもモテるのが分かるだよ。おっ父と兄ちゃんは、カッコいいし、優しいから。おっ父と兄ちゃんは、いろいろなファミリアに指導者として行くことがあるんだけど、行くたびに女の人が寄ってくるだ。その中には家までついてくる女の人もいるだよ。」
「そっ、それはすごいね。」
「おっ父と兄ちゃんは、ちゃんと自分には嫁がいますって言うだども、それでもモテるだ。嫁がいてもいいから、一緒に居たいって言われるらしいだ。」
うっ、うらやましい!
「お嫁さん達は、どう思ってるの?自分だけ愛してほしいんじゃない?」
「オラ、それをおっ母に聞いたことがあるだよ。したら、『おっ父が自分にとっての運命の人だから』って言ってただよ。」
「運命の人…?」
「んだ。おっ父と出会った瞬間に分かったって言うだよ。おっ父を見るだけでドキドキして、話すだけで楽しくて、夜も眠れなくなったって。おっ父には嫁がいるって分かっても、諦めることはできなかった。したら、おっ父もおっ母のことを好きになってくれて、他のおっ母達も許してくれた。他のおっ母達は、おっ父が好きになった人なら仕方ないわねって言ったらしいべ。」
「すっ、すごい話だね。」
「んだな。でもオラはおっ母の話を聞いて、うらやましかったんだ。そんなに好きになれる人ってどんな人なんだろうって。おっ母は運命の人って言ってたけど、生きてるうちにそんなに好きになれる人に会えるってすごいことだべ。」
「じゃあ、タムは運命の人に会いたくて、このイリステラ王国に来たってことだね?」
「んだ。オラは出来たら、ずっと一緒に住んでくれる人を探してるだよ。オラは、またいつ病気になるかもしれない。そんな時に、オラの農場を守ってくれる人が一緒にいてくれたらなぁって思ってるだ。いま、オラの農場はおっ父と兄ちゃんが見てくれてるから。」
「なるほど。でも結構、条件厳しいね。今のエレメンテは、婚姻って制度はないから、一生を共にする人達は少ないって聞いたよ。しかも、ベアルダウン王国のタムの農場で暮らすってことだよね?いま自分が住んでいる場所を離れて来てくれる人って、いるかな?」
「だから、この出会いの街に来たんだべよ!この街には、いろいろな人が集まってくる。案内人に条件を相談すると、そういう人と出会える場所を教えてくれる。オラは、相談したべ。したら、今日の夜、ベアルダウン王国の会っていう集まりがあるって言うだよ。」
ベアルダウン王国の会?
それって、どんな集まり?
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