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14話 走るストーカー。1
しおりを挟む「そーお? じゃあリョウ、ふたりで行こっか」
ジュリアはなぜか残念そうにそう言って立ち上がり、足もとに投げていた鞄を拾う。
吉崎 拓哉は、慌ててジュリアのほうに正座したままの膝を向け、床に手をついて、そして額もついた。
「あの、本当に、すみませんでした。もう二度とこんなことはしません。カメラも回収していきます」
だから、許してくれてありがとうございました。そう告げようとすると、その土下座を見たジュリアがまたしてもどうかしていることを言い出した。
「あ、別にいいよ、見るくらい。それより、お兄さんはお名前、なんていうの?」
リョウはもうなにも言わなかった。
なにを言ったところで無駄だと思ったのかもしれない。
吉崎 拓哉も、なぜだと思いながらも、首を傾げて微笑む天使になにも言えず、取り敢えずひとこと、
「あの……、吉崎 拓哉です」
と名乗った。
「そっか、よしざき、たくや……。じゃあ、拓ちゃんだね」
そう言ってジュリアがまたにこりと微笑む。
その瞬間から、吉崎 拓哉の名前は“拓ちゃん”になった。
なんだかすごく疲れた。
結局ジュリアはリョウとふたりで回転寿司に行き、拓ちゃんも同じタイミングで部屋を出てきた。
リョウは何度も振り返って拓ちゃんを睨みつけてきた。
拓ちゃんは何度も頭を下げた。
ふたりが見えなくなるまで頭を下げまくって、それから帰宅した。
昼飯もまだだったが、とてもじゃないけど食う気にならない。
ただ疲れた。
そして反省した。
いくらジュリアが良いからと言ったって、拓ちゃんもそこまで堕ちているわけではない。
やはり良くないことだった。もうやめよう。カメラは置いてきてしまったが、パソコンを接続しなければいいだけのはなしだ。警察と言われたとき、本当に体が震えた。
食うに食えず、寝るに寝れず、拓ちゃんはベッドに腰かけて真っ白なあしたのジョー姿になった。
燃え尽きたのだ。
それから拓ちゃんはミイラのような出で立ちで深夜バイトへ向かい、完全に干からびてガイコツのような姿になって翌早朝に帰宅した。
エントランスで無意識のうちにふたつの郵便受けを覗き、ああしまった、やめるんだった、と思いながら外階段をふらふらと上がる。
玄関の鍵を開け、ふらふらとパソコンの前まで移動し、無意識のうちにパソコンを起動した。
なにをやっているんだ。
自問自答はすれど手は止まらない。
もはや呼吸をするのと同レベルに自然な動作でパソコン画面にジュリアを映し出す。
ジュリアは昨日までと同じように、下着姿で布団に潜って眠っていた。
また腰のあたりが布団から出ている。
やめるんじゃなかったのか。
拓ちゃんはパソコンデスクに備え付けた椅子に腰かけてジュリアを眺める。
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